H氏による作品紹介9

グループ展だってバカにできない ―貸しギャラリーで写真を買う― ~荒井崇、野々下猛、野々下猛、石川圭花、杉山次郎太、岡田敦、岡村彰子、広田敦子、山内豊子、山田素子、鈴木則裕、(五味彬)~

 一昔前なら電話帳、今なら検索ソフトで「ギャラリー」を調べてみると、恐らく一番多いのが「貸しギャラリー」。街の一等地、道路から見えるところにちょっとお洒落に店を構えている。普通の人が「ギャラリー」と聞いて思い浮かべるのは、この種のギャラリーかも知れない。
 けれども、同じギャラリーという名前がついていても、そこで売っているモノは全く違う。商業ギャラリーは作品を売っているが、貸しギャラリーが売っているものは、基本的にはギャラリーという空間そのものだからである。その意味では貸しギャラリーの主人の商売は美術商ではなく不動産業である。作家にお金を払うのではなく逆に作家からお金をもらってその空間を維持しているわけで、基本的にはお金さえ払えば誰でも展示ができる。ちょっと気になって入ってみるとカルチャーセンターの写真教室の発表会でお客さんはみんな生徒さんとその家族と友人だったりして、気まずい思いをしたりする。
 とはいえ、貸しギャラリーでの展示が全部ハズレというわけではない。写真教室にもピンからキリまであるし、グループ展も途方もないグループだったりする。とんでもない宝物が転がっていたりもする。はやり外せないギャラリーである。

5Lot.5 荒井崇
Stumps
2002
ゼラチンシルバープリント
I: 11.9x30.5cm
S: 17.4x35.6cm

 荒井さんはアマチュアながら、その作品が雑誌のグラビアを飾るような実力の持ち主。それもそのはずで、写真家の中島秀雄さんを代表とする「ゾーンシステム研究会」の中核メンバー、数多ある写真愛好家グループと一線を画するのはその志の高さとその実力。
 研究会のHPを覗くと、
 ゾーンシステム研究会は、アメリカの写真家アンセル・アダムスが考案したゾーンシステムを学んだ人達によって1995年に作られました。
 大型カメラによる銀塩モノクローム写真表現の特長は、何と言っても深みのある豊かな階調表現といえます。カメラ、光、露出、フィルム、現像、プリントなど、それぞれの項目に対して撮影者の立場から論じる方法論がこれまではなかったといえます。
 ● 連続する被写体の階調を10のゾーン(0~10)として眺める。
 ● フィルムの実効感度を求める。
 ● 標準現像時間を求める。
 これらは、ゾーンシステムの基本的な学習項目の一部で、技術論ばかりではなく実践の場にも目が向けられています。ゾーンシステムは構想から最終プリントまでの流れを明快にしてくれる銀塩写真の総合的な写真制作論なのです。
 研究会員は各自がテーマを持ち、生活の周辺、人との出会い、旅行、自然風景など二度と出会えない場の光にカメラを向ける努力を通じて、モノクロームの印象深いプリント制作を目指し、年一回の展覧会開催を目標にしています。
 私たちの活動は国内にとどまりません。過去には、ヨセミテ国立公園の撮影、カリフォルニアのカーメルにあるアダムスの暗室見学、現地の写真家たちとの交流などを実行してきました。ファインプリントの盛んなアメリカの写真情報は欠かすことができません。
 現在、写真は高度に電子化しています。その中にあって、写真とは何か、私たちはなぜ写真を撮り、人に見せるのか ・・・  私たちはこれからも写真原理の不思議さと面白みを追及していきたいと思っています。
と、思わず襟を正してしまう。2018年現在、会員数は39名、「本会は、会員のゾーンシステムの深化と、ファインアート・フォトグラフィーのグレードアップをはかる。そして写真を心から愛する人々への普及も目的とする」(会則第4条)とあり、毎年講演と展覧会を開催している。講演者には平木収(評論家)、深川雅文(キュレーター)、細江英公(写真家)、三好耕三(写真家)、築地仁(写真家)、藤村里美(東京都写真美術館 学芸員)といった錚々たる名前が並び、2013年には元「ときの忘れもの」スタッフで現「みうらじろうギャラリー」ギャラリストの三浦次郎さんが「写真を売ること、買うこと」の題で講演をしている。
 当方が伺ったのは、2002年第7回写真展「ファインプリント/光への探求」(Art Planning Room AOYAMA、2002/11/1~10)。そこで荒井さんの作品を購入。綺麗なのに怖い、人類が滅亡した後の地球を写したといっても信じてしまうような不思議な魅力があった。
 送っていただいたプロフィールから抜粋すると
荒井崇
・1995年~2001年 日本写真学園短期講座(佐藤健治教室)にて大判写真を学ぶ
・1996年 ゾーンシステム研究会入会
・2004年2月 アサヒカメラ3月号「橋脚」掲載(巻頭グラビア)
・2004年2~4月 個展「橋脚」開催
(2月:gallerry DAZZLE  3月:GALLERY Private  4月:ギャラリー宙 )
・2006年5~6月 個展「橋脚」開催(アートスペース瑠璃)
・2018年7月 ゾーンシステム研究会「ポートフォリオⅡ写真展」出品(ギャラリー ストークス)
とあり、ご自身のポリシーとして
・技法:ゾーンシステムを駆使したモノクロ銀塩ファインプリント
・作風:ストレート写真でありながらオリジナリティーのある作品を目指す。そしてその
作品は、アート・ドキュメント・工芸品の要素を併せ持つこと。
を挙げておられた。

 きれいに階調のそろったきめ細やかなモノクロのファインプリントは、写真学校からも暗室が消える今の時代にあっては貴重この上なく、赤瀬川原平翁が「自己表現はウルサイ」と写真の力が被写体そのものとその発見の喜びとによって成立していることを喝破されたことを思い出す。
 かの植田正治さんはご自身が、いち「アマチュア写真家」であることを誇りとしておられたし、日本の写真史においてアマチュア写真家たちの果たした役割の大きさは言うまでもないであろう。50年後1000年後に(人類が滅んでいなかったら)必ずその歴史に名が刻まれるであろうファインプリントの歴史の一頁を飾る一枚としてオススメする次第である。

084Lot.84 野々下猛
WIRE. RAIN AND SEPTEMBER
2000
ゼラチンシルバープリント
I: 14.3x20.3cm
S: 21.3x25.3cm

85Lot.85 野々下猛
TWO WORLDS INTRO : NEAR / FAR
ゼラチンシルバープリント
I: 8.3x22.6cm
S:20.2x25.4cm

 ファインプリントと言えば、プロのプリンターの方々のグループ展があって、毎回楽しみにしていた。普段はなかなか見ることのできないそれぞれの作品や、提供された同じネガからそれぞれの解釈で仕上げられたプリント競作も楽しみだった。
 いったい、日本ではプリンターの地位が低すぎると思う。アジェのオリジナルプリントはもちろん貴重だが、アボットプリント、ガスマンプリントはそれぞれ独自の価値を持つものとして高く評価されているし、ベロックはフリードランダーによるプリントがなければ歴史の中に消えていたはずである。
 版画の世界では自刻自刷絶対主義はすでに克服されて、版画家と刷り師とを一体のものとして評価されるに到っていると思うのだが(ご亭主、どうでしょう?)。写真の世界(特に日本)ではまだまだ作家自身によるプリントがどんな時でも最上であるように考えられているように思われる。
 もちろん作者自身によるプリントの価値が否定されるいわれはない。けれども、作者以外のプリントも、それ自身の解釈をもったそれ自身意味のある作品であることがもっと認められてもいいのではないだろうか。写真集団マグナムの結成メンバーの一人であったピエール・ガスマンは、カルティエ=ブレッソンら仲間のプリントワークの余りの下手さにプリントを手伝ったのをきっかけにプリンターに転向。ブレッソンやキャパのプリントはもとより、マグナムの本部がパリにあったこともあって、ブラッサイ、マン・レイといった作家のプリントも手がけるようになり、最終的にはマン・レイの作品はガスマンがプリントをする権利を持つようになった(はずだ)。カルチェ=ブレッソンの全作品のオリジナルネガの管理とプリントを行っていて、コレクターはもとより、世界中の美術館からの依頼に応えて、コレクション用や展覧会用のプリントを制作していた。パリで最も大きなフィルムの現像とプリントの会社「ピクト」を経営することになるが、80歳を超えてもなお暗室に入り、写真家からの直接の依頼や重要なプリントは全て自分で行っていたという。
 アジェについても、8000枚と言われる乾板から130枚ほどを選び出してプリントし、ガスマンに言わせれば「現像過多、現像不足、指紋や引っ掻き跡などが多く、現像の腕はいまひとつであった」(『アッジェのパリ』朝日新聞社, 1979)アジェ自身のプリントでは表現しきれなかった「パリの細部」を鮮やかによみがえらせることを通して、アジェを「現代写真の祖」としてよみがえらせることに貢献した。
 じっさい、2007年に東京国立近代美術館(竹橋)で開かれた「アンリ・カルティエ=ブレッソン 知られざる全貌」展(2007/6/19~8/12)に、めずらしくブレッソンのオリジナルプリントが展示されたが、「やっぱり上手くなかった。価値があるのだろうけれども、展示されているものとは雲泥の差だった。展示されているモノクロプリントは、現代の風景を撮っているのかと見間違うほどきれいなプリントだった」との声があがっていた。
 ガスマンほど有名ではないかも知れないけれど、ロベール・ドアノーには専属のプリンターとしてフィリップ・サルーンがいるし、欧米では写真家は信頼できるプリンターと組んで作家活動を行うのがむしろ一般的であったりする。そのことを隠さないし、プリンターも敬意を持って遇されている。日本でももっとプリンターの地位が向上しておかしくないし。その仕事は高く評価されてしかるべきかと思う。
 このプリンターズ展も、まずはプリンター相互の切磋琢磨と技術向上を目指してのことだと思うが、一方ではプリンターの知名度と地位の向上をも願って行われていると思われる。こちらが伺ったのは渋谷のレンタルギャラリー「ルデコ」での第3回プリンターズ展(2002/08/27~09/07)であったが、そこで野々下猛さんの作品に惹かれて購入。さらに別な機会にもう一枚加えて、密かに当方が自慢する一枚(二枚)となった。誰に見せても(皆ファインプリント好きなので)「おおっ」と言われて鼻高々なのだが、作者の名前を伝えるとみな「誰?」という顔になるのが悔しい。日本におけるプリンターの地位向上のために高額の入札を切にお願いする次第である。
 野々下さんは1962年千葉県生まれ。1987年日本大学芸術学部写真学科卒業後、写真家の伊島薫さんの暗室アシスタントを経て、フリーランスのプリンター、フォトグラファーとして活動。1995年より森村泰昌氏のプリントに携わる。主な出版物に「IMPRESSIONS/KURT MARKUS」等多数。とあるが、本来はもっとこちらが驚くような作品や出版物、展覧会等に関わっておられるに違いない。それがきちんと略歴に記されるようになることを願うことしきりである。

 この、ビル一つが丸ごと貸しギャラリーという「ルデコ」で、しばしばグループ展を行っておられたのが渡部さとるさんが主宰する写真ワークショップ「2B」(現在は事務所移転に伴い場所を杉並区阿佐谷に移して「H」(エイチ)と名前を変えて活動中)。ワークショップの修了展でその名前を知って、修了生有志によるモンゴル撮影行の後に開かれたグループ展で入手したのが石川圭花さんの作品である。

011Lot.11 石川圭花
グループ展「Off Road Journey~旅するモンゴル」より
2005
ゼラチンシルバープリント
I: 24.7x34.4cm
S: 29.5x40.3cm

 ご自身のHPには次のようにある。
石川 圭花 いしかわけいか
 私の写真は、日常の中で見つけた風景を撮ったものです。しかし、私の暮らしや人間関係を説明したり、出来事を記録した写真ではありません。大抵匿名性のある被写体を選びます。落ちている光や、溜った時間の存在を感じる風景です。
[Education]  
 2003年:渡部さとる氏主宰のワークショップ2B受講。写真の基礎を学ぶ。
 2004年~05年:デイズフォトギャラリー+ルーニィ主催・アサヒカメラ共催「メイキングモノクロームワークショップ」受講。
 2008年~:白岡順氏主宰カロタイプワークショップ講評講座受講中。
[Exhibitions]  
 2004年:2Bワークショップ写真展Vol.1「f16/感度」に参加。
 2005年5月:メイキングモノクロームワークショップ修了展に参加。
 2005年8月:「Off Road Journey~旅するモンゴル」写真展に参加。
 2007年2月:「Mongol Rocks!」写真展に参加。
 2007年9月:「Vivitar展」に参加。
 2010年3月:「御苗場」に参加
 2010年6月:「乾いた魚」銀座ニコンサロン
 2011年1月:Bloom Gallery group photo exhibition 「8∞10」
 2011年12月:Bloom Gallery group photo exhibition 「BAITEN」
 2012年9月:「void」Bloom Gallery(大阪)
 2013年12月:「void」Gallery+PLUS(東京)
 2016年12月:「bodyscape」CALOTYPE(東京)
[Collection]  
 フランス国立図書館

 当方が伺ったのは、2004年の2Bワークショップ写真展Vol.1「f16/感度」と2005年5月のメイキングモノクロームワークショップ修了展、そして2005年8月の「Off Road Journey~旅するモンゴル」写真展で、この「旅するモンゴル」展でプリントを購入させていただいたのだが、2010年のニコンサロンの個展ではすでに手が出ない価格になっていた。若い作家さんの成長のスピードとプリント価格の上昇のスピードに驚くばかりである。というわけで、まだ上昇に到る前の価格での提供になるこの一点に入札をぜひ。

71Lot.71 杉山次郎太
M2.5 f11. llsee straight
2006
ゼラチンシルバープリント
I: 34.5x34.9cm
S: 42.3x40.4cm

 杉山さんも渡部さとるさんのワークショップ受講者のお一人、終了後も引き続き活動を継続されている。少し前にもネットでこのような案内を拝見した。相変わらず頑張っておられることが分かって嬉しかった。

 杉山次郎太 写真展 Czesc Polska !! 『ポーランドは滅びず(2010/06/17~、新宿フォトギャラリー『シリウス』)
 国土の殆ど平坦地であるポーランドは、ドイツとロシアに挟まれ、攻められ易く守り難い地勢だった。それを象徴してか、ポーランドの領土は建国以来大きく膨らんだり縮んだり、100年もの間世界地図から消滅したかと思うとまた復活している。 第二次世界大戦終盤、ワルシャワの街はドイツ軍に占領された。ドイツ軍を追撃中のソ連軍は、ワルシャワ市中心を流れるヴィスワ川対岸まで進攻し、ワルシャワ市民に対してドイツ占領軍への武装蜂起を促した。市民は一斉蜂起したが、ソ連軍は市民を助けようとせず、対岸から傍観し二十万人のワルシャワ市民を見殺しにした。
 ポーランド国歌に次の一節がある。「ポーランドは滅びず 我等が生きる限り 外敵の包囲 サーベルにて打ち破らん」ポーランドの人々は、東西冷戦が終るつい最近まで侵略の苦悩を引き摺って来たのだ。
 数年前、ワルシャワを何度か訪れる機会に恵まれた。眩しい夏、黄金の秋、そして長く厳しい冬… 季節の移ろいの中、ポーランドの人々の営みをモノクロフィルムに焼き付けていった。私の出会ったポーランドの人々は、心優しくとても穏やかで、ウェットな感覚はむしろ日本人的で共感するものがあったが、心の奥に秘めている芯の強さは相当なものだ。自らを犠牲にしてでも他人に尽くすことを厭わない、その姿は昔も今も何ら変わらない。『ポーランドは滅びず…』
 そんな美しく逞しい素敵な人々と向き合えたのは、私にとってとても幸せなことであった。不屈のポーランド魂の輝きに畏敬の念をこめて、彼らの生きざまをフィルムに写し留めたい一心でシャッターを切った。
(モノクロ約57点)
Photographer Profile 杉山 次郎太(すぎやま じろうた)
1963年 東京都生まれ
1989年 早稲田大学大学院理工学研究科(修士)修了 商社に勤務
2002年 上海赴任を機に撮影家集団「海鴎同志」に参加
2004年 上海から帰任
2005年 渡部さとるワークショップに参加
2005年 再春館ギャラリーにて写真展 『上海弄堂的記憶』 開催
2006年 ICHYSギャラリーにてグループ展 『渡部さとる[+9] Photographers』 に参加
2007年 「シリウス」にてグループ展 『雨奇晴好』 に参加
2008年 コニカミノルタプラザにて写真展 『王のいた村』 開催
ギャラリーDAZZLEにてグループ展 『Lab TAKE Project モノクロプリントワークショップ写真展』 に参加

021Lot.21 岡田 敦
写真集『Cord』より~華~
2004
ゼラチンシルバープリント
I: 24.0x24.0cm
S: 30.5x25.3cm

 この岡田さんの作品もとんでもなく安く手に入れた一枚。岡田さんと言えば、ウィキペディアに
 岡田 敦(おかだ あつし、男性、1979年7月24日 - )は、日本の写真家、芸術学博士。北海道稚内市生まれ、札幌市出身、東京在住。第4回富士フォトサロン新人賞、第33回木村伊兵衛写真賞、第66回北海道文化奨励賞、第33回写真の町東川賞特別作家賞などを受賞。海外からの注目も高い、新進気鋭の写真家である。(公式サイトhttp://okadaatsushi.com/
 と記されるような今や日本を代表する写真家のお一人。当然そのプリントはそれに応じた価格で取引されているのだが、この一枚は岡田さんの師匠筋に当たる我らが細江英公先生がオリジナルプリントの普及のため、チャリティーとして行っておられる「細江英公と仲間たち」展で、どの作品も一枚5000円というとんでもない企画の際に手に入れたもの。   
 その際には細江先生の最新作も一枚5000円で提供され、あまりの人気にくじ引きになったという伝説の展示である。というわけで現在の流通価格からは考えられない最低入札価格の設定となっている(はずである)。このチャンスにぜひ。

 貸しギャラリーといっても、だれでもご自由にといったものから、事前審査と丁寧な打ち合わせで一定水準のモノを、というところまで幅広い。コマーシャルギャラリーが新人発掘の一環として経営している場合も少なくない。横浜にある「ライトワークス」もそうしたギャラリーの一つで母体はパストレイズ。ここで購入させていただいたのが岡村彰子さんの作品である。

022Lot.22 岡村彰子
「自性の月」より
2004
Type C プリント
I: 34.0x25.7cm
S: 43.1x35.7cm

023Lot.23 岡村彰子
「自性の月」より
Type C プリント
I: 19.6x28.1cm
S: 35.6x29.6cm

024Lot.24 岡村彰子
「自性の月」より
Type C プリント
I: 19.6x29.6cm
S: 28.0x35.6cm

025Lot.25 岡村彰子
「自性の月」より
Type C プリント
I: 19.6x29.6cm
S: 28.1x35.6cm

26Lot.26 岡村彰子
「自性の月」より
Type C プリント
I: 19.6x29.6cm
S: 28.1x35.6cm


103Lot.103 広田敦子
「ねこぐらし」より
ゼラチンシルバープリント
I: 16.5x10.8cm

 2004年6月、ギャラリー「HORI」のグループ展にて購入、額付きである。その時には存じなかったのだが、猫写真家として有名で、ネット上には「1974年福岡県出身。九州大学建築学科卒」とのプロフィールと共に、『ねこぐらし』、『Cats in Negative』、『ねこから、あなたへ』、『猫のこころ、子知らず』といったタイトルが並んでいる。当方としては、猫の視線で撮られた街写真として受けて止めている。「猫写真家」という枠で囲ってはもったいない作家さんだと思う。

133Lot.133 山内豊子
作品
2005
Type C プリント
I: 15.4x23.1cm
S:20.2x25.1cm

 おそらく美学校の西村陽一郎さんの写真工房のグループ展で購入。このグループ展は四谷近辺でギャラリーも固定ではなく定期的に行われていた。ひょっとするとLot. 65の小山瑠津さんの作品と一緒に購入したような気もするが確かではない。老人力恐るべしである。

135Lot.135 山田素子
北海道 江部乙「羊毛の流れる河のように」
2004
ゼラチンシルバープリント
I: 24.9x31.0cm
S:27.7x35.5cm

 これも手元に確かな記録はなく、ネットで検索したところ、2005年に千駄木のギャラリー・イマーゴで展示された山田素子写真展「In the sheep」(2005/6/20~29)に際して購入したらしい(というかその可能性が高い)。
 その際の山田さんのメッセージは下記の通り。
 羊を題材にした作品発表は、これで2回目になります。日本の羊の世界に魅せられて、国内の様々な羊に出会い、撮影してきました。その中で出会った、羊を飼っている人々は少し不思議な雰囲気の人が多いと感じます。酪農としては、全然お金にならない日本の羊産業。それでも、羊に愛情を注ぎ、マイペースに羊と共に生きている人々には教えられるところが多いのです。今回の写真展では、珍しい羊のセリ会場の様子や、羊に関わって生きている人々。また国内の羊の歴史なども紹介します。羊の島とも言われている北海道の焼尻島や、諏訪で出会ったちょっと変わった「羊おじさん」の写真を見てもらうと、ひと味違った日本を再発見できるかもしれません。

73Lot.73 鈴木則裕
作品
ゼラチンシルバープリント 
I: 21.3x32.3cm
S: 27.4x35.5cm

 写真展がいわゆる「ギャラリー」で行われるとは限らない。新宿ゴールデン街の「こどじ」が有名だが、他にも作品を展示しているカフェや喫茶店、飲み屋さんとかBARは少なくない。歴史的に有名な展示がそうしたお店でされていたこともある(初期の荒木経惟さんとか)。この一枚もそんなお店の一つ、高田馬場の「gallery Bar 26日の月」(2014年8月2日で惜しまれつつ閉店)でのグループ(常連)展示もしくはストックフォトから購入したのだと思う。「思う」というのはbarなので気持ちよくジントニックとかギムレットとかカッコつけてマティーニとかギブソンとかピンクジンとか飲んでいるので、気がついたら記憶にない紙袋にこれもまた覚えのないプリントが入っていたりするからである。しかし今は断言できる。「あの日の私に感謝」。

039Lot.39 Kataoka Y.
(4点セット)
2005
Type C プリント
各 I: 10.5x14.8cm
S: 14.0x18.4cm


 さあ最後の一枚である。ご推察の通り、現品意外にはまったく資料のない4点セットである。Kataoka Yさんが誰で、どこで誰から手に入れたか、もはやまったく記憶に残っていない。DMさえ無いということは個展ではなくグループ展であることが推察されるが確かではない。15年前の自分を怒鳴ってやりたい思いしきりであるが、この4点を購入してくれたことについては感謝しかない。
 誰のどんな写真でれあれ、それに(自分としては)相当な金銭を対価として手に入れたということは、そこに何か感じるものがあり、その後の人生を共にしたいという決意があったに違いないからである。たとえそれが作品の購入というめくるめく一瞬によって充足されてしまい、あとはしまい込まれたままということが仮にあったとしても、あの瞬間は確かに輝いていたし心は満たされていた。
 仕事がうまくいかなかったり家庭がうまくいかなかったり人生がうまくいかなかったり(うまくいなかないことばかりであるのが悲しい)して心が沈むとき、そしてあたりまえのことがあたりまえにどこまでも続いていくように思えてこころが萎えるとき、一枚の写真はこの世を超えた永遠からの光として、目に見える世界に穿たれた目に見えない世界への窓として、時には扉として、道として、自分を慰めてくれたし、支えてくれたし、そういって良ければ導いてくれた。
 たとえ肉の目に見える世界がどのようであろうと、そしてこの人生に何が起ころうと、やはりなお世界は美しく、人生はなお生きるに値するものであることを、その目に見えるしるしを、この147点の写真は与えてくれた。
 そのことを満腔の感謝をもって覚えつつ、この147点を世に向かって放とうと思う。そこにはきっと私よりももっとこの写真を気に入り、もっと深く愛し、手にとって愛で、壁に飾って慈しんで下さる方がいるに違いないし、前の持ち主には見えなかったものを見、気がつかなかった新しい美しさと意味に気づいて、一枚一枚の価値をさらに増し加えて、さらに次の持ち主へ手渡してくれるに違いない。
 そのような先人たちがいたからこそ、これらの作品はいまここに存在している。そしてそのようにしてすべての人類の遺産は伝えられてきたはずである。小なりとはいえ、僅かとはいえ、この「世界遺産」を保持し伝えるという大いなるボランティアに手を挙げて下さる方を広く広く募る次第である。入札よろしくお願いいたします。(H)

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064Lot.64 五味彬
『ときの忘れものアーカイブスVol.1 五味彬 Yellows』より
1993(Printed in 2007)
プラチナプリント
Ed.1
I:22.5x17.2cm
S: 28.5x17.6cm

 この一点を忘れていた。「ときの忘れもの」のエディションなので何も言うことはない。そう言えるということが、すぐれた企画ギャラリーが存在してくれていることの意味である。感謝。(H)
 


●展示風景
01左)Lot.4 アキ・ルミ
右)Lot.5 荒井崇

02左)Lot.3 赤瀬川原平
右)Lot.134 山田陽

03Lot.10 石内都

04左から
Lot.12 植田正治
Lot.77 高梨豊
Lot.9 荒木経惟

05

06上段の壁掛け作品 左から
Lot.30 風間健介
Lot.110 ホンマタカシ
Lot.2 赤瀬川原平
Lot.86 ハービー・山口
Lot.131 村上将城

07

08

09Lot.101 日高千賀子

10Lot.140 山中賀與子

11

12中央の壁掛けの作品  Lot.51 北井一夫

13
左)Lot.53 北井一夫
右)Lot.90 箸尾健一

14Lot.99 原田正路

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17


*画廊亭主敬白
H氏から147点の放流作品をお預かりしてから、実はずいぶんと時間が経ってしまいました。
H氏のお人柄とコレクター魂を知る亭主及びスタッフ一同は単なるコレクション展ですむはずがないと予感し、怖れました。
通常は企画と企画の間は短くて一週間、長くても二週間ですが、そんな短期間にこれだけの大コレクションを展示し、皆さんに入札していただく準備は不可能だろうと思い、長期の空白を確保できるチャンスを模索していました。前回の「葉栗剛展」終了からまるまる一ヶ月を今回の「H氏写真コレクション展」の準備にあてたのですが、結果は時間切れでした(涙)。まさかH氏の老人力がこれほどのものとは。不覚でした!
「H氏による作品紹介」一回分の原稿が長い長い、通常なら数回分の超長文が前日のぎりぎりに送られてくる。ブログ担当者、連日の残業でありました。
当初は4~5回でと思ったのが当方の見積もり不足。回を重ねるにつれH氏の熱量は倍増に倍増を重ね、「もうだめです、すいません」とお詫びメールが届きホッとするまもなく、「何とか間に合うでしょうか」と超長文が届く。灼熱の一週間でありました。
それにしてもH氏の記憶力、表現力には舌をまきました。
これだけの分量をネットで読ませる力はただものではありません。あらためてH氏に感謝する次第です。

H氏写真コレクション展は本日最終日です。
会期:2019年7月9日(火)~7月13日(土)
H氏写真コレクションDM

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。