ときの忘れもの・拾遺
-ギャラリーコンサートに寄せて-
大野 幸
綿貫令子、不二夫御夫妻の「ときの忘れもの」は、ちいさな画廊です。少人数で-幸運なときは一人きりで-比較的サイズの小さい作品と親密に対面できる青山の隠れ家です。
行列にまみれて前の人の後頭部ばかりが見える大美術館で開かれる企画展とは対照的、大きな器からこぼれた佳作を拾い集めるような、きめ細かい展示が魅力の一つです。
その綿貫御夫妻が、ちいさな画廊でコンサートをしたいと言い出し、旧知の仲とはいえ、あろうことか私にその企画をせよとの仰せがありました。そこで、畑違いではありますが、日頃感じている次のようなことを手掛かりに、何が出来るか考えてみました。
音楽をとりまく環境は大きな変化にさらされています。電子音の氾濫、ネット経由の音源のみで音楽を聴く習慣、曲の編成に相応しくない巨大なホールでの演奏会、そして日常の雑音・騒音の洪水。今の私達は、音を聴く力、音楽が語るメッセージを受け取る力をどこかに置き忘れたまま、音に無感覚になってきているのではないでしょうか。
「ときの忘れもの」でコンサートをするならば、こぼれた佳作を拾い上げるように、忘れかけていた音楽に関わる力を、もう一度取り戻させてくれるかもしれないという期待を込めた企画にしたいと思いました。少人数、至近距離、は画廊のサイズが与えてくれる好条件!ですが、さらに、知られていない楽曲や作曲家を紹介すること、あまり馴染の無い古いスタイルの楽器を使うこと、画廊所蔵作品とのコラボなど、できることはたくさんありそうです。
コンサートは、不定期・年4回ぐらいのペースで継続することを目指しています。幕開けの一年間は、チェリストの富田牧子さんに登場して頂くことになりました。普段音楽や美術に慣れ親しんでいる方々も、その機会が少ない方々も、音楽と美術の側面に当てられた光に浮かぶ新しい輪郭を共に見つけ、共に楽しんでくださいますことを願っています。
(2016 年1 月 おおのこう)
●ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第1回「独奏チェロによるJ.S.バッハと現代の音楽~ガット(羊腸)弦の音色で~」
日時:2016年3月19日(土)18時~19時
会場:ときの忘れもの
出演:富田牧子(チェロ)、木田いずみ(歌)
プロデュース:大野幸
曲目:
J.S.バッハ(1685-1750 ): 無伴奏チェロ組曲第1番
クルターク・ジェルジュ (1926- ) : 「ジョン・ケージへのオマージュ〜ためらいがちな言葉」
ジョン・ケージ (1912-1992): 4’33”
尾高惇忠 (1944- ): 「瞑想」
・・・など
(曲目は変更する場合がございます。ご了承ください。)
*要予約=料金:1,000円
予約:メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

■富田牧子(チェロ奏者) Makiko TOMITA, Cellist
東京芸術大学在学中にリサイタルを行い、室内楽奏者として活動を始める。ソロだけでなく室内楽(特に弦楽四重奏)でヨーロッパ各地の音楽祭や講習会に参加。大学院修士課程修了後、ハンガリー・ブダペストに2年間留学、バルトーク弦楽四重奏団チェロ奏者ラースロー・メズー氏に師事。NHK-FM「名曲リサイタル」、ORF(オーストリア放送)の公開録音に出演。2003年以降、ソロリサイタルのほか、弦楽四重奏団メンバーとしての活動を経て、様々な楽器との組み合わせによる「充実した内容の音楽を間近で味わうコンサート」の企画・制作・演奏を続けている。バロックと現代両方の楽器にガット(羊腸)弦を用い、時代に合った奏法を学び直し、より深い音楽と楽器の理解を探求中。自然体の音楽と室内楽の楽しさを広める活動をライフワークとし、国内外で共感の輪が広がりつつある。
~~

■大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。
●今日のお勧めはジョン・ケージです。
ジョン・ケージ
John CAGE
《Fontana Mix》
1982
シルクスクリーン、紙フィルム4枚組
刷り:岡部徳三
Image size: 50.0x70.0cm
Sheet size: 56.5x76.5cm
Ed.97 signed
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
-ギャラリーコンサートに寄せて-
大野 幸
綿貫令子、不二夫御夫妻の「ときの忘れもの」は、ちいさな画廊です。少人数で-幸運なときは一人きりで-比較的サイズの小さい作品と親密に対面できる青山の隠れ家です。
行列にまみれて前の人の後頭部ばかりが見える大美術館で開かれる企画展とは対照的、大きな器からこぼれた佳作を拾い集めるような、きめ細かい展示が魅力の一つです。
その綿貫御夫妻が、ちいさな画廊でコンサートをしたいと言い出し、旧知の仲とはいえ、あろうことか私にその企画をせよとの仰せがありました。そこで、畑違いではありますが、日頃感じている次のようなことを手掛かりに、何が出来るか考えてみました。
音楽をとりまく環境は大きな変化にさらされています。電子音の氾濫、ネット経由の音源のみで音楽を聴く習慣、曲の編成に相応しくない巨大なホールでの演奏会、そして日常の雑音・騒音の洪水。今の私達は、音を聴く力、音楽が語るメッセージを受け取る力をどこかに置き忘れたまま、音に無感覚になってきているのではないでしょうか。
「ときの忘れもの」でコンサートをするならば、こぼれた佳作を拾い上げるように、忘れかけていた音楽に関わる力を、もう一度取り戻させてくれるかもしれないという期待を込めた企画にしたいと思いました。少人数、至近距離、は画廊のサイズが与えてくれる好条件!ですが、さらに、知られていない楽曲や作曲家を紹介すること、あまり馴染の無い古いスタイルの楽器を使うこと、画廊所蔵作品とのコラボなど、できることはたくさんありそうです。
コンサートは、不定期・年4回ぐらいのペースで継続することを目指しています。幕開けの一年間は、チェリストの富田牧子さんに登場して頂くことになりました。普段音楽や美術に慣れ親しんでいる方々も、その機会が少ない方々も、音楽と美術の側面に当てられた光に浮かぶ新しい輪郭を共に見つけ、共に楽しんでくださいますことを願っています。
(2016 年1 月 おおのこう)
●ときの忘れもの・拾遺 ギャラリーコンサートのご案内
第1回「独奏チェロによるJ.S.バッハと現代の音楽~ガット(羊腸)弦の音色で~」
日時:2016年3月19日(土)18時~19時
会場:ときの忘れもの
出演:富田牧子(チェロ)、木田いずみ(歌)
プロデュース:大野幸
曲目:
J.S.バッハ(1685-1750 ): 無伴奏チェロ組曲第1番
クルターク・ジェルジュ (1926- ) : 「ジョン・ケージへのオマージュ〜ためらいがちな言葉」
ジョン・ケージ (1912-1992): 4’33”
尾高惇忠 (1944- ): 「瞑想」
・・・など
(曲目は変更する場合がございます。ご了承ください。)
*要予約=料金:1,000円
予約:メールにてお申し込みください。
info@tokinowasuremono.com

■富田牧子(チェロ奏者) Makiko TOMITA, Cellist
東京芸術大学在学中にリサイタルを行い、室内楽奏者として活動を始める。ソロだけでなく室内楽(特に弦楽四重奏)でヨーロッパ各地の音楽祭や講習会に参加。大学院修士課程修了後、ハンガリー・ブダペストに2年間留学、バルトーク弦楽四重奏団チェロ奏者ラースロー・メズー氏に師事。NHK-FM「名曲リサイタル」、ORF(オーストリア放送)の公開録音に出演。2003年以降、ソロリサイタルのほか、弦楽四重奏団メンバーとしての活動を経て、様々な楽器との組み合わせによる「充実した内容の音楽を間近で味わうコンサート」の企画・制作・演奏を続けている。バロックと現代両方の楽器にガット(羊腸)弦を用い、時代に合った奏法を学び直し、より深い音楽と楽器の理解を探求中。自然体の音楽と室内楽の楽しさを広める活動をライフワークとし、国内外で共感の輪が広がりつつある。
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■大野 幸(建築家) Ko OONO, Architect
本籍広島。1987年早稲田大学理工学部建築学科卒業。1989年同修士課程修了、同年「磯崎新アトリエ」に参加。「Arata Isozaki 1960/1990 Architecture(世界巡回展)」「エジプト文明史博物館展示計画」「有時庵」「奈義町現代美術館」「シェイク・サウド邸」などを担当。2001年「大野幸空間研究所」設立後、「テサロニキ・メガロン・コンサートホール」を磯崎新と協働。2012年「設計対話」設立メンバーとなり、中国を起点としアジア全域に業務を拡大。現在「イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ」に参加し「エジプト日本科学技術大学(アレキサンドリア)」が進行中。ピリオド楽器でバッハのカンタータ演奏などに参加しているヴァイオリニスト。
●今日のお勧めはジョン・ケージです。
ジョン・ケージJohn CAGE
《Fontana Mix》
1982
シルクスクリーン、紙フィルム4枚組
刷り:岡部徳三
Image size: 50.0x70.0cm
Sheet size: 56.5x76.5cm
Ed.97 signed
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