野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第37回

ときの忘れものさんの移転お披露目会、ART OSAKA

先月7日は、移転されたときの忘れものさんのお披露目会に行くために日帰りで東京へ、建築家の阿部勤さんの設計された素晴らしい建築で、階段を上りながら作品を観る感覚はギャラリーというより小さな美術館のようでとても新鮮でした。

DSC_5977ときの忘れもの移転お披露目会にて


DSC_5958


綿貫さん曰く、作品によってはコンクリートの壁面に負けてしまうから、何を展示するのかギリギリまで悩んで大変でしたとの事でしたが、僕の作品に関しては、コンクリート壁に箔画は負ける事無く相性は良いように思ったのと、自然光が多く入るこのスペースならば箔の画面はきっと美しく輝くはずなので、来年開催させて頂く予定の個展が楽しみになりました。

7月7~9日に開催されたART OSAKAにNii Fine Artsさんの部屋から出展させて頂きました。
11月末に京都個展をひかえている関係で、今回は作品数は少なかったのですが、
いつもこのホテルグランヴィア大阪での展示は日中自然光で輝く作品を観て頂く事ができるので嬉しくて、シンプルでも存在感のある展示ができたのではと思っています。

ART OSAKA展示風景1ART OSAKA展示風景


ART OSAKA展示風景2


ART OSAKA展示風景3


ART OSAKA展示風景4


昨年に続き、今回もART OSAKA用に画家の稲田早紀さんとのコラボレーション作品を一点制作しましたが、二回目という事で二人共少し慣れ、前回よりもクオリティを上げられた良い作品を作る事ができました。

稲田早紀さんとのコラボ作品「ひかりのこ」稲田早紀さんとのコラボ作品「ひかりのこ」


普段自分の作品制作に精一杯なのと、元々コラボレーションというものにあまり興味が無く、今後もよほど作りたいと感じない限りは積極的にする気は無いのですが、いつもと違うきっかけで新しい表現に繋がるという事は今までも数年に一度はありました。

Infinite#1野口琢郎
「Infinite#1」
2009年
箔画
37.9×45.5㎝


例えば画像の作品、2009年作の「Infinite#1」(37.9×45.5㎝)です。
この作品はまだ個人のお客様からの受注制作をお受けできていた頃、とある方に詩集の表紙用に海を描いて欲しいという依頼で、その方は波の表現に強いこだわりをお持ちで、何とか野口さんなりの新しい海の表現を見つけて欲しいとの事でしたので、かなり悩みましたが、その中で初めて箔を針で引っ掻いて波を描く事を思いついた、今に繋がるきっかけになった大事な作品です。
はっと思いつき、水を得た魚のように勢い良く針を動かしたあの時の感覚は今でもはっきり覚えています。

普段の作品制作の中でも、常に何か新しいものをと毎日試行錯誤はしていますが、苦しんでも何も出ない事の方が多くて、自分の思い付く事には限界があるので、柔軟な頭で、色々な人や芸術作品、旅などから刺激を受けつつ進化していければと思います。

ただ、今年は後厄年でやっと無事に抜けられると思っていたら、日常生活の中で色々な事が起きて集中力が分散してしまう事が多いのですが、集中力って胡麻のような粒を一粒一粒拾い集め、蓄積していくもののような感覚があって、若い頃は日々の出来事の振動ですぐに手のひらから弾け飛んでしまっていたけど、少し歳をとったお陰で全部弾けずにある程度は握りしめられるようになったのかと思っています、まだまだ甘ちゃんですが、がんばります。
のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

●今日のお勧め作品は野口琢郎です。
20170815_noguchi_23_HANABI-9野口琢郎
「HANABI #9」
2011年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、透明アクリル絵具)
91×72.7 cm
サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。

●重要なお知らせ
現在、ときの忘れもののメールアドレスより、多数の迷惑メールが発信されています。
内容は、英文の求人広告と、詳細を記載したというウェブサイトへのリンクです。
ときの忘れものが日本のお客様に英文の、または件名が無記入のメールを送ることはありません。
info@tokinowasuremono.comから上記のようなメールが届いている場合は、絶対に開かずに削除してください。


◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
12