小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第10回

桜は散りましたが、春になると何かをやりたくなります。なんだかそわそわしませんか?新生活のそわそわでしょうか?この新生活感は、新入学生を迎え入れる学校や、今年から働きだした方々と、こんな町の古本屋でも同じもの。春になると「何かやったろうじゃないかー!」という気持ちになるのです。
というわけで、今年はこんなフェアを仕込んでみました。
「平凡社ライブラリーフェア」
「凡ラブッ、春のホン祭り♪(ヤマザキッハルノパンマツリッノリズムデ)」(平凡社ライブラリー公式ツイッターより引用)です!

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当店では、定期的にこういった出版社さんとの新刊書籍のフェアを立ち上げているのですが、ひとつ心がけていることがあります。
それは「1冊しか仕入れをしないこと」です。
もちろん、アクセントも兼ねて特におすすめの商品を数冊仕入れてカバーを見せる配置をしますが、基本的には1冊ずつしか仕入れず、売切れたら追加なし!です。
こうすることにより、よりたくさんのアイテムを展開できます。写真をみてください。まるでローマの石畳を見るかのような、本の並びを・・・。
そして、さらに、フェア棚にお客様との真剣勝負が生まれます。一冊しか入れずに、売り切れても追加しないルールなので「あの本は売れちゃいましたか?」と言われたら店主の負け。「これを数冊仕入れておけば・・・」と後悔することになります。
新刊書籍も、古本と同じように一点物の気分を味わって欲しい。「新刊書籍ならどこで買っても同じ」なのではなく、価格は一緒でも(だからこそ)、どこで、どんな気分の時に買ったかを大切なのだ!という思いを込めたフェアなのです。

そんな「平凡社ライブラリーフェア」からおすすめの一冊をご紹介します。
ジョナサン・スウィフト『召使心得』です。

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スウィフトは、解説不要の、あの『ガリヴァー旅行記』の作者。
『ガリヴァー』の持っているおとぎ話的な側面ばかりに注目していると、彼の持っている超一級の「風刺」の刃にグサリとやられるように、この一冊は現代を生きる我々にさえ、深く深く刺さる一冊。特に有名なのは当時のアイルランドの貧困を世に問うために出された「慎ましき提案」。彼は、貧困の救済策として、「アイルランドの幼児を食卓に供すること」を提案するのです。「悲惨な事態を引き起こしている邪悪なる政治に対して邪悪なる方法を提案し、それによって問題状況の深刻さを露悪的に示す」(訳者解説より)このスウィフトの論集は、我々の持っている想像力を試しているような何とも不敵な一冊です。
おくに たかし

■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●今日のお勧め作品は、難波田龍起です。
20180205_nambata_50難波田龍起
《(コラージュ)》
1974年
紙にグワッシュ、コラージュ
16.9×14.9cm
サインあり
裏にサインと年記あり

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●ときの忘れものは5月3日(木・祝日)~5月7日(月)まで休廊です。
ブログは年中無休なので、どうぞお楽しみください。

◆小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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