スタッフSの中尾拓哉<マルセル・デュシャン、語録とチェス>トークレポート

 読者の皆様こんにちは、今月26日のブログ連載はお休みさせていただくことになりましたが、代わりに3回立て続けにギャラリートークレポートを書くことに相成りました、スタッフSこと新澤です。

 いざこの時期に入ってスタッフ全員が実感させられたのですが、現在ときの忘れものが入居しているLAS CASAS、冬は廊下部分がすごく冷えます。考えてみれば当たり前ですが、採光性が高い=窓が多い=放熱しやすい事に加え、床はタイルで壁はコンクリートとくれば熱はガンガン逃げるわけでして…とてもではありませんが、お客様を夕刻に一時間留め置けるような環境ではありません。ではどうするかと言えば、ちゃんと暖房のある場所で開催するしかないワケでして、予約数を半分に絞って図書室でのイベント開催となるワケです。今後冬に開催されるイベントは他の季節に比べ定員が少なくなりますので、参加をご希望の場合は早めにご予約をお願い致します。

 さて、本日ご紹介させていただくのは、10月27日に開催した移転後3回目のトークイベント<マルセル・デュシャン、語録とチェス>です。ときの忘れものの重要作家、瀧口修造と深い関わりのあったマルセル・デュシャンについて、美術評論家であり、先日『マルセル・デュシャンとチェス』を出版された中尾拓哉先生に語っていただきました。

20171027_デュシャンGT_01LAS CASAS 図書室にて。
今回のギャラリートークのために、中尾先生には多数のスライドをご用意いただきました。
順に紹介させていただきます。

20171027_デュシャンGT_02今回の前語りは亭主ではなく、瀧口修造研究者であり、当ブログにて連載「瀧口修造とマルセル・デュシャン」を掲載させていただいている土渕信彦様にお願いしました。

 デュシャンが1923年以降、《大ガラス》と呼ばれるガラスを支持体とした作品の制作を未完のままに放棄し、チェスに没頭したという話は有名ですが、中尾先生のお話を聞くと、デュシャンにとってチェスと美術と分けて考えるようなものではなかったようです。

20171027_デュシャンGT_12「なぜ、私のチェス・プレイが芸術活動ではないのですか。チェス・ゲームは非常に造形的です。それは構築される。それはメカニカルな彫刻ですし、美しいチェス・プロブレムをつくります。その美しさは頭と手でつくられるのです」
("Then and Now." - The New York Times Magazine 1965年1月 p.25より)
(画像をクリックすると可読サイズで表示されます)

 上記のデュシャンの発言を中尾先生曰く「真に受けて」書き上げたのが『マルセル・デュシャンとチェス』だそうです。一般にはデュシャンがチェスを始めたのは《大ガラス》放棄後と思われる方もおられるようですが、実際には絵画、チェスともに10歳以上年上の兄二人の影響で若い頃から学んでおり、チェスが早くからデュシャンの思考原理に大きな影響を与えていただろうことが伺えます。

 無知な自分が説明するより、当日、中尾先生がご用意してくれたスライドをご紹介します。
 画像をクリックすると可読サイズで表示されますので、ご覧ください。

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ご清聴ありがとうございました。
(しんざわ ゆう)

●中尾拓哉 著『マルセル・デュシャンとチェス』のご紹介
現代美術の父マルセル・デュシャンの制作論における秘密を、チェスを手がかりに精緻に読み解く、気鋭の美術評論家による力作。
20170930中尾拓哉 著
『マルセル・デュシャンとチェス』

2017年
平凡社 発行
396ページ
21.6x15.8cm
価格:4,800円(税別)※送料別途250円
*著者サイン入り
ときの忘れもので扱っています。


気鋭の美術評論家がチェスとデュシャンの失われた関係を解き明かし、制作論の精緻な読み解きから造形の根源へと至る、スリリングにしてこの上なく大胆な意欲作。生誕130年、レディメイド登場100年!
「チェスとデュシャンは無関係だという根拠なき風説がこの国を覆っていた。やっと霧が晴れたような思いだ。ボードゲームは脳内の抽象性を拡張する」──いとうせいこう氏推薦(本書帯より転載)
目次(抄)
・序章 二つのモノグラフの間に
・第一章 絵画からチェスへの移行
・第二章 名指されない選択の余地
・第三章 四次元の目には映るもの
・第四章 対立し和解する永久運動
・第五章 遺された一手をめぐって
・第六章 創作行為、白と黒と灰と

中尾 拓哉(なかお たくや)
美術評論家。1981年東京生まれ。
多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。
2014年に論考「造形、その消失において――マルセル・デュシャンのチェスをたよりに」で『美術手帖』通巻1000号記念第15回芸術評論募集佳作入選。
2017年に単著『マルセル・デュシャンとチェス』を平凡社より出版。
公式サイト:nakaotakuya.com

◆「細江英公写真展」は昨日終了しました。たくさんのご来廊ありがとうございました。
引き続き、明後日28日より「メキシコ地震被災地支援・チャリティー頒布会」を開催します。
201711mexico
会期:2017年11月28日(火)~12月2日(土)
出品100点のリストは11月11日ブログに掲載しました。
全作品、一律8,000円で頒布し、売上金全額を被災地メキシコに送金します。
どうぞ皆様、お出かけください。


◆銀座のギャラリーせいほうで宮脇愛子展が開催されています。
201711MIYAWAKI「宮脇愛子展 last works(2013~14)」
会期=2017年11月20日[月]~12月2日[土] ※日・祝日休廊
会場=ギャラリーせいほう 
〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目10-7 東成ビル1F
電話:03-3573-2468
最後の新作である油彩を中心に立体(ガラス、真鍮)、ドローイング、版画など。


●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料別途250円
*『瀧口修造展 I』及び『瀧口修造展 II』図録も好評発売中です。


安藤忠雄の奇跡安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言
2017年11月
日経アーキテクチュア(編)
B5判、352ページ
(NA建築家シリーズ 特別編 日経アーキテクチュア)
価格:2,700円+税 *送料:250円
亭主もインタビューを受け、1984年の版画制作始末を語りました。
安藤先生のサイン本をときの忘れもので扱っています。

六本木の国立新美術館では「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]~12月18日[月]
番頭おだちのオープニング・レポートはコチラを、光嶋裕介さんのエッセイ「安藤忠雄展を見て」と合わせてお読みください。
ときの忘れものでは1984年以来の安藤忠雄の版画、ドローイング作品をいつでもご覧になれます。


●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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