先月末をもって、shumoku galleryのスペースをクローズしました。古い建物をリノベーション工事してからまだ4年足らず。ようやく内部も整いまだまだこれからというところに突然、貸主都合での建て替えを申し渡され、抵抗虚しく撤退を決めました。
思えば当初はただ、当時あまり知られていなかった60年代の戦後美術を紹介するギャラリーを名古屋に、そして当時の建物に飾って文化を伝えようという、徒手空拳なスタートでした。
しかしスペースを持つというのは面白いもので、この場で素晴らしい作家たちと出会い、多くの展覧会を開催することになりました。
美術にかぎらず全ての価値基準は、人の主観によって無限の広がりがあるもので、それにある基準を提示するのがギャラリーと思います。ここで自分が紹介できた美術もほんのちょっとの要素だったと思いますが、ここでは、なるべく広い分野の展示をするよう心がけました。もともと好きな分野を見るだけで終わるのではなく、美術という軸を通して色々な時代や感性のものを見て、好奇心を刺激して、関心をもつことが、大切と思っています。
何人かの方の好奇心を刺激し、扉を開くものであったら、この場を作って良かったと思います。
また、いつかどこかに良いスペースを作れるよう、引き続き努力します。
これまで訪れて頂いた皆様、ありがとうございました。

(居松 篤彦さんのfacebookより 20180902)>

昨年春、同じように突然青山を引き払わざるを得なかった私たちですが、居松さんの無念なお気持ち、身につまされます。
一時は廃業まで考えた私たちですが、おかげさまで駒込に新天地を求めることができました。
居松さんの次なる飛躍と展開を心より期待します。

とろこで駒井哲郎(1920-1976)は亭主が1974年に美術界に入って以来、ずっと追いかけてきた作家ですが、今秋嬉しい展覧会が西と東と二つあります。

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●「山と樹を描く
会場:中野美術館
〒631-0033 奈良市あやめ池南9丁目946-2
電話・FAX:(0742)48-1167
会期:前期・2018年9月7日(金)~10月8日(月・祝)
   後期・2018年10月13日(土)~11月11日(日)
休館日:毎週月曜日  ※月曜祝日は開館し、翌日休館
開館時間 午前10時~午後4時
中野美術館は奈良の大和文華館近くにあり、村上華岳(所蔵点数43点)のコレクションで有名ですが、入江波光、土田麦僊、榊原紫峰など国画創作協会のメンバーはじめ、富岡鉄斎、横山大観、冨田溪仙、小林古径、徳岡神泉など近代日本の巨匠たちの作品を収蔵しています。洋画も須田国太郎を中心に、青木繁、萬鉄五郎、中村彝、岸田劉生、小出楢重、古賀春江、村山槐多、三岸好太郎、熊谷守一、松本竣介などを所蔵、版画では長谷川潔、駒井哲郎、浜口陽三恩地孝四郎、清宮質文など実にオーソドックスなコレクションが光ります。
今回は駒井哲郎の「大きな樹」が展示されるので楽しみです。
「大きな樹」は文字とおり、駒井作品の中でも異例なほど大判作品ですが、なかなか市場には出てきません。そのあたりの事情は「駒井哲郎を追いかけて 第57回」で書きましたのでお読みください。

横浜では久しぶりに駒井哲郎の大規模な展覧会が開催されます。
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「駒井哲郎―煌(きら)めく紙上の宇宙」
会場:横浜美術館
会期:2018年10月13日(土)~12月16日(日)
横浜美術館は長谷川潔のコレクションで有名ですが、今回は福原義春氏コレクション(世田谷美術館蔵)を核とした色鮮やかなカラーモノタイプ(1点摺りの版画)を中心に、駒井の版画作品や詩画集など約210点を展示、レンブラント・ハルメスソーン・ファン・レイン/ジェームス・マクニール・ホイッスラー/ オディロン・ルドン/パウル・クレーマックス・エルンストジョアン・ミロ/ 恩地孝四郎/長谷川潔/岡鹿之助/瀧口修造/安東次男/北代省三/粟津則雄/ 湯浅譲二/谷川俊太郎/大岡信/中林忠良など関連作家の80点を含む華やかな展示になるようです。
期待したいですね。

それにしても一昔前なら駒井=白と黒の造形、と相場は決まっていたのに、福原コレクションの圧倒的な色彩世界(主にモノタイプ作品)が常識を覆し、今では学校の教科書にすらカラー作品が紹介される時代になりました。
色彩を愛しながら、生前は「白と黒の造形」という名声に呪縛され、色彩作品の公開に消極的にならざるをえなかった駒井先生、今回の色彩あふれる展覧会をどう天上からご覧になるでしょうか。
横浜では初の駒井展、幾度か通わなければなりませんね。

上掲の二つの展覧会は、美術館から送っていただいたチラシをコピーして紹介しました。
このブログでは亭主が面白いと思い(独断)、あまり人が入っていなそうな展覧会(偏見)をなるべくご紹介したいと思っています。
ありがたいことに各地の美術館がチラシ(フライヤー)を送ってくださる。それをコピーしてブログに載せているのですが、どうしても東京近辺が多くなってしまいます。なかなか西の美術館からはチラシが届きません。
某月某日、スタッフがとある西の美術館にウエブサイトに掲載されているチラシをスキャンしたいと許可を求めたらしい。そうしたらですね「一応どんな紹介になるのか事前に掲載文を送って欲しい」と言われたとか。
亭主は例によってかっとなり「それって検閲でしょ」とスタッフに八つ当たりしてしまいました。
美術館が公共のサービスとして四方八方に送っている(しかしたまたま私どもの画廊には来ていない)チラシをスキャンして掲載するのに、事前に文章のチェックが必要だなんて。
もちろん上掲の美術館ではありません。
いつから学芸員は検閲官になってしまったのでしょうか。日本の未来は・・・暗いなあ。

●今日のお勧め作品は駒井哲郎です。
駒井哲郎「岩礁」1970駒井哲郎「岩礁にて
1970年 銅版(カラー)
23.0×35.0cm
Ed.500 Signed
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●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
ただし9月20日[木]―9月29日[土]開催の野口琢郎展は特別に会期中無休です
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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