佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第22回
ちかごろ、平日昼間は福島県大玉村の教育委員会で働いている(!)ため、制作はどうしても村の中でやることが多くなってしまっている。場所は歓藍社の拠点のロコハウスの脇の旧納屋。同じく歓藍社で活動している林剛平さんが設えたナラの厚板の作業机でもっぱら木工をしている。

そんな歓藍社のロコハウスでは、とにかくいろいろ家の部分に手を加えたり、何かいろいろと制作を試みたりしているために、端材でもなんでも資材を欲している。そんなこともあり、先日は村内の小椋製材所さんからの厚意で、倉庫整理で溢れ出た大量の木材をいただいた。中には敷居鴨居あたりで使うことを想定していたのだろう寸法の揃ったサクラの長尺材や、数種の堅木もあり、これを丁寧に扱いながら制作をしていったら、果たして何年かかるのだろうという量である。
小椋製材所さんからの大量の木材搬入に続き、今度は二本松に住む絹子さんからの伝手で、二本松市内で解体された民家の家財資材をいただけることになった。その民家はどうやら下駄職人の方が住んでいたようで、それを濃く匂わせる使い込まれたノミ、鉋の道具や用具があった。さらに、同じ二本松のある民家で同じく絹子さんからの紹介で、震災前から蓄えられていた大量の薪材をいただいた。薪の大群の中には、かつては民家の骨格をなしていただろう構造材がぶつ切りにされ一緒くたにされていた。(それは、剛平さんゆうきさんたいがくんひろこさん山岸さんカンノさんらが素早く動いての賜物でもある)

(自作であろう巨大クランプの上部。同一の芯材を使って、挟む手の部分は部材を何回か交換していたのだろうか。)

(中から出てきた仕口を備えた薪。どんな形で組まれていたのかはちょっと想像ができていない)

(下駄屋さんの家にあった脚立の部分。段板をそのまま足に釘打ちつけではなく、ホゾで腕を出してそこに段板を乗せる丁寧さがある)

(同じ脚立の足の部分。つなぎ材がホゾの割楔(わりくさび)で組まれている。組んだ後に打ち込む割楔は、寸法の若干の遊び、あるいは誤差も許容する融通性がある。玄翁の頭にも打ち込まれることがあるが、日々の道具を自分自身で仕立てるような場合には、そんなくらいの納まりが適している)
そんなモノたちに囲まれながら、制作をしているので、やはり自分はそれらの工夫に学ぼうとしている。そして特に、部材の納まりの融通さは、そのもの自体の成り立ち、道具としての立ち振る舞いの表現となり得るのではとも考えている。今作っている、写真機はもちろん道具であり、モノの造形とその使用の振る舞いが交差するところにあるからだ。あまり時間はないが制作を続けたい。

(「囲い込むためのハコ2」の脚部詳細)

(「囲い込むためのハコ2」の腕部分)
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。ときの忘れものでは12月13日(木)~12月22日(土)の会期で佐藤研吾さんの初めての個展を開催します。どうぞご期待ください。
●本日のお勧め作品は佐藤研吾です。
佐藤研吾 Kengo SATO
《ハコに差し込む》
2018年
紙、鉛筆、色鉛筆
32.0×54.5cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊です。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

ちかごろ、平日昼間は福島県大玉村の教育委員会で働いている(!)ため、制作はどうしても村の中でやることが多くなってしまっている。場所は歓藍社の拠点のロコハウスの脇の旧納屋。同じく歓藍社で活動している林剛平さんが設えたナラの厚板の作業机でもっぱら木工をしている。

そんな歓藍社のロコハウスでは、とにかくいろいろ家の部分に手を加えたり、何かいろいろと制作を試みたりしているために、端材でもなんでも資材を欲している。そんなこともあり、先日は村内の小椋製材所さんからの厚意で、倉庫整理で溢れ出た大量の木材をいただいた。中には敷居鴨居あたりで使うことを想定していたのだろう寸法の揃ったサクラの長尺材や、数種の堅木もあり、これを丁寧に扱いながら制作をしていったら、果たして何年かかるのだろうという量である。
小椋製材所さんからの大量の木材搬入に続き、今度は二本松に住む絹子さんからの伝手で、二本松市内で解体された民家の家財資材をいただけることになった。その民家はどうやら下駄職人の方が住んでいたようで、それを濃く匂わせる使い込まれたノミ、鉋の道具や用具があった。さらに、同じ二本松のある民家で同じく絹子さんからの紹介で、震災前から蓄えられていた大量の薪材をいただいた。薪の大群の中には、かつては民家の骨格をなしていただろう構造材がぶつ切りにされ一緒くたにされていた。(それは、剛平さんゆうきさんたいがくんひろこさん山岸さんカンノさんらが素早く動いての賜物でもある)

(自作であろう巨大クランプの上部。同一の芯材を使って、挟む手の部分は部材を何回か交換していたのだろうか。)

(中から出てきた仕口を備えた薪。どんな形で組まれていたのかはちょっと想像ができていない)

(下駄屋さんの家にあった脚立の部分。段板をそのまま足に釘打ちつけではなく、ホゾで腕を出してそこに段板を乗せる丁寧さがある)

(同じ脚立の足の部分。つなぎ材がホゾの割楔(わりくさび)で組まれている。組んだ後に打ち込む割楔は、寸法の若干の遊び、あるいは誤差も許容する融通性がある。玄翁の頭にも打ち込まれることがあるが、日々の道具を自分自身で仕立てるような場合には、そんなくらいの納まりが適している)
そんなモノたちに囲まれながら、制作をしているので、やはり自分はそれらの工夫に学ぼうとしている。そして特に、部材の納まりの融通さは、そのもの自体の成り立ち、道具としての立ち振る舞いの表現となり得るのではとも考えている。今作っている、写真機はもちろん道具であり、モノの造形とその使用の振る舞いが交差するところにあるからだ。あまり時間はないが制作を続けたい。

(「囲い込むためのハコ2」の脚部詳細)

(「囲い込むためのハコ2」の腕部分)
(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。
◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。ときの忘れものでは12月13日(木)~12月22日(土)の会期で佐藤研吾さんの初めての個展を開催します。どうぞご期待ください。
●本日のお勧め作品は佐藤研吾です。
佐藤研吾 Kengo SATO《ハコに差し込む》
2018年
紙、鉛筆、色鉛筆
32.0×54.5cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
●ときの忘れものは昨年〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ12月号18~24頁>に特集されています。
2018年から営業時間を19時まで延長します。
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊です。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

コメント