野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第28回
「最近の制作状況とART TAIPEIに向けて」
先月のエッセイでは制作が行き詰まり気味だのなんだか弱音を吐いてしまってお恥ずかしいです。
先月はソウルでのアートフェアKIAFに5年連続で出展させて頂き、会期中ずっとときの忘れものさんのブースにいて色々な方とお話し、広い会場で出展されている多くの作品群を観て、今ががんばり時、甘えた事を言っていたらダメだと気合が入りました。
KIAFのリポートも書こうかと思っていましたが、スタッフの新澤さんも書かれていたので、今回はKIAF後の制作状況を書こうと思います。
KIAFにて
10月中旬、ソウルから帰って早速新作の制作を開始しました。
作品制作の工程というのは作家によって色々だと思いますが、私の場合はまずはスケッチブックに鉛筆、色鉛筆で描きながらの構想をします。
その中で毎回こんな風に同じような思考を繰り返します。
まず、今までになかった真新しいものを作りたい!という気持ちで構想を始める
↓
ひたすら悩む、、なかなか浮かばず
↓
たまにパッと浮かぶとテンションが上がる!!
↓
でも細部まで詰めていくとどうもまだ甘い所があってまとまらない…凹む
↓
たとえ真新しくなくても、今素直に作りたいものを作ろうと開き直る
↓
何とかまとまる!
↓
ちょっとテンション上がる!
↓
でもやっぱり真新しさが無くて、これでいいのかってなる…
↓
また一から考え直す…頭ぐるぐる…
と、いつもそんな感じです 笑
ではいつ構想がモノになるのかというと、真新しいイメージが浮かんでそのままモノになる事が3%位、開き直って素直に考えた結果、真新しさはなくても今までの作品より進化したものができそうなのでOKな時が97%位でしょうか。
あと、一度浮かんだイメージを温め、細部を詰めて、時間が経ってからモノになる事もあります。
そして先日、新しい雰囲気の新作が完成しました、「Landscape#38」M12号(60.6×41cm)です。
画面の90%がプラチナ箔で、あと銀箔と金箔が少しと石炭です。
野口琢郎
「Landscape#38」
少し前に、今年始めた針で引っ掻くだけで描くRemembranceシリーズの構想をしている時、じゃあこの技法でLandscapeを作ったらどうなるかなと考えていて、いつもLandscapeは大半を自作の型紙を使って箔押しするのですが、この#38は型紙は一切使わず、区割りだけ決めて全て針での引っ掻き作業だけで作りました。
上手くいくのか、仕上がりのイメージが想像できにくいまま箔押しを開始したので、初めはぎこちなかったのですが、この技法に適した表現がすぐに掴めたので、30%程済んだ時にはもう必ず良い作品になると確信でき、その後はとても楽しかったです。
今まで続けてきたLandscapeシリーズをこれからどう進化させればよいのか、どうにか少し崩せないかとずっと考えていたので、Remembranceシリーズとのあいの子という形で軟らかく、少し自由に進化させる事ができて、少し行き詰まったりもありましたが、もがいて何とか前に進めたようで本当に嬉しかったです。
そして、この作品は今月台北で開催されるアートフェア、ART TAIPEIにときの忘れものさんのブースから出展させて頂きます。
このエッセイが載る15日はもうART TAIPEIの最終日、また来月にでもリポートを載せようと思います。
ART TAIPEIはアジアでも有数のレベルの高い大きなアートフェアなので、初の出展がとても楽しみです。
それで、この新しい技法で制作したLandscape#38に手応えがあったので、
感覚を忘れない内に同じ雰囲気で大きめのP30号(91×65.2cm)でLandscapeの連投、集中して6日間で85%程箔押しできました。
しかし、2作続けてひたすら針で画面を引っ掻き続けているので、手首がジワジワ痛くなってきて、湿布貼って制作してます、、まったくボロいもんです。

左/制作中のLandscape#39
この#39は前回のものより色のある場所を増やし、構成要素も増えてます。
何となく、今までの型紙を使う技法より針で引っ掻く方が密度が濃くなるせいか、本当の俯瞰した街の風景に近くなるような気がします。
ちなみに、Landscapeの制作の為に、よくGoogleマップや航空写真は見て、何か面白いイメージがないかと探したりします。
あと、型紙をやめて針で引っ掻くようになって少し自由に軟らかくする事ができましたが、
きっともっと自由に軟らかくしたいならば区割り自体を自由な曲線にすればいいのだと思います。
ただ、程よい堅さの中の軟らかさというのが心地よいというか、どうも好きなようで、今の感じはベストかもしれません。
ま、と言いながらその内もっと崩したものを試しに作ってみようかとは思っていますが。
長くなりましたが最後に、枚方市で11月頭にオープンした宿泊施設「GOEN Lounge & STAY Hirakata」のロビーに設置頂く事になった作品の納品と設置立ち会いに行ってきました。
場所は京阪枚方市駅から徒歩1分程、今年5月にオープンしたT-SITEの目の前です。
納品に行ったのが10月末のオープン直前だったので、最後の工事やミーティングでお忙しい中施設内もご案内頂きましたが、
個室の他になんと男女別のドミトリ-があり、露天風呂までありました。
内装は美しく、インテリアのセンスも良く、これは海外からの旅人さんも快適だろうなと思いました。
作品はフロントのある部屋に設置頂き、スポットも当てて頂いて良い感じでした、有り難や。
宿泊施設「GOEN Lounge & STAY Hirakata」


ロビーにて

(のぐち たくろう)
■野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。
●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
野口琢郎
「Remembrance#C」
2016年
箔画(Lacquer, Gold/Silver/Platinum foil, Charcoal, Resin, Clear acrylic paint on Wood panel)
52.0×50.0cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは「ART TAIPEI 2016」に出展します

会期:2016年11月11日(金)12:00~21:00 ※プレビュー(招待者、プレスのみ)
会期:2016年11月12日(土)11:00~19:00
会期:2016年11月13日(日)11:00~19:00
会期:2016年11月14日(月)11:00~19:00
会期:2016年11月15日(火)11:00~18:00
会場:Taipei World Trade Center, Hall 1
公式サイト:http://art-taipei.com/2016/en/
出品作家:葉栗剛、長崎美希、野口琢郎、秋葉シスイ、安藤忠雄、磯崎新、関根伸夫、浮田要三、他
◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
「最近の制作状況とART TAIPEIに向けて」
先月のエッセイでは制作が行き詰まり気味だのなんだか弱音を吐いてしまってお恥ずかしいです。
先月はソウルでのアートフェアKIAFに5年連続で出展させて頂き、会期中ずっとときの忘れものさんのブースにいて色々な方とお話し、広い会場で出展されている多くの作品群を観て、今ががんばり時、甘えた事を言っていたらダメだと気合が入りました。
KIAFのリポートも書こうかと思っていましたが、スタッフの新澤さんも書かれていたので、今回はKIAF後の制作状況を書こうと思います。
KIAFにて10月中旬、ソウルから帰って早速新作の制作を開始しました。
作品制作の工程というのは作家によって色々だと思いますが、私の場合はまずはスケッチブックに鉛筆、色鉛筆で描きながらの構想をします。
その中で毎回こんな風に同じような思考を繰り返します。
まず、今までになかった真新しいものを作りたい!という気持ちで構想を始める
↓
ひたすら悩む、、なかなか浮かばず
↓
たまにパッと浮かぶとテンションが上がる!!
↓
でも細部まで詰めていくとどうもまだ甘い所があってまとまらない…凹む
↓
たとえ真新しくなくても、今素直に作りたいものを作ろうと開き直る
↓
何とかまとまる!
↓
ちょっとテンション上がる!
↓
でもやっぱり真新しさが無くて、これでいいのかってなる…
↓
また一から考え直す…頭ぐるぐる…
と、いつもそんな感じです 笑
ではいつ構想がモノになるのかというと、真新しいイメージが浮かんでそのままモノになる事が3%位、開き直って素直に考えた結果、真新しさはなくても今までの作品より進化したものができそうなのでOKな時が97%位でしょうか。
あと、一度浮かんだイメージを温め、細部を詰めて、時間が経ってからモノになる事もあります。
そして先日、新しい雰囲気の新作が完成しました、「Landscape#38」M12号(60.6×41cm)です。
画面の90%がプラチナ箔で、あと銀箔と金箔が少しと石炭です。
野口琢郎「Landscape#38」
少し前に、今年始めた針で引っ掻くだけで描くRemembranceシリーズの構想をしている時、じゃあこの技法でLandscapeを作ったらどうなるかなと考えていて、いつもLandscapeは大半を自作の型紙を使って箔押しするのですが、この#38は型紙は一切使わず、区割りだけ決めて全て針での引っ掻き作業だけで作りました。
上手くいくのか、仕上がりのイメージが想像できにくいまま箔押しを開始したので、初めはぎこちなかったのですが、この技法に適した表現がすぐに掴めたので、30%程済んだ時にはもう必ず良い作品になると確信でき、その後はとても楽しかったです。
今まで続けてきたLandscapeシリーズをこれからどう進化させればよいのか、どうにか少し崩せないかとずっと考えていたので、Remembranceシリーズとのあいの子という形で軟らかく、少し自由に進化させる事ができて、少し行き詰まったりもありましたが、もがいて何とか前に進めたようで本当に嬉しかったです。
そして、この作品は今月台北で開催されるアートフェア、ART TAIPEIにときの忘れものさんのブースから出展させて頂きます。
このエッセイが載る15日はもうART TAIPEIの最終日、また来月にでもリポートを載せようと思います。
ART TAIPEIはアジアでも有数のレベルの高い大きなアートフェアなので、初の出展がとても楽しみです。
それで、この新しい技法で制作したLandscape#38に手応えがあったので、
感覚を忘れない内に同じ雰囲気で大きめのP30号(91×65.2cm)でLandscapeの連投、集中して6日間で85%程箔押しできました。
しかし、2作続けてひたすら針で画面を引っ掻き続けているので、手首がジワジワ痛くなってきて、湿布貼って制作してます、、まったくボロいもんです。

左/制作中のLandscape#39この#39は前回のものより色のある場所を増やし、構成要素も増えてます。
何となく、今までの型紙を使う技法より針で引っ掻く方が密度が濃くなるせいか、本当の俯瞰した街の風景に近くなるような気がします。
ちなみに、Landscapeの制作の為に、よくGoogleマップや航空写真は見て、何か面白いイメージがないかと探したりします。
あと、型紙をやめて針で引っ掻くようになって少し自由に軟らかくする事ができましたが、
きっともっと自由に軟らかくしたいならば区割り自体を自由な曲線にすればいいのだと思います。
ただ、程よい堅さの中の軟らかさというのが心地よいというか、どうも好きなようで、今の感じはベストかもしれません。
ま、と言いながらその内もっと崩したものを試しに作ってみようかとは思っていますが。
長くなりましたが最後に、枚方市で11月頭にオープンした宿泊施設「GOEN Lounge & STAY Hirakata」のロビーに設置頂く事になった作品の納品と設置立ち会いに行ってきました。
場所は京阪枚方市駅から徒歩1分程、今年5月にオープンしたT-SITEの目の前です。
納品に行ったのが10月末のオープン直前だったので、最後の工事やミーティングでお忙しい中施設内もご案内頂きましたが、
個室の他になんと男女別のドミトリ-があり、露天風呂までありました。
内装は美しく、インテリアのセンスも良く、これは海外からの旅人さんも快適だろうなと思いました。
作品はフロントのある部屋に設置頂き、スポットも当てて頂いて良い感じでした、有り難や。
宿泊施設「GOEN Lounge & STAY Hirakata」

ロビーにて
(のぐち たくろう)
■野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。
●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
野口琢郎「Remembrance#C」
2016年
箔画(Lacquer, Gold/Silver/Platinum foil, Charcoal, Resin, Clear acrylic paint on Wood panel)
52.0×50.0cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは「ART TAIPEI 2016」に出展します

会期:2016年11月11日(金)12:00~21:00 ※プレビュー(招待者、プレスのみ)
会期:2016年11月12日(土)11:00~19:00
会期:2016年11月13日(日)11:00~19:00
会期:2016年11月14日(月)11:00~19:00
会期:2016年11月15日(火)11:00~18:00
会場:Taipei World Trade Center, Hall 1
公式サイト:http://art-taipei.com/2016/en/
出品作家:葉栗剛、長崎美希、野口琢郎、秋葉シスイ、安藤忠雄、磯崎新、関根伸夫、浮田要三、他
◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
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