先週末25日に終了した「第2回アートブック・ラウンジ~画廊のしごと(南画廊のカタログ)」にはたくさんの方にご来場いただきありがとうございました。お買い上げいただいたお客様には心より御礼申し上げます。
また同時開催したここから熊本へ~地震被災者支援展にも全国各地から多数のお申込みをいただきました。同じ作品に幾人もの方が重複して申し込まれたため抽選になり、せっかくのお気持ちを生かせなかったことをとても残念に思い、お詫びいたします。
抽選で外れたにもかかわらず義捐金としてお金を送ってくださった大阪のSさん、自らも阪神神戸の大震災で被災した兵庫のYさんは「熊本への寄付」ですと作品代の倍の金額を送ってくださいました。心より御礼を申し上げます。
のちほど義捐金の送金についてはご報告いたします。
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さて本日は、事前の準備では大谷省吾先生の新著『激動期のアヴァンギャルド シュルレアリスムと日本の絵画1928-1953』をご紹介する予定でした(明後日29日にあらためてご紹介します)。
皆さんご存知の通り、世界中が大騒ぎになっています。
イギリスのEU離脱の可否を問う国民投票については、悲しむべきというか、たいへんなことになったと亭主は絶望的になっています。
このブログでは政治的なことはあまり触れないようにしています。
しかし、今回は敢えて書きます。その結果についてはイギリスの人々の民意として私たちがとやかく言えません。結果ではなく、その手続きに亭主は絶望しています。
画商という仕事は平和な時代、安全な社会でこそ成り立つ商売です。言葉を変えていえば、多様性を認めない社会では画商は仕事ができない。
民主主義の根幹をなす「寛容」と「多様性」を否定した(否定させようとした)国民投票という名の博打を打ったキャメロン首相は歴史上最低の政治家と言われても仕方ないでしょう。
この問題をめぐっては、当のイギリスに在住する日本の方がまったく正反対のコメントをネットで表明されています。
先ず、めいろまさんという方がtwitterで発信されたのをまとめたらしい<イギリスがEU離脱した理由>。これだけ読むと実にわかりやすく、移民というかEU内部からイギリスになだれ込んだ他国の人たちがいかにイギリス人の脅威になっているかと、遠い日本の私たちはつい思ってしまう。
しかし、事実を冷静に見れば、今回、離脱票が最も多かったのは移民が最も少なかった地域であり、残留票が多かったのは移民が最も多かった地域(例えばロンドン)です。このことを無視しためいろまさんの言説には??をつけざるを得ない。
それに対して、Yoko Kloeden(クローデン 葉子)さんというロンドンで建築インテリア事務所を経営している方が、<Brexitというパンドラの箱>と題して、めいろまさんに逐一明快に反論しています。
ぜひお読みください。
亭主が絶望しているのは、国民投票の結果ではなく、このような「人間の尊厳にかかわること」(移民や難民問題)を国民投票という、一見民主的な手続きにゆだねてしまったイギリスの政治に対してです。
民主主義の先進国であったイギリスは(保守党は)、史上最も民主的といわれたワイマール憲法のもとで選挙と国民投票という「憲法に則った民主的手続き」によってヒットラーが政権を獲得した歴史を忘れてしまったのでしょうか。
亭主はこれでも大学は法学部卒業でした。
親からの仕送りを拒否し、アルバイトとマンドリンと恋にうつつを抜かしていたためろくろく授業なんぞ出てはいませんが、「法哲学」の講義のとき聞いたドイツの歴史だけは鮮明に覚えています。
うろ覚えで、その先生の名前も忘れてしまったのですが、取り上げたのはドイツの法哲学者グスタフ・フォン・ラートブルッフでした。
第一次世界大戦の後、敗戦国ドイツは苦難の道を歩みます。この時代、ラートブルッフは司法長官に就任し、新しい法制に尽力します。ワイマール憲法の根幹は「民主的手続き=多数決」にありますが、ヒットラーは巧みに人々を扇動し、選挙と国民投票という民主的手続きでもって政権を獲得します。
その結果がアウシュビッツでした。ドイツの人々はうすうす(はっきりと)ユダヤ人大量虐殺を知りながら、見てみぬふりをしました。すべては合法的に進められました。
戦後、ラートブルッフは深い悔恨と反省をこめて、自らの法哲学を再考します。
多数決はほんとうに民主主義の万能の斧なのかと。
99人が君は死ぬべきだといったら従わなければならないのか。99人が、いや100人のうち100人が正しいといっても<多数決で決めてはいけないこと>があるのではないか。
それは「人間の尊厳」である。
人間の尊厳に関わることは多数決で決めてはならない、亭主は以来半世紀、この講義の教えを忘れたことはありません。
「移民」という分かりやすい状況を人質にとり、代議制という「寛容と熟慮の手続き」を放棄し、国民投票という二者択一を迫る「感情に訴える手続き」を強行したイギリス議会(特に保守党)の堕落を亭主は心の底から軽蔑し、絶望しています。
チャーチルが生きていたらなんと言うでしょうか。
●今日のお勧め作品は瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』です。
瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』
『マルセル・デュシャン語録』
1968年
本、版画とマルティプル
マルセル・デュシャン、荒川修作、ジャスパー・ジョーンズ、ジャン・ティンゲリー
外箱サイズ:36.7×29.8×5.0cm
Ed.50 Signed
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また同時開催したここから熊本へ~地震被災者支援展にも全国各地から多数のお申込みをいただきました。同じ作品に幾人もの方が重複して申し込まれたため抽選になり、せっかくのお気持ちを生かせなかったことをとても残念に思い、お詫びいたします。
抽選で外れたにもかかわらず義捐金としてお金を送ってくださった大阪のSさん、自らも阪神神戸の大震災で被災した兵庫のYさんは「熊本への寄付」ですと作品代の倍の金額を送ってくださいました。心より御礼を申し上げます。
のちほど義捐金の送金についてはご報告いたします。
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さて本日は、事前の準備では大谷省吾先生の新著『激動期のアヴァンギャルド シュルレアリスムと日本の絵画1928-1953』をご紹介する予定でした(明後日29日にあらためてご紹介します)。
皆さんご存知の通り、世界中が大騒ぎになっています。
イギリスのEU離脱の可否を問う国民投票については、悲しむべきというか、たいへんなことになったと亭主は絶望的になっています。
このブログでは政治的なことはあまり触れないようにしています。
しかし、今回は敢えて書きます。その結果についてはイギリスの人々の民意として私たちがとやかく言えません。結果ではなく、その手続きに亭主は絶望しています。
画商という仕事は平和な時代、安全な社会でこそ成り立つ商売です。言葉を変えていえば、多様性を認めない社会では画商は仕事ができない。
民主主義の根幹をなす「寛容」と「多様性」を否定した(否定させようとした)国民投票という名の博打を打ったキャメロン首相は歴史上最低の政治家と言われても仕方ないでしょう。
この問題をめぐっては、当のイギリスに在住する日本の方がまったく正反対のコメントをネットで表明されています。
先ず、めいろまさんという方がtwitterで発信されたのをまとめたらしい<イギリスがEU離脱した理由>。これだけ読むと実にわかりやすく、移民というかEU内部からイギリスになだれ込んだ他国の人たちがいかにイギリス人の脅威になっているかと、遠い日本の私たちはつい思ってしまう。
しかし、事実を冷静に見れば、今回、離脱票が最も多かったのは移民が最も少なかった地域であり、残留票が多かったのは移民が最も多かった地域(例えばロンドン)です。このことを無視しためいろまさんの言説には??をつけざるを得ない。
それに対して、Yoko Kloeden(クローデン 葉子)さんというロンドンで建築インテリア事務所を経営している方が、<Brexitというパンドラの箱>と題して、めいろまさんに逐一明快に反論しています。
ぜひお読みください。
亭主が絶望しているのは、国民投票の結果ではなく、このような「人間の尊厳にかかわること」(移民や難民問題)を国民投票という、一見民主的な手続きにゆだねてしまったイギリスの政治に対してです。
民主主義の先進国であったイギリスは(保守党は)、史上最も民主的といわれたワイマール憲法のもとで選挙と国民投票という「憲法に則った民主的手続き」によってヒットラーが政権を獲得した歴史を忘れてしまったのでしょうか。
亭主はこれでも大学は法学部卒業でした。
親からの仕送りを拒否し、アルバイトとマンドリンと恋にうつつを抜かしていたためろくろく授業なんぞ出てはいませんが、「法哲学」の講義のとき聞いたドイツの歴史だけは鮮明に覚えています。
うろ覚えで、その先生の名前も忘れてしまったのですが、取り上げたのはドイツの法哲学者グスタフ・フォン・ラートブルッフでした。
第一次世界大戦の後、敗戦国ドイツは苦難の道を歩みます。この時代、ラートブルッフは司法長官に就任し、新しい法制に尽力します。ワイマール憲法の根幹は「民主的手続き=多数決」にありますが、ヒットラーは巧みに人々を扇動し、選挙と国民投票という民主的手続きでもって政権を獲得します。
その結果がアウシュビッツでした。ドイツの人々はうすうす(はっきりと)ユダヤ人大量虐殺を知りながら、見てみぬふりをしました。すべては合法的に進められました。
戦後、ラートブルッフは深い悔恨と反省をこめて、自らの法哲学を再考します。
多数決はほんとうに民主主義の万能の斧なのかと。
99人が君は死ぬべきだといったら従わなければならないのか。99人が、いや100人のうち100人が正しいといっても<多数決で決めてはいけないこと>があるのではないか。
それは「人間の尊厳」である。
人間の尊厳に関わることは多数決で決めてはならない、亭主は以来半世紀、この講義の教えを忘れたことはありません。
「移民」という分かりやすい状況を人質にとり、代議制という「寛容と熟慮の手続き」を放棄し、国民投票という二者択一を迫る「感情に訴える手続き」を強行したイギリス議会(特に保守党)の堕落を亭主は心の底から軽蔑し、絶望しています。
チャーチルが生きていたらなんと言うでしょうか。
●今日のお勧め作品は瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』です。
瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』『マルセル・デュシャン語録』
1968年
本、版画とマルティプル
マルセル・デュシャン、荒川修作、ジャスパー・ジョーンズ、ジャン・ティンゲリー
外箱サイズ:36.7×29.8×5.0cm
Ed.50 Signed
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