「内間安瑆・内間俊子展」
会期:2018年7月17日(火)~8月10日(金)*日・月・祝日休廊
ウチマアンセイ、ウチマトシコと言ってもその名を覚えているのは60代以上の方でしょう。
画商はもちろん、学芸員でもその名を知る人は残念ですが少なくなりました。
1950年代、恩地孝四郎をリーダーとする戦後の創作版画運動に参加した内間安瑆と、瑛九をリーダーとするデモクラート美術家協会に参加した内間俊子(旧姓青原)が1954年に結婚後、ともにアメリカで新しい美術の道を歩むことを決意し、幼い子息(内間安樹さん)を連れてアメリカに渡ったのは今から60年前のことでした。
1982年12月に内間安瑆が病に倒れ、長い闘病生活の末に2000年5月に死去、献身的に支えた俊子夫人もその年の12月に亡くなりました。
あれからもう18年が過ぎました。
このたび、ときの忘れものではニューヨークのご遺族の全面的な協力を得て「内間安瑆・内間俊子展」を開催します。
会場のスペースの関係から展示できるのは20点弱ですが、作品は約50点を準備いたしました。
私たちが内間安瑆の作品を知ったのは1976年春、上野の都美術館で開かれた日本版画協会第44回展に出品された木版画『In Blue(Dai)』でした(その後の経緯は、版画掌誌第4号の編集後記を参照)。
長年の試行錯誤を経て、浮世絵の伝統技法を深化させ「色面織り」と自ら呼んだ独自の技法を確立し、伝統的な手摺りで45度摺を重ねた『森の屏風 Forest Byobu』連作が誕生するちょうどそのときに私たちは出会い、文通を重ねました。メールなんてない時代です。
内間安瑆の木版画に激しい魅力を感じた私たちは版画のエディションをお願いし(1981年)、現代版画センター企画による全国巡回展(1982年)に取り組みました。
1982年夏には現代版画センタ-の機関誌のためにニュ-ヨ-クでインタビ ュ-(その1、その2、その3)に応じてくださったのですが、その僅か数か月後の12月、突然の不幸が夫妻を襲います。内間安瑆が脳卒中で倒れすべてのプロジェクトが中断してしまいました。
その後も幾度か展覧会を開催し、没後の遺作展などを通じその優れた作品群を紹介してまいりました。
2014年には沖縄県立博物館・美術館で待望の大回顧展が開催されました。しかし、沖縄は遠い。何とか東京近辺で内間先生の回顧展が実現できるといいのですが。
内間俊子の作品については、現代版画センター時代に箱のオブジェなどを紹介していましたが、1997年11月に青山のときの忘れもので開催した「久保貞次郎と作家たち-追悼集『久保貞次郎を語る』刊行記念展」で版画作品を展示しました。1954年6月に刊行された『スフィンクス 瀧口修造の詩による版画集』に挿入されていた一点です。
久保貞次郎企画、福島辰夫編集、山城隆一デザインによるこの詩画集にただ一人の女性作家として参加したのが青原俊子、のちの内間俊子です。
早くから前衛画家として活躍し、渡米後の1966年頃から、古い木片や石などを封印したボックス型のアッサンブラージュやコラージュの制作に取り組み、全米各地の展覧会や日本での個展での発表を続けました。
1982年から体の自由を失った夫を18年間にわたり献身的に看病しながら、限られた時間の中でも制作は続けられました。作品は「夢、希望、思い出」をテーマにしたものが多く、日常の「モノ」たちの組み合わせから内間俊子の人生の記録が表現されています。
二人が作家として多くの優れた作品を残したことはこれからもっと評価していかねばなりませんが、忘れてはならないのは多くの日本人アーティストをサポートしたその功績です。
1960年代、日本からアメリカへの渡航、滞在は今から考えられないほど制約の多いものでした。多くの日本人作家が内間夫妻を頼って太平洋を渡って行ったのでした。
●内間安瑆の作品紹介
内間安瑆は1921年アメリカに生まれます。苗字からわかるように父と母は沖縄からの移民です。1940年日本に留学、戦時中は帰米せず、早稲田大学で建築を学びます。油彩の制作をはじめ、後には木版画に転じます。
1950年アンデパンダン展(東京都美術館)に出品。1950年代初めにイサム・ノグチと知り合い、以降親しく交流する。1954年オリバー・スタットラーの取材に通訳として同行し、その著作に協力した。
その折に創作版画の恩地孝四郎にめぐり合い大きな影響を受けます。
1954年デモクラート美術家協会の青原俊子と結婚。1955年東京・養清堂画廊で木版画による初個展を開催。1959年妻の俊子と息子を伴い帰米、ニューヨーク・マンハッタンに永住。版画制作の傍ら、サラ・ローレンス大学で教え、1962と70年にグッゲンハイム・フェローシップ版画部門で受賞。サラ・ローレンス大学名誉教授を務めました。
日米、二つの祖国をもった内間安瑆は浮世絵の伝統技法を深化させ「色面織り」と自ら呼んだ独自の技法を確立し、伝統的な手摺りで45度摺を重ねた『森の屏風 Forest Byobu』連作を生み出します。現代感覚にあふれた瑞々しい木版画はこれからもっともっと評価されるに違いありません。
1)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Hermit"
1957年
木版
イメージサイズ:77.1×41.0cm
フレームサイズ:96.3×58.4cm
サインあり
2)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"An Emotion (或る感情)"
1959年
木版
イメージサイズ:40.8×30.2cm
シートサイズ:42.6×30.9cm
サインあり
3)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Shifting Horizon"
1960年
木版
イメージサイズ:31.7×24.0cm
シートサイズ:53.0×38.0cm
Ed.15
サインあり
4)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Early Summer Rain"
1961年
木版
イメージサイズ:50.5×38.0cm
シートサイズ:61.5×45.5cm
サインあり
5)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Spring Snow"
1962年
木版
イメージサイズ:77.5×33.5cm
フレームサイズ:93.6×49.8cm
サインあり
7)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Reflection in Rain"
1965年
木版
イメージサイズ:46.0×41.0cm
シートサイズ:49.5×44.0cm
サインあり
8)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"City Lights"
1967年
木版
イメージサイズ:54.0×41.0cm
シートサイズ:60.0×44.0cm
サインあり
9)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Pastoral Poem"
1967年
木版
イメージサイズ:39.3×18.1cm
シートサイズ:44.8×30.6cm
サインあり
10)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Short Poem Black and Red"
1967年
木版
イメージサイズ:31.7×24.0cm
シートサイズ:44.6×31.1cm
サインあり
11)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Ruins B"
1967年
木版
イメージサイズ:17.6×55.6cm
シートサイズ:22.6×60.1cm
Ed.30
サインあり
12)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Short Poem"
1967年
木版
イメージサイズ:17.6×55.6cm
シートサイズ:22.8×60.7cm
サインあり
13)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Time, Space-Horizontal B"
1969年
木版
イメージサイズ:35.5×75.8cm
フレームサイズ:55.5×95.5cm
Ed.30
サインあり
14)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"In Space Pink"
1969年
木版
イメージサイズ:76.0×50.5cm
シートサイズ:84.0×57.0cm
サインあり
15)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Space Landscape (C)"
1970~75年
木版
イメージサイズ:76.0×51.5cm
シートサイズ:79.5×58.5cm
サインあり
16)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Two Spheres in Space"
1971~73年
木版
イメージサイズ:76.0×52.0cm
シートサイズ:86.6×59.9cm
Ed.30
サインあり
17)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"I-V Space Tranquility"
1972年
木版
イメージサイズ:70.6×53.1cm
シートサイズ:82.4×61.4cm
サインあり
18)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Space Gesture"
1972~76年
木版
イメージサイズ:73.5×53.0cm
シートサイズ:78.5×58.0cm
Ed.30
サインあり
19)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Aretic Landscape"
1973~76年
多色木版 Color woodcut
イメージサイズ:76.0×53.4cm
シートサイズ:83.7×61.3cm
Ed.30
サインあり
20)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"In Blue"
1973
多色木版 Color woodcut
イメージサイズ:7.8x11.0cm
シートサイズ:20.2×25.3cm
Ed.200
サインあり
21)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"In Blue (Dai)"
1975年
木版
イメージサイズ:47.7×73.6cm
シートサイズ:57.0×78.8cm
Ed.30
サインあり
22)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Window Nuance (Rose)"
1978年
木版
イメージサイズ:30.0×22.0cm
シートサイズ:37.5×28.5cm
サインあり
23)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Byobu with Bouquet"
1979年(2001年プリント)
木版
イメージサイズ:19.7×26.5cm
シートサイズ:24.0×31.4cm
Ed.35(内Ed.1からEd.10が作家による自摺り)
※版画掌誌4号A版挿入作品
24)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Byobu (Autumn)"
1979年
木版
イメージサイズ:45.5×76.0cm
シートサイズ:55.0×88.0cm
サインあり
25)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Byobu (Fragrance)"
1981年
木版(摺り:米田稔)
イメージサイズ:76.0×44.0cm
シートサイズ:83.6×51.0cm
限定120部 サインあり
*現代版画センターエディション
26)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Weave (Twilight Weave) A"
1981年
木版
イメージサイズ:59.5×52.7cm
シートサイズ:71.0×60.3cm
サインあり
27)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Weave (Bathers-two-cobalt)"
1982年
木版
イメージサイズ:68.0×49.0cm
シートサイズ:82.0×57.0cm
サインあり
28)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Weave (Bathers-two-cobalt)"
1982年
キャンバスに油彩
91.5×66.0cm
29)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Weave (Bathers-Fall)"
1967年
木版
イメージサイズ:54.0×41.0cm
シートサイズ:60.0×44.0cm
サインあり
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Unknown"
1982
紙に水彩
イメージサイズ : 8.5x6.0cm
シートサイズ : 14.0x8.2cm
サインあり
31)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Byobu (Steps)"
1980年
銅版
イメージサイズ:14.3×9.3cm
シートサイズ:28.4×25.0cm
サインあり
32)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Shrub Oak (Steps B - Black)"
1981年
銅版
イメージサイズ:14.5×11.8cm
シートサイズ:28.3×22.8cm
サインあり
33)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Shrub Oak (Steps B - Green)"
1981年
銅版
イメージサイズ:14.4×12.0cm
シートサイズ:28.3×23.0cm
サインあり
34)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Self Portrait with flower (A)"
1982年
銅版
イメージサイズ:12.6×9.0cm
シートサイズ:28.9×27.8cm
サインあり
35)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Self Portrait (D)"
1982年
銅版
イメージサイズ:7.6×8.0cm
シートサイズ:28.4×28.8cm
サインあり
36)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Self Portrait (E)"
1982年
銅版
イメージサイズ:7.5×8.5cm
シートサイズ:28.7×28.2cm
サインあり
37)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Rose One (B)"
1982年(2001年プリント)
銅板
イメージサイズ:11.7×9.0cm
シートサイズ:32.0×25.6cm
Ed.135(内Ed.1からEd.10が作家による自摺り)
※版画掌誌4号A版・B版挿入作品
38)
内間安瑆 Ansei UCHIMA
"ウエストチェスター (November)"
1982年
銅版
イメージサイズ:7.5×8.5cm
シートサイズ:28.7×28.2cm
サインあり
●内間俊子の作品紹介
内間俊子は旧姓・青原、高知県にルーツを持ち、1918年満州・安東市で生まれました。1928年大連洋画研究所で石膏デッサンと油彩を学び、1937年に大連弥生女学校を、1939年には神戸女学院専門部本科を卒業。帰国後、小磯良平に師事します。1953年瑛九らのデモクラート美術家協会に参加。 この頃、久保貞次郎や瀧口修造を知り、 抽象的な油彩や木版画、リトグラフを制作し、デモクラート美術展に出品します。
1959年夫の内間安瑆と渡米後はニューヨークに永住し、制作を続けます。1966年頃から、古い切手、絵葉書、楽譜、貝殻や鳥の羽などが雑誌の切抜き等でアレンジして封印したボックス型のアッサンブラージュやコラージュの制作に取り組み、全米各地の展覧会や日本での個展での発表を続けました。1982年からは体の自由を失った夫を18年間にわたり献身的に看病します。介護をしながらの限られた時間の中でも制作は続けられました。作品は「夢、希望、思い出」をテーマにしたものが多く、日常の「モノ」たちの組み合わせから内間俊子の人生の記録が表現されています。
2000年 5月9日安王星が79歳の生涯を静かに終えると、その後を追うかの如く、同年12月18日ニューヨークで死去されました。
39)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"橋 (Bridge)"
1965年
木版
イメージサイズ:57.0×42.5cm
シートサイズ:61.0×45.0cm
サインと日付あり
40)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"Signal"
1974年
ボックスアッサンブラージュ
ボックスサイズ:34.0×27.5×5.5cm
サインあり
41)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"Lady photographer"
1977年
ボックスアッサンブラージュ
ボックスサイズ:31.0×41.2×3.5cm
フレームサイズ:42.0×49.0×3.0cm
サインあり
42)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"イタリーよりのパッケージ Package from Italy"
1977年
コラージュ
イメージサイズ: 50.5x35.0cm
シートサイズ: 57.5×42.7cm
サインあり
43)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"From the Provence - Avignon-"
1977年
コラージュ
ボックスサイズ:36.0×28.3×3.5cm
サインあり
44)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"蝶のデュエット (Butterfly Duet)"
1978年
ボックスサイズ:36.0×28.5×3.5cm
サインあり
45)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"A bachelor"
1980年
コラージュ
ボックスサイズ:18.0×13.0×3.5cm
サインあり
46)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"クラシックな夢をうる店 フィラデルフィア The store where classic dreams are sold"
1982年
ボックスアッサンブラージュ
ボックスサイズ:55.5×36.3×6.7cm
サインあり
47)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"Fantasy in 1908"
1985年
コラージュ
イメージサイズ:58.0×38.0cm
シートサイズ:73.0×51.0cm
サインと日付あり
48)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"Edelweiss in the Alps"
1984-86
コラージュ
イメージサイズ: 51.0×28.5cm
フレームサイズ: 36.5x59.0cm
サインあり
49)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"Cotton Jinのころ"
1986年
ボックスアッサンブラージュ
ボックスサイズ:65.5×33.0×11.5cm
サインと日付あり
50)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"Three Gentlemen in Red and Black"
1989年
コラージュ
イメージサイズ:51.0×81.0cm
シートサイズ:56.087.0cm×
51)
内間俊子 Toshiko UCHIMA
"Dancing Angel"
コラージュ
イメージサイズ:65.0×50.4cm
シートサイズ:59.0×70.5cm
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上掲出品リスト(価格入り)をご希望の方は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してメールにてお申し込みください。名無しの方にはお送りできません。

1982年
内間安瑆先生と俊子夫人
●『内間安瑆・内間俊子展』カタログ
2018年
ときの忘れもの 刊行
B5判 24ページ 図版:51点、略歴収録
テキスト:内間安樹(長男、美術専門弁護士/ニューヨーク州)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
編集:尾立麗子
編集協力:桑原規子
翻訳:味岡千晶、他
価格:税込800円 ※送料別途250円(メールにてお申し込みください)


●版画掌誌「ときの忘れもの」第04号もぜひご購読ください。
◆ときの忘れものは「内間安瑆・内間俊子展」を開催します。
会期:2018年7月17日[火]―8月10日[金] ※日・月・祝日休廊
内間安瑆の油彩、版画作品と内間俊子のコラージュ、箱オブジェ作品など合わせて約20点をご覧いただきます。図録も刊行しました(800円、送料250円)。
○水沢勉「版の音律―内間安瑆の世界」(版画掌誌第4号所収)
○永津禎三「内間安瑆の絵画空間」
○内間安瑆インタビュー(1982年7月 NYにて)第1回、第2回、第3回

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

会期:2018年7月17日(火)~8月10日(金)*日・月・祝日休廊
ウチマアンセイ、ウチマトシコと言ってもその名を覚えているのは60代以上の方でしょう。
画商はもちろん、学芸員でもその名を知る人は残念ですが少なくなりました。
1950年代、恩地孝四郎をリーダーとする戦後の創作版画運動に参加した内間安瑆と、瑛九をリーダーとするデモクラート美術家協会に参加した内間俊子(旧姓青原)が1954年に結婚後、ともにアメリカで新しい美術の道を歩むことを決意し、幼い子息(内間安樹さん)を連れてアメリカに渡ったのは今から60年前のことでした。
1982年12月に内間安瑆が病に倒れ、長い闘病生活の末に2000年5月に死去、献身的に支えた俊子夫人もその年の12月に亡くなりました。
あれからもう18年が過ぎました。
このたび、ときの忘れものではニューヨークのご遺族の全面的な協力を得て「内間安瑆・内間俊子展」を開催します。
会場のスペースの関係から展示できるのは20点弱ですが、作品は約50点を準備いたしました。
私たちが内間安瑆の作品を知ったのは1976年春、上野の都美術館で開かれた日本版画協会第44回展に出品された木版画『In Blue(Dai)』でした(その後の経緯は、版画掌誌第4号の編集後記を参照)。
長年の試行錯誤を経て、浮世絵の伝統技法を深化させ「色面織り」と自ら呼んだ独自の技法を確立し、伝統的な手摺りで45度摺を重ねた『森の屏風 Forest Byobu』連作が誕生するちょうどそのときに私たちは出会い、文通を重ねました。メールなんてない時代です。
内間安瑆の木版画に激しい魅力を感じた私たちは版画のエディションをお願いし(1981年)、現代版画センター企画による全国巡回展(1982年)に取り組みました。
1982年夏には現代版画センタ-の機関誌のためにニュ-ヨ-クでインタビ ュ-(その1、その2、その3)に応じてくださったのですが、その僅か数か月後の12月、突然の不幸が夫妻を襲います。内間安瑆が脳卒中で倒れすべてのプロジェクトが中断してしまいました。
その後も幾度か展覧会を開催し、没後の遺作展などを通じその優れた作品群を紹介してまいりました。
2014年には沖縄県立博物館・美術館で待望の大回顧展が開催されました。しかし、沖縄は遠い。何とか東京近辺で内間先生の回顧展が実現できるといいのですが。
内間俊子の作品については、現代版画センター時代に箱のオブジェなどを紹介していましたが、1997年11月に青山のときの忘れもので開催した「久保貞次郎と作家たち-追悼集『久保貞次郎を語る』刊行記念展」で版画作品を展示しました。1954年6月に刊行された『スフィンクス 瀧口修造の詩による版画集』に挿入されていた一点です。
久保貞次郎企画、福島辰夫編集、山城隆一デザインによるこの詩画集にただ一人の女性作家として参加したのが青原俊子、のちの内間俊子です。
早くから前衛画家として活躍し、渡米後の1966年頃から、古い木片や石などを封印したボックス型のアッサンブラージュやコラージュの制作に取り組み、全米各地の展覧会や日本での個展での発表を続けました。
1982年から体の自由を失った夫を18年間にわたり献身的に看病しながら、限られた時間の中でも制作は続けられました。作品は「夢、希望、思い出」をテーマにしたものが多く、日常の「モノ」たちの組み合わせから内間俊子の人生の記録が表現されています。
二人が作家として多くの優れた作品を残したことはこれからもっと評価していかねばなりませんが、忘れてはならないのは多くの日本人アーティストをサポートしたその功績です。
1960年代、日本からアメリカへの渡航、滞在は今から考えられないほど制約の多いものでした。多くの日本人作家が内間夫妻を頼って太平洋を渡って行ったのでした。
●内間安瑆の作品紹介
内間安瑆は1921年アメリカに生まれます。苗字からわかるように父と母は沖縄からの移民です。1940年日本に留学、戦時中は帰米せず、早稲田大学で建築を学びます。油彩の制作をはじめ、後には木版画に転じます。
1950年アンデパンダン展(東京都美術館)に出品。1950年代初めにイサム・ノグチと知り合い、以降親しく交流する。1954年オリバー・スタットラーの取材に通訳として同行し、その著作に協力した。
その折に創作版画の恩地孝四郎にめぐり合い大きな影響を受けます。
1954年デモクラート美術家協会の青原俊子と結婚。1955年東京・養清堂画廊で木版画による初個展を開催。1959年妻の俊子と息子を伴い帰米、ニューヨーク・マンハッタンに永住。版画制作の傍ら、サラ・ローレンス大学で教え、1962と70年にグッゲンハイム・フェローシップ版画部門で受賞。サラ・ローレンス大学名誉教授を務めました。
日米、二つの祖国をもった内間安瑆は浮世絵の伝統技法を深化させ「色面織り」と自ら呼んだ独自の技法を確立し、伝統的な手摺りで45度摺を重ねた『森の屏風 Forest Byobu』連作を生み出します。現代感覚にあふれた瑞々しい木版画はこれからもっともっと評価されるに違いありません。
1)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Hermit"
1957年
木版
イメージサイズ:77.1×41.0cm
フレームサイズ:96.3×58.4cm
サインあり
2)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"An Emotion (或る感情)"
1959年
木版
イメージサイズ:40.8×30.2cm
シートサイズ:42.6×30.9cm
サインあり
3)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Shifting Horizon"
1960年
木版
イメージサイズ:31.7×24.0cm
シートサイズ:53.0×38.0cm
Ed.15
サインあり
4)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Early Summer Rain"
1961年
木版
イメージサイズ:50.5×38.0cm
シートサイズ:61.5×45.5cm
サインあり
5)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Spring Snow"
1962年
木版
イメージサイズ:77.5×33.5cm
フレームサイズ:93.6×49.8cm
サインあり
7)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Reflection in Rain"
1965年
木版
イメージサイズ:46.0×41.0cm
シートサイズ:49.5×44.0cm
サインあり
8)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"City Lights"
1967年
木版
イメージサイズ:54.0×41.0cm
シートサイズ:60.0×44.0cm
サインあり
9)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Pastoral Poem"
1967年
木版
イメージサイズ:39.3×18.1cm
シートサイズ:44.8×30.6cm
サインあり
10)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Short Poem Black and Red"
1967年
木版
イメージサイズ:31.7×24.0cm
シートサイズ:44.6×31.1cm
サインあり
11)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Ruins B"
1967年
木版
イメージサイズ:17.6×55.6cm
シートサイズ:22.6×60.1cm
Ed.30
サインあり
12)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Short Poem"
1967年
木版
イメージサイズ:17.6×55.6cm
シートサイズ:22.8×60.7cm
サインあり
13)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Time, Space-Horizontal B"
1969年
木版
イメージサイズ:35.5×75.8cm
フレームサイズ:55.5×95.5cm
Ed.30
サインあり
14)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"In Space Pink"
1969年
木版
イメージサイズ:76.0×50.5cm
シートサイズ:84.0×57.0cm
サインあり
15)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Space Landscape (C)"
1970~75年
木版
イメージサイズ:76.0×51.5cm
シートサイズ:79.5×58.5cm
サインあり
16)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Two Spheres in Space"
1971~73年
木版
イメージサイズ:76.0×52.0cm
シートサイズ:86.6×59.9cm
Ed.30
サインあり
17)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"I-V Space Tranquility"
1972年
木版
イメージサイズ:70.6×53.1cm
シートサイズ:82.4×61.4cm
サインあり
18)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Space Gesture"
1972~76年
木版
イメージサイズ:73.5×53.0cm
シートサイズ:78.5×58.0cm
Ed.30
サインあり
19)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Aretic Landscape"
1973~76年
多色木版 Color woodcut
イメージサイズ:76.0×53.4cm
シートサイズ:83.7×61.3cm
Ed.30
サインあり
20)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"In Blue"
1973
多色木版 Color woodcut
イメージサイズ:7.8x11.0cm
シートサイズ:20.2×25.3cm
Ed.200
サインあり
21)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"In Blue (Dai)"
1975年
木版
イメージサイズ:47.7×73.6cm
シートサイズ:57.0×78.8cm
Ed.30
サインあり
22)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Window Nuance (Rose)"
1978年
木版
イメージサイズ:30.0×22.0cm
シートサイズ:37.5×28.5cm
サインあり
23)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Forest Byobu with Bouquet"
1979年(2001年プリント)
木版
イメージサイズ:19.7×26.5cm
シートサイズ:24.0×31.4cm
Ed.35(内Ed.1からEd.10が作家による自摺り)
※版画掌誌4号A版挿入作品
24)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Forest Byobu (Autumn)"
1979年
木版
イメージサイズ:45.5×76.0cm
シートサイズ:55.0×88.0cm
サインあり
25)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Forest Byobu (Fragrance)"
1981年
木版(摺り:米田稔)
イメージサイズ:76.0×44.0cm
シートサイズ:83.6×51.0cm
限定120部 サインあり
*現代版画センターエディション
26)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Forest Weave (Twilight Weave) A"
1981年
木版
イメージサイズ:59.5×52.7cm
シートサイズ:71.0×60.3cm
サインあり
27)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Forest Weave (Bathers-two-cobalt)"
1982年
木版
イメージサイズ:68.0×49.0cm
シートサイズ:82.0×57.0cm
サインあり
28)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Forest Weave (Bathers-two-cobalt)"
1982年
キャンバスに油彩
91.5×66.0cm
29)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Forest Weave (Bathers-Fall)"
1967年
木版
イメージサイズ:54.0×41.0cm
シートサイズ:60.0×44.0cm
サインあり
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Unknown"
1982
紙に水彩
イメージサイズ : 8.5x6.0cm
シートサイズ : 14.0x8.2cm
サインあり
31)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Forest Byobu (Steps)"
1980年
銅版
イメージサイズ:14.3×9.3cm
シートサイズ:28.4×25.0cm
サインあり
32)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Shrub Oak (Steps B - Black)"
1981年
銅版
イメージサイズ:14.5×11.8cm
シートサイズ:28.3×22.8cm
サインあり
33)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Shrub Oak (Steps B - Green)"
1981年
銅版
イメージサイズ:14.4×12.0cm
シートサイズ:28.3×23.0cm
サインあり
34)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Self Portrait with flower (A)"
1982年
銅版
イメージサイズ:12.6×9.0cm
シートサイズ:28.9×27.8cm
サインあり
35)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Self Portrait (D)"
1982年
銅版
イメージサイズ:7.6×8.0cm
シートサイズ:28.4×28.8cm
サインあり
36)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Self Portrait (E)"
1982年
銅版
イメージサイズ:7.5×8.5cm
シートサイズ:28.7×28.2cm
サインあり
37)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"Rose One (B)"
1982年(2001年プリント)
銅板
イメージサイズ:11.7×9.0cm
シートサイズ:32.0×25.6cm
Ed.135(内Ed.1からEd.10が作家による自摺り)
※版画掌誌4号A版・B版挿入作品
38)
内間安瑆 Ansei UCHIMA"ウエストチェスター (November)"
1982年
銅版
イメージサイズ:7.5×8.5cm
シートサイズ:28.7×28.2cm
サインあり
●内間俊子の作品紹介
内間俊子は旧姓・青原、高知県にルーツを持ち、1918年満州・安東市で生まれました。1928年大連洋画研究所で石膏デッサンと油彩を学び、1937年に大連弥生女学校を、1939年には神戸女学院専門部本科を卒業。帰国後、小磯良平に師事します。1953年瑛九らのデモクラート美術家協会に参加。 この頃、久保貞次郎や瀧口修造を知り、 抽象的な油彩や木版画、リトグラフを制作し、デモクラート美術展に出品します。
1959年夫の内間安瑆と渡米後はニューヨークに永住し、制作を続けます。1966年頃から、古い切手、絵葉書、楽譜、貝殻や鳥の羽などが雑誌の切抜き等でアレンジして封印したボックス型のアッサンブラージュやコラージュの制作に取り組み、全米各地の展覧会や日本での個展での発表を続けました。1982年からは体の自由を失った夫を18年間にわたり献身的に看病します。介護をしながらの限られた時間の中でも制作は続けられました。作品は「夢、希望、思い出」をテーマにしたものが多く、日常の「モノ」たちの組み合わせから内間俊子の人生の記録が表現されています。
2000年 5月9日安王星が79歳の生涯を静かに終えると、その後を追うかの如く、同年12月18日ニューヨークで死去されました。
39)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"橋 (Bridge)"
1965年
木版
イメージサイズ:57.0×42.5cm
シートサイズ:61.0×45.0cm
サインと日付あり
40)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"Signal"
1974年
ボックスアッサンブラージュ
ボックスサイズ:34.0×27.5×5.5cm
サインあり
41)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"Lady photographer"
1977年
ボックスアッサンブラージュ
ボックスサイズ:31.0×41.2×3.5cm
フレームサイズ:42.0×49.0×3.0cm
サインあり
42)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"イタリーよりのパッケージ Package from Italy"
1977年
コラージュ
イメージサイズ: 50.5x35.0cm
シートサイズ: 57.5×42.7cm
サインあり
43)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"From the Provence - Avignon-"
1977年
コラージュ
ボックスサイズ:36.0×28.3×3.5cm
サインあり
44)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"蝶のデュエット (Butterfly Duet)"
1978年
ボックスサイズ:36.0×28.5×3.5cm
サインあり
45)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"A bachelor"
1980年
コラージュ
ボックスサイズ:18.0×13.0×3.5cm
サインあり
46)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"クラシックな夢をうる店 フィラデルフィア The store where classic dreams are sold"
1982年
ボックスアッサンブラージュ
ボックスサイズ:55.5×36.3×6.7cm
サインあり
47)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"Fantasy in 1908"
1985年
コラージュ
イメージサイズ:58.0×38.0cm
シートサイズ:73.0×51.0cm
サインと日付あり
48)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"Edelweiss in the Alps"
1984-86
コラージュ
イメージサイズ: 51.0×28.5cm
フレームサイズ: 36.5x59.0cm
サインあり
49)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"Cotton Jinのころ"
1986年
ボックスアッサンブラージュ
ボックスサイズ:65.5×33.0×11.5cm
サインと日付あり
50)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"Three Gentlemen in Red and Black"
1989年
コラージュ
イメージサイズ:51.0×81.0cm
シートサイズ:56.087.0cm×
51)
内間俊子 Toshiko UCHIMA"Dancing Angel"
コラージュ
イメージサイズ:65.0×50.4cm
シートサイズ:59.0×70.5cm
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上掲出品リスト(価格入り)をご希望の方は、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してメールにてお申し込みください。名無しの方にはお送りできません。

1982年
内間安瑆先生と俊子夫人
●『内間安瑆・内間俊子展』カタログ
2018年
ときの忘れもの 刊行
B5判 24ページ 図版:51点、略歴収録
テキスト:内間安樹(長男、美術専門弁護士/ニューヨーク州)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
編集:尾立麗子
編集協力:桑原規子
翻訳:味岡千晶、他
価格:税込800円 ※送料別途250円(メールにてお申し込みください)


●版画掌誌「ときの忘れもの」第04号もぜひご購読ください。
◆ときの忘れものは「内間安瑆・内間俊子展」を開催します。
会期:2018年7月17日[火]―8月10日[金] ※日・月・祝日休廊
内間安瑆の油彩、版画作品と内間俊子のコラージュ、箱オブジェ作品など合わせて約20点をご覧いただきます。図録も刊行しました(800円、送料250円)。
○水沢勉「版の音律―内間安瑆の世界」(版画掌誌第4号所収)
○永津禎三「内間安瑆の絵画空間」
○内間安瑆インタビュー(1982年7月 NYにて)第1回、第2回、第3回

●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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