光嶋裕介のエッセイ「幻想都市風景の正体」
06-次元を変える
~微分と身体~
ドローイングを描くことの意味について考えている。
毎晩、毎晩、少しずつ作品を描き進めながら、いつも考えている。
もちろん、問いの設定からして、曖昧すぎる上に
そもそも、正解がないわけだから、
「わからない」から考え続けている、としか今は言えない。

がしかし、
建築家として設計を生業にしている者としては、
日常的に三次元の空間に対して向き合っていることと、
紙に描く二次元のドローイングとの関係性については、
やはり、思うところがある。
それは、想像力を使うことで
思考の「次元を上げたい」と、いうことだ。

つまり、
空間に思考を巡らせるときは、「時間」について考えて、
ドローイングを描いているときは、空間について考えている。
では、
ドローイングを描きながら空間のことを考えているということは、
三次元の空間的思考が「微分」されて二次元のドローイングとして
「何か」が立ち上がっているのだろうか?
これが、まだ明確には、わからない。

微分しているということは、
そこに「微分係数」というものが存在する。
その係数がバシッと数式で表せたら問題解決なわけだが、
それができないのである。
扱っているものの大部分が、非言語の領域であり、
対象が「美」であるからだろう。
しかし、手がかりはきっと、ある。

それが身体と関係している気がしてならない。
なぜなら、私の手が、つまり身体が描いたドローイングは、
鑑賞者の視覚によって感知され、
空間全体の何か「響き」として
皮膚感覚のようなもので感じられるのもまた、人間だからだ。
逆に、空間を知覚し、時間を感じることができるのも
また人間の身体ではないだろうか。
この「描く」という行為を通して、
「次元を変化させる」ということは、
私たちの身体がどのように働くことで可能なのだろうか?
このことを私は、
頭のみならず、手を動かしながらじっくり考え続けたいと思う。
そのヒントは、見る者たちが発見してくれるのかもしれない。
(こうしま ゆうすけ)
■光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA(1979-)
建築家。一級建築士。1979年米国ニュージャージー州生。1987年に日本に帰国。以降、カナダ(トロント)、イギリス(マンチェスター)、東京で育ち、最終的に早稲田大学大学院修士課程建築学を2004年に卒業。同年にザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツ(ベルリン)に就職。2008年にドイツより帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。
神戸大学で客員准教授。早稲田大学などで非常勤講師。内田樹先生の凱風館を設計し、完成と同時に合気道入門(二段)。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアーの舞台デザインを担当。著作に『幻想都市風景』、『みんなの家。』、『建築武者修行』、『これからの建築』など最新刊は『建築という対話』。
今秋11月8日~18日にときの忘れもので新作個展を開催します(会期中無休)。
公式サイト:http://www.ykas.jp/
◆光嶋裕介のエッセイ「幻想都市風景の正体」は毎月13日の更新です。
●今日のお勧め作品は、光嶋裕介です。

光嶋裕介
《幻想都市風景2016-03》
2016年 和紙にインク
45.0×90.0cm サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

06-次元を変える
~微分と身体~
ドローイングを描くことの意味について考えている。
毎晩、毎晩、少しずつ作品を描き進めながら、いつも考えている。
もちろん、問いの設定からして、曖昧すぎる上に
そもそも、正解がないわけだから、
「わからない」から考え続けている、としか今は言えない。

がしかし、
建築家として設計を生業にしている者としては、
日常的に三次元の空間に対して向き合っていることと、
紙に描く二次元のドローイングとの関係性については、
やはり、思うところがある。
それは、想像力を使うことで
思考の「次元を上げたい」と、いうことだ。

つまり、
空間に思考を巡らせるときは、「時間」について考えて、
ドローイングを描いているときは、空間について考えている。
では、
ドローイングを描きながら空間のことを考えているということは、
三次元の空間的思考が「微分」されて二次元のドローイングとして
「何か」が立ち上がっているのだろうか?
これが、まだ明確には、わからない。

微分しているということは、
そこに「微分係数」というものが存在する。
その係数がバシッと数式で表せたら問題解決なわけだが、
それができないのである。
扱っているものの大部分が、非言語の領域であり、
対象が「美」であるからだろう。
しかし、手がかりはきっと、ある。

それが身体と関係している気がしてならない。
なぜなら、私の手が、つまり身体が描いたドローイングは、
鑑賞者の視覚によって感知され、
空間全体の何か「響き」として
皮膚感覚のようなもので感じられるのもまた、人間だからだ。
逆に、空間を知覚し、時間を感じることができるのも
また人間の身体ではないだろうか。
この「描く」という行為を通して、
「次元を変化させる」ということは、
私たちの身体がどのように働くことで可能なのだろうか?
このことを私は、
頭のみならず、手を動かしながらじっくり考え続けたいと思う。
そのヒントは、見る者たちが発見してくれるのかもしれない。
(こうしま ゆうすけ)
■光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA(1979-)
建築家。一級建築士。1979年米国ニュージャージー州生。1987年に日本に帰国。以降、カナダ(トロント)、イギリス(マンチェスター)、東京で育ち、最終的に早稲田大学大学院修士課程建築学を2004年に卒業。同年にザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツ(ベルリン)に就職。2008年にドイツより帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。
神戸大学で客員准教授。早稲田大学などで非常勤講師。内田樹先生の凱風館を設計し、完成と同時に合気道入門(二段)。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアーの舞台デザインを担当。著作に『幻想都市風景』、『みんなの家。』、『建築武者修行』、『これからの建築』など最新刊は『建築という対話』。
今秋11月8日~18日にときの忘れもので新作個展を開催します(会期中無休)。
公式サイト:http://www.ykas.jp/
◆光嶋裕介のエッセイ「幻想都市風景の正体」は毎月13日の更新です。
●今日のお勧め作品は、光嶋裕介です。

光嶋裕介
《幻想都市風景2016-03》
2016年 和紙にインク
45.0×90.0cm サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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