光嶋裕介「いつでも制作中」
先月、九年ぶりにパリを訪れました(※1)。
ちょっぴり早い夏休みです。
内田樹先生率いる凱風館の門人たち九人と一緒に、
イタリア合気会を半世紀前に立ち上げられた
多田宏師範(内田先生の師である)による
三日間の合気道研修会に参加させてもらいました。
日本から遠く離れたフランスでも合気道はさかんで、
沢山の方々と一緒に汗をかきながら「心を透明にする」ことを
心がけた気持ちのいいお稽古ができました。
※1
セーヌ川沿いからエッフェル塔を臨んで描いたスケッチ
せっかくのパリなので、
この際これまでは修復中で見られなかった
ル・コルビュジエの《ラ・ロッシュ邸》や
念願のピエール・シャローの《ガラスの家》を見てきました。
詳細は、またの機会に譲るとして、
両建築家の強い想いが隅々まで込められた濃密な空間が印象的で
明るくて素晴らしい名作住宅でした。
巨匠フランク・ゲーリーの話題の新建築、
《ルイ・ヴィトン・ファウンデーション》にも足を運びました。
パリという街には、不思議な魔法がかかっているようだ。
最終日の夕暮れ時に、ポンピドゥ・センターで開催中の
『ル・コルビュジエ展』(※2)に駆け込みました。
モダニズム(近代建築)を確立させた世界的建築家として
ル・コルビュジエの成し遂げた偉業は、建築にとどまることなく、
都市計画から家具、書籍出版、絵画に至るまで多岐に渡っている。
それらすべての創作の中心に「身体性」があることを
この秀逸な展覧会は、オリジナルの図面やスケッチ、
模型にドローイング、映像などを見せることで伝えていた。
質量ともに圧巻の展示は、示唆に富んでおり、
二時間あっても時間が全然足りないくらいだった。
※2
ポンピドゥ・センターで、『コルビュジエ展』を観る
比較するのも大変おこがましいが、
私も一人の建築家として、
建築設計にとどまらない自由で多様な働き方をいつも心がけている。
建築を設計し、現場を工事監理することを中心に添えつつも、
大学で教育に携わることや、文章を書いたりすること、
ドローイングや銅版画を製作することも、
ときにはテレビ番組に出演することさえも、
すべては、建築家として幅広く働くことを考えている。
それぞれの仕事には一切の優劣がありません。
たくさんの方から頂いたご縁を大切に、
目の前にある仕事の一つひとつに全身全霊で向き合うだけです。
この夏は、
ロックバンドのAsian Kung-Fu Generationの
新アルバム『Wonder Future』の全国ツアーのための
舞台設計とドローイングを制作(※3)する機会を得ました。
架空の街をコンセプトに、彼らの舞台を白い塔の群れとして設計し、
そこに曲に合わせて描いたドローイングを
映像チームの方々と協働しながら、プロジェクションマッピングしました。
目に見えない音楽を、空間による演出でスペクタクルをつくり出し、
ライブというパフォーマンスを総合芸術としてお客さんに提出する。
このライブを体験したアジカンファンのみなさんが
唯一無二の時間として深く記憶に残ることを目指しました。
※3
北は北海道、南は沖縄まで30公演のアジカン全国ツアーの舞台デザインでは、ドローイングをプロジェクション・マッピングする
このエキサイティングな仕事は、
私にとって初めての挑戦でしたが、
そのきっかけは、ときの忘れもの画廊だったのです。
昨年の秋に開催させてもらった『幻想都市風景展』に
アジカンのヴォーカルである後藤さんが来廊してくれました。
17年前の学生時代、
ふらっと入った安藤忠雄展以来、ずっとここに通い続けています。
画廊主の綿貫さんとのご縁を頂き、
白井版画工房で銅版画をやらせてもらい、
石田さんと一緒にシルクスクリーンも制作させてもらっています。
このような最高の環境を得て、
私にできることは、ただひとつ。
自分が納得のいく作品をコンスタントに発表し続けること。
また、
新しい作品をみなさんにお見せできることを心より楽しみにしております。
光嶋裕介(建築家)
~~~~
光嶋さんからもご紹介がありましたように、7月からスタートしたロックバンドASIAN KUN-FU GENERATION(アジアンカンフージェネレーション)のライブステージデザインを担当しています。
光嶋さんのドローイングがプロジェクションマッピングの手法を用いて投影されるなど革新的なステージとなっています。
CINRA.NETより転載
撮影:山川哲矢
CINRA.NETより転載
撮影:山川哲矢
ボーカルを務める後藤正文さんは、昨年開催した「光嶋裕介展―幻想都市風景」にもお越しになり、光嶋さんと熱心にお話しされていました。
ミシマ社のウェブマガジン「みんなのミシマガジン」で公開された後藤さんと光嶋さんの対談(全3回)によると、後藤さんはアルバムのレコーディング前の段階から光嶋さんにステージ設計の依頼をし、光嶋さんもアジカンのニューアルバム『Wonder Future』の楽曲を繰り返し聴きながらドローイングを描いていったそうです。
ジャンルは違えど表現するという共通点を持ったクリエイターたちが共鳴し合い実現した舞台となっています。
*このライブツアー『Wonder Future』についてはCINRA.NETに詳しく掲載されていますのでご覧ください。
●ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2015 「Wonder Future」Teaser Spot
●今日のお勧め作品は、光嶋裕介です。
光嶋裕介
『凱風館通信』より《建築のある風景-01》
2014年
紙に水彩、ペン
17.8x13.9cm
サインあり
光嶋裕介
「幻想都市風景 - TREE HOUSE」
2014年
和紙にペン、墨
34.0x52.0cm
サインあり
光嶋裕介
「Urban Landscape Fantasia #1」(6)
2013年
カンバスにシルクスクリーン、アクリル
90.0x90.0cm
Ed.1
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
先月、九年ぶりにパリを訪れました(※1)。
ちょっぴり早い夏休みです。
内田樹先生率いる凱風館の門人たち九人と一緒に、
イタリア合気会を半世紀前に立ち上げられた
多田宏師範(内田先生の師である)による
三日間の合気道研修会に参加させてもらいました。
日本から遠く離れたフランスでも合気道はさかんで、
沢山の方々と一緒に汗をかきながら「心を透明にする」ことを
心がけた気持ちのいいお稽古ができました。
※1セーヌ川沿いからエッフェル塔を臨んで描いたスケッチ
せっかくのパリなので、
この際これまでは修復中で見られなかった
ル・コルビュジエの《ラ・ロッシュ邸》や
念願のピエール・シャローの《ガラスの家》を見てきました。
詳細は、またの機会に譲るとして、
両建築家の強い想いが隅々まで込められた濃密な空間が印象的で
明るくて素晴らしい名作住宅でした。
巨匠フランク・ゲーリーの話題の新建築、
《ルイ・ヴィトン・ファウンデーション》にも足を運びました。
パリという街には、不思議な魔法がかかっているようだ。
最終日の夕暮れ時に、ポンピドゥ・センターで開催中の
『ル・コルビュジエ展』(※2)に駆け込みました。
モダニズム(近代建築)を確立させた世界的建築家として
ル・コルビュジエの成し遂げた偉業は、建築にとどまることなく、
都市計画から家具、書籍出版、絵画に至るまで多岐に渡っている。
それらすべての創作の中心に「身体性」があることを
この秀逸な展覧会は、オリジナルの図面やスケッチ、
模型にドローイング、映像などを見せることで伝えていた。
質量ともに圧巻の展示は、示唆に富んでおり、
二時間あっても時間が全然足りないくらいだった。
※2ポンピドゥ・センターで、『コルビュジエ展』を観る
比較するのも大変おこがましいが、
私も一人の建築家として、
建築設計にとどまらない自由で多様な働き方をいつも心がけている。
建築を設計し、現場を工事監理することを中心に添えつつも、
大学で教育に携わることや、文章を書いたりすること、
ドローイングや銅版画を製作することも、
ときにはテレビ番組に出演することさえも、
すべては、建築家として幅広く働くことを考えている。
それぞれの仕事には一切の優劣がありません。
たくさんの方から頂いたご縁を大切に、
目の前にある仕事の一つひとつに全身全霊で向き合うだけです。
この夏は、
ロックバンドのAsian Kung-Fu Generationの
新アルバム『Wonder Future』の全国ツアーのための
舞台設計とドローイングを制作(※3)する機会を得ました。
架空の街をコンセプトに、彼らの舞台を白い塔の群れとして設計し、
そこに曲に合わせて描いたドローイングを
映像チームの方々と協働しながら、プロジェクションマッピングしました。
目に見えない音楽を、空間による演出でスペクタクルをつくり出し、
ライブというパフォーマンスを総合芸術としてお客さんに提出する。
このライブを体験したアジカンファンのみなさんが
唯一無二の時間として深く記憶に残ることを目指しました。
※3北は北海道、南は沖縄まで30公演のアジカン全国ツアーの舞台デザインでは、ドローイングをプロジェクション・マッピングする
このエキサイティングな仕事は、
私にとって初めての挑戦でしたが、
そのきっかけは、ときの忘れもの画廊だったのです。
昨年の秋に開催させてもらった『幻想都市風景展』に
アジカンのヴォーカルである後藤さんが来廊してくれました。
17年前の学生時代、
ふらっと入った安藤忠雄展以来、ずっとここに通い続けています。
画廊主の綿貫さんとのご縁を頂き、
白井版画工房で銅版画をやらせてもらい、
石田さんと一緒にシルクスクリーンも制作させてもらっています。
このような最高の環境を得て、
私にできることは、ただひとつ。
自分が納得のいく作品をコンスタントに発表し続けること。
また、
新しい作品をみなさんにお見せできることを心より楽しみにしております。
光嶋裕介(建築家)
~~~~
光嶋さんからもご紹介がありましたように、7月からスタートしたロックバンドASIAN KUN-FU GENERATION(アジアンカンフージェネレーション)のライブステージデザインを担当しています。
光嶋さんのドローイングがプロジェクションマッピングの手法を用いて投影されるなど革新的なステージとなっています。
CINRA.NETより転載撮影:山川哲矢
CINRA.NETより転載撮影:山川哲矢
ボーカルを務める後藤正文さんは、昨年開催した「光嶋裕介展―幻想都市風景」にもお越しになり、光嶋さんと熱心にお話しされていました。
ミシマ社のウェブマガジン「みんなのミシマガジン」で公開された後藤さんと光嶋さんの対談(全3回)によると、後藤さんはアルバムのレコーディング前の段階から光嶋さんにステージ設計の依頼をし、光嶋さんもアジカンのニューアルバム『Wonder Future』の楽曲を繰り返し聴きながらドローイングを描いていったそうです。
ジャンルは違えど表現するという共通点を持ったクリエイターたちが共鳴し合い実現した舞台となっています。
*このライブツアー『Wonder Future』についてはCINRA.NETに詳しく掲載されていますのでご覧ください。
●ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2015 「Wonder Future」Teaser Spot
●今日のお勧め作品は、光嶋裕介です。
光嶋裕介『凱風館通信』より《建築のある風景-01》
2014年
紙に水彩、ペン
17.8x13.9cm
サインあり
光嶋裕介「幻想都市風景 - TREE HOUSE」
2014年
和紙にペン、墨
34.0x52.0cm
サインあり
光嶋裕介「Urban Landscape Fantasia #1」(6)
2013年
カンバスにシルクスクリーン、アクリル
90.0x90.0cm
Ed.1
サインあり
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