野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第29回
「2016年をふり返って」
もう12月、この一年もバタバタとあっという間に過ぎました。
ふり返ると、今年は1月10日にオープンしたロームシアター京都の蔦屋書店入り口に設置された大作「Landscape#35-洛中洛外図-」の制作が秋から年明けまでかかり、もうクタクタでしたが、大きな作品を何とか無事に完成できた達成感から始まった一年でした。
そして大阪での個展、国内のアートフェア出展が大阪、福岡の2回、ときの忘れものさんから出展させて頂いた海外アートフェアが釜山、ジャカルタ、ソウル、台北の4回、恐らく今までで一番出張の多い一年でした。
4回もの海外アートフェア出展の機会を与えてくださったときの忘れものさんに心より感謝致します。
作品制作に関しては今年もなかなか悩む事が多く順調だったとはいえませんが、もがいた中でいくつか真新しいものも作る事ができたのは救いでした。
天才でもなければ真新しいものなんて滅多に作れませんが、それでもとにかく頭の中を耕して、たまには旅にでも出て頭の栄養補給もしながら作り続けていれば、その中に自分でも想像できなかった新しい芽が出るものなのだと思っています。
一年に一度程大好きな沖縄に一週間位旅に行くのを優雅に遊んでると思われる事もありますが、頭の栄養補給も無しに作り続けていると、その内にカスカスのトマトのように頭の中にある素材の質が落ちて、料理が不味くなるように作品の質も落ちると思っています。
海や空を題材にした作品が多い事もありますが、一年に一度は沖縄の美しい海をぼーっと眺めて、心で感じる、その時間は本当に大切だと思っています。
来年の予定はまた随時ご報告させて頂きますが、年明け早々ときの忘れものさんよりART STAGE SINGAPOREに出展させて頂きます。
他にもアートフェアや建築絡みのお仕事などあるので、この年末年始も作品制作をがんばります。
あと、有り難い事に来年2017年版の古河電工さんのカレンダーに自分の作品写真を採用頂きました。
過去に5回程でしょうか、いくつかの広告代理店さんから企業カレンダーのお話を頂き、画像をお渡しして制作頂いたのですが、他社さんとの競合プレゼンもあって採用頂ける所まで辿り着かず、自分はまだ全然知名度も無いので、やはり難しいものだなと思っていたのですが、今回初めて採用頂けました。
今回自分の作品を使って制作頂き、戦ってくださった株式会社アド・エンジニアーズ・オブ・トーキョーさん、そして古河電工さんに心より感謝しております。







古河電工さんは1884年創業、電線御三家とよばれる伝統ある会社で、光ファイバーでは世界シェア2位、電線では世界5位、自動車エアバッグ用ステアリング・ロール・コネクターなどいくつかの部門で世界首位など、グループ全体の従業員は4万6000人程おられるそうです。
このカレンダーは15000部印刷され、古河電工さんの顧客の方に配られるそうなので、これを機会に少しでも自分の事を知って頂ければ有り難いなと思います。
ちなみにカレンダーにはある程度の季節感が必要になるのですが、自分の作品は季節感があるものが少ないもので、選んで頂いた作品の中にはなかなか懐かしい作品もあります。
だいぶ前の作品で、当時記録撮影していたカメラの画質ではカレンダーには足りないものもあり、所蔵頂いている方に作品をお借りして再撮影したものもありました。
いつか自分の画集を作りたいという思いもあって毎作品記録撮影していましたが、役に立って良かったなと思います。
では、毎回本当に下手くそな文章で申し訳ないのですが、読んで頂いている方がおられましたらいつもありがとうございます。
来年も良い作品を作れるように地道にがんばっていきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
では良いお年を。
(のぐち たくろう)
■野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。
*画廊亭主敬白
野口さんから一足早い「2016年回顧」をいただきました。今年は南船北馬、ほんとうにあちこち参戦していただき、ありがとうございました。
若い作家たちが見知らぬ海外に出て他流試合をする、アートフェアでの反応、見聞が明日からの創作の糧になってくれることを期待しています。
古河電工さんのカレンダー、おめでとうございます。印刷のクォリティの高い15,000枚もの絵が、一年中会社や住宅の壁を飾るのですから効果は抜群です。
また昔話になりますが、亭主は一時期カレンダーの仕事に従事していたことがあります。主に大日本印刷の仕事でしたが、ウォーホル、フォロンなど海外作家の絵を使うことが多かったのですが、お正月(つまり一年前)から準備を始め、プレゼン、コンペを経て、早いものは夏の終わりから印刷に入るという作業を繰り返していました。今回の野口さんのカレンダーも相当事前に練られ、実現したものと思いますが、あの金箔を綺麗な印刷にするのは大変だったでしょう。
下にご紹介するのは、昨日から始まった「2016年を送る~画廊コレクション展」の出品作品です。
大きいです。
今回は7人の作家を選び、比較的大きな作品を各1点倉庫から運び展示しています(瑛九のみ小品)。
どうぞお出かけください。
2. 野口琢郎
《Landscape#30》
2013
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
91.0×182.0cm Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
●本日の瑛九情報!
~~~
ただいま近美で開催中の<瑛九 1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす>展には近美が誇るフォトデッサン、フォトコラージュの名作がずらり展示されています。さすが! ではありますが、一度は国立近代美術館の壁に「作品A」として展示されながら、その後未亡人のもとからコレクターに、さらにときの忘れものを経て遂には海を渡ってしまった名作もあります。いまさらですがほんとうは日本に残したかった(涙)。

瑛九
「傷ましき顔」(作品A)
1937年
フォトコラージュ
19.1x13.6cm
鉛筆サイン・年記あり
※日本経済新聞社『瑛九作品集』148ページ所収
詳しくは2012年08月18日ブログ:瑛九のフォトコラージュ「傷ましき顔」をお読みください。
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<瑛九 1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす>展が東京国立近代美術館で始まりました(11月22日~2017年2月12日)。ときの忘れものは会期終了まで瑛九について毎日発信します。
◆ときの忘れものは「2016年を送る~画廊コレクション展」を開催しています。
会期:2016年12月14日[土]―12月27日[火] *日・月・祝日休廊
2016年も残りわずかとなりました。
年末最後の展示として、画廊コレクションから7人の作家のそれぞれ大きな作品を一点ずつご覧いただきます。
出品作家:秋葉シスイ、野口琢郎、光嶋裕介、永井桃子、小野隆生、関根伸夫、瑛九
◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
「2016年をふり返って」
もう12月、この一年もバタバタとあっという間に過ぎました。
ふり返ると、今年は1月10日にオープンしたロームシアター京都の蔦屋書店入り口に設置された大作「Landscape#35-洛中洛外図-」の制作が秋から年明けまでかかり、もうクタクタでしたが、大きな作品を何とか無事に完成できた達成感から始まった一年でした。
そして大阪での個展、国内のアートフェア出展が大阪、福岡の2回、ときの忘れものさんから出展させて頂いた海外アートフェアが釜山、ジャカルタ、ソウル、台北の4回、恐らく今までで一番出張の多い一年でした。
4回もの海外アートフェア出展の機会を与えてくださったときの忘れものさんに心より感謝致します。
作品制作に関しては今年もなかなか悩む事が多く順調だったとはいえませんが、もがいた中でいくつか真新しいものも作る事ができたのは救いでした。
天才でもなければ真新しいものなんて滅多に作れませんが、それでもとにかく頭の中を耕して、たまには旅にでも出て頭の栄養補給もしながら作り続けていれば、その中に自分でも想像できなかった新しい芽が出るものなのだと思っています。
一年に一度程大好きな沖縄に一週間位旅に行くのを優雅に遊んでると思われる事もありますが、頭の栄養補給も無しに作り続けていると、その内にカスカスのトマトのように頭の中にある素材の質が落ちて、料理が不味くなるように作品の質も落ちると思っています。
海や空を題材にした作品が多い事もありますが、一年に一度は沖縄の美しい海をぼーっと眺めて、心で感じる、その時間は本当に大切だと思っています。
来年の予定はまた随時ご報告させて頂きますが、年明け早々ときの忘れものさんよりART STAGE SINGAPOREに出展させて頂きます。
他にもアートフェアや建築絡みのお仕事などあるので、この年末年始も作品制作をがんばります。
あと、有り難い事に来年2017年版の古河電工さんのカレンダーに自分の作品写真を採用頂きました。
過去に5回程でしょうか、いくつかの広告代理店さんから企業カレンダーのお話を頂き、画像をお渡しして制作頂いたのですが、他社さんとの競合プレゼンもあって採用頂ける所まで辿り着かず、自分はまだ全然知名度も無いので、やはり難しいものだなと思っていたのですが、今回初めて採用頂けました。
今回自分の作品を使って制作頂き、戦ってくださった株式会社アド・エンジニアーズ・オブ・トーキョーさん、そして古河電工さんに心より感謝しております。







古河電工さんは1884年創業、電線御三家とよばれる伝統ある会社で、光ファイバーでは世界シェア2位、電線では世界5位、自動車エアバッグ用ステアリング・ロール・コネクターなどいくつかの部門で世界首位など、グループ全体の従業員は4万6000人程おられるそうです。
このカレンダーは15000部印刷され、古河電工さんの顧客の方に配られるそうなので、これを機会に少しでも自分の事を知って頂ければ有り難いなと思います。
ちなみにカレンダーにはある程度の季節感が必要になるのですが、自分の作品は季節感があるものが少ないもので、選んで頂いた作品の中にはなかなか懐かしい作品もあります。
だいぶ前の作品で、当時記録撮影していたカメラの画質ではカレンダーには足りないものもあり、所蔵頂いている方に作品をお借りして再撮影したものもありました。
いつか自分の画集を作りたいという思いもあって毎作品記録撮影していましたが、役に立って良かったなと思います。
では、毎回本当に下手くそな文章で申し訳ないのですが、読んで頂いている方がおられましたらいつもありがとうございます。
来年も良い作品を作れるように地道にがんばっていきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
では良いお年を。
(のぐち たくろう)
■野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。
*画廊亭主敬白
野口さんから一足早い「2016年回顧」をいただきました。今年は南船北馬、ほんとうにあちこち参戦していただき、ありがとうございました。
若い作家たちが見知らぬ海外に出て他流試合をする、アートフェアでの反応、見聞が明日からの創作の糧になってくれることを期待しています。
古河電工さんのカレンダー、おめでとうございます。印刷のクォリティの高い15,000枚もの絵が、一年中会社や住宅の壁を飾るのですから効果は抜群です。
また昔話になりますが、亭主は一時期カレンダーの仕事に従事していたことがあります。主に大日本印刷の仕事でしたが、ウォーホル、フォロンなど海外作家の絵を使うことが多かったのですが、お正月(つまり一年前)から準備を始め、プレゼン、コンペを経て、早いものは夏の終わりから印刷に入るという作業を繰り返していました。今回の野口さんのカレンダーも相当事前に練られ、実現したものと思いますが、あの金箔を綺麗な印刷にするのは大変だったでしょう。
下にご紹介するのは、昨日から始まった「2016年を送る~画廊コレクション展」の出品作品です。
大きいです。
今回は7人の作家を選び、比較的大きな作品を各1点倉庫から運び展示しています(瑛九のみ小品)。
どうぞお出かけください。
2. 野口琢郎《Landscape#30》
2013
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
91.0×182.0cm Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
●本日の瑛九情報!
~~~
ただいま近美で開催中の<瑛九 1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす>展には近美が誇るフォトデッサン、フォトコラージュの名作がずらり展示されています。さすが! ではありますが、一度は国立近代美術館の壁に「作品A」として展示されながら、その後未亡人のもとからコレクターに、さらにときの忘れものを経て遂には海を渡ってしまった名作もあります。いまさらですがほんとうは日本に残したかった(涙)。

瑛九
「傷ましき顔」(作品A)
1937年
フォトコラージュ
19.1x13.6cm
鉛筆サイン・年記あり
※日本経済新聞社『瑛九作品集』148ページ所収
詳しくは2012年08月18日ブログ:瑛九のフォトコラージュ「傷ましき顔」をお読みください。
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<瑛九 1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす>展が東京国立近代美術館で始まりました(11月22日~2017年2月12日)。ときの忘れものは会期終了まで瑛九について毎日発信します。
◆ときの忘れものは「2016年を送る~画廊コレクション展」を開催しています。
会期:2016年12月14日[土]―12月27日[火] *日・月・祝日休廊
2016年も残りわずかとなりました。年末最後の展示として、画廊コレクションから7人の作家のそれぞれ大きな作品を一点ずつご覧いただきます。
出品作家:秋葉シスイ、野口琢郎、光嶋裕介、永井桃子、小野隆生、関根伸夫、瑛九
◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
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