30年ぶりの快挙!
などと書くと何事かと思われるでしょうが、亭主が瑛九とともに敬愛してやまないオノサト・トシノブの油彩、水彩が32点も東京都現代美術館で展示されています。
それがなぜ快挙なのか、は後ほどご説明しましょう。
東京都現代美術館リニューアル・オープン記念展 コレクション展
MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ
会期:2019年11月16日(土)~2020年02月16日(日)
東京都現代美術館に福原義春氏が寄贈したオノサト・トシノブ の油彩、水彩約120点の中から、初期具象~べた丸時代の油彩・水彩が31点展示されています(出品リストはコチラ)。

上掲は会場で無料配布されていたパンフレットをスキャンしたものですが(画面をクリックすると拡大します)、120点(おそらくオノサトコレクションとしては国内最大規模)もの寄贈を受けたにもかかわらず、同館のホームページにはただの一点も画像は掲載されていません。オノサト・ファンとしては涙が出てきますが、致し方ない事情もあります。
それはともかく、ただ一点、パンフに掲載された上掲の初期作品「一つの朱の丸」については以前詳しくご紹介したのでお読みください。
1978年3月15日桐生のアトリエにて
オノサト・トシノブ先生
かつて亭主は「不運なオノサト、強運の瑛九」と書いて、オノサト先生の不運というか悲しむべき現状を嘆いたことがあります。
いくらいい作家・作品でも人々の目に触れなければ「なかった」と同じです。
一つ違いの瑛九(1911年生まれ、1960年没、享年48)とオノサト(1912年生まれ、1986年没、享年74)、二人は戦前から前衛の道を歩んだ盟友でした。
瑛九の最後の個展(1960年2月 銀座兜屋画廊)の折には病床の瑛九に代わって桐生から毎日銀座に通い画廊の店番をしたのはオノサト先生でした。その直後に亡くなった瑛九の葬儀では久保貞次郎先生が葬儀委員長、オノサト先生が副委員長をつとめます。
48歳の若さで逝った瑛九は夢だった海外での個展もかなわず、美術展の賞など無縁で経済的には決して恵まれた生涯ではありませんでした。
対してオノサト先生は1961年49歳のときにアメリカ・ワシントンのグレス画廊で個展を開催、翌1962年からは志水楠男氏の南画廊で個展を開催、1963年第7回日本国際美術展で最優秀賞受賞、1964年と1966年には二回続けてヴェネチア・ビエンナーレに日本代表として選ばれるなど内外で華々しい活躍を示します。南画廊を通じて海外のコレクターにも作品がコレクションされ、まさに日本の現代美術を代表する作家としての評価が確立するかに思われました。
1969年6月南画廊での三度目の個展(小品展を入れると4度目)を開いたのですが、これを最後に南画廊と縁が切れます。1970年代、オノサト先生は南画廊という最良の発表の場を失います。
その影響は大きく、没後の評価は圧倒的に瑛九です。晩年のオノサト先生は描けども発表の場はなく、有能な画商(もちろん亭主も含め)にも恵まれず不遇でした。没後30数年を経て、いまだに市場での評価は不安定で、日本中の学芸員が愛する(笑)瑛九とは異なり「不運のオノサト」状態がずっと続いています。
オノサト先生の美術館での個展は生前と没後あわせて僅かに9回です。
1971年山形県酒田の本間美術館「オノサト・トシノブ展」
1989年練馬区立美術館「オノサト・トシノブ展」
1992年長野県信濃美術館「オノサト・トシノブー円を描いた画家」展
1993年桐生・大川美術館「円の生命力―オノサト・トシノブ展」
2000年群馬県立近代美術館「抽象のパイオニア オノサト・トシノブ展」
2005年桐生・大川美術館「織都・桐生に生きた抽象画家 オノサト・トシノブ展」
2012年山梨県・須玉美術館「特別展 オノサト・トシノブ生誕100年」
2012年桐生・大川美術館「生誕100年 オノサト・トシノブ」
2014年山梨県・須玉美術館「コレクション展~オノサト・トシノブ50年の軌跡~」
以上6館で開催された9回の展覧会がすべてです。
それに比べて瑛九たるやここに書き写すのが億劫になるぐらい、数多い。そのあたりのことは昔、亭主が雑誌に書いた 『瑛九作品集』編集を終えて をお読みください。その差たるや歴然としています。
都内の美術館でオノサト作品がまとめて30点以上展示されるのは、1989年の練馬区立美術館「オノサト・トシノブ展」以来、実に30年ぶりです。
にもかかわらず、まったく注目されていません(涙滂沱)。twitterで検索しても都現美のオノサト展示はほとんど出てこない。
瑛九とオノサト、この二人の故郷の美術館の扱いも実に対照的です(オノサトは生まれは長野県ですが、子供のころ群馬県桐生に移住し、亡くなるまで桐生に在住)。
オノサトのコレクションもそれなりにある群馬県立近代美術館のホームページを見てください。
平成14年度から現在までの18年間の「過去の企画展・特別展示」の一覧を見てもオノサトの名を冠した展覧会はただの一度も開催されていません。
かたや瑛九の故郷、宮崎県立美術館のホームページは、もう瑛九だらけですね(笑)。なにしろ常設コーナーがあるくらいです。
「過去の特別展」には、二つの大回顧展。
平成8年「宮崎県立美術館開館記念展 魂の叙情詩 瑛九展」
平成23年「生誕100年記念 瑛九展」
「過去のコレクション展」を見れば、瑛九の名がみえない年のほうが珍しい、しょっちゅう瑛九の展示をしています。
故郷(の美術館)に愛される瑛九、冷たくされるオノサト・・・・(トホホ)
亭主の故郷でもある群馬の名誉のためにも付言しますが、県立美術館が冷淡な分、桐生の大川美術館は三回もオノサト展を開き、気をはいています。
<1月18日より、企画展「#桐生のアーティスト2020」を開催いたします。#企画展 に合わせ、#常設展 では #大川美術館 #コレクション による #桐生 ゆかりの #アーティスト の作品を展示しております。画像は、桐生の地にて創作をおこない、#抽象絵画 で国際的な評価を集めた #画家 #オノサトトシノブ(1912ー1986)の作品です。今年度新規寄託作品も含まれております。ぜひご覧ください。(20200107/大川美術館のfacebookより)>
2012年に大川美術館で開催された「生誕100年 オノサト・トシノブ」展については二回にわけてレポートしました(第一回、第二回)のでお読みください。
オノサト・ファンの皆さん、東京都現代美術館のオノサト展示(福原コレクション)は必見です。どうぞお出かけください。
●東京都現代美術館リニューアル・オープン記念展 コレクション展
MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ
会期:2019年11月16日(土)~2020年02月16日(日)

今回の第3期は、約3年間の改修休館の間に収蔵された作品およそ400点のなかから寄贈作品を中心に、1930年代から近年の作品まで約160点をご紹介します。過去と現在、美術館とコレクターといった複数の視点の交差をとおして、コレクションの意味を考えます。
出品作家:荒木高子、池田満寿夫、石井茂雄、岡本信治郎、オノ・ヨーコ、オノサト・トシノブ、草間彌生、新海覚雄、末松正樹、豊嶋康子、中村宏、秀島由己男、藤田嗣治、ホンマタカシ、mamoru、宮島達男、向井潤吉、保田春彦、ブレンダ・ファハルド、アルナルド・ポモドーロ ほか(同館HPより)
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◎昨日読まれたブログ(archive)/2010年09月12日|奈良美智の初期作品
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◆ときの忘れものは『オノサト・トシノブ展』を開催し、初期作品を中心に油彩、水彩、版画を17点展示しています。
会期:2020年1月10日[金]―2月1日[土] *日・月・祝日休廊

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
などと書くと何事かと思われるでしょうが、亭主が瑛九とともに敬愛してやまないオノサト・トシノブの油彩、水彩が32点も東京都現代美術館で展示されています。
それがなぜ快挙なのか、は後ほどご説明しましょう。
東京都現代美術館リニューアル・オープン記念展 コレクション展
MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ
会期:2019年11月16日(土)~2020年02月16日(日)
東京都現代美術館に福原義春氏が寄贈したオノサト・トシノブ の油彩、水彩約120点の中から、初期具象~べた丸時代の油彩・水彩が31点展示されています(出品リストはコチラ)。

上掲は会場で無料配布されていたパンフレットをスキャンしたものですが(画面をクリックすると拡大します)、120点(おそらくオノサトコレクションとしては国内最大規模)もの寄贈を受けたにもかかわらず、同館のホームページにはただの一点も画像は掲載されていません。オノサト・ファンとしては涙が出てきますが、致し方ない事情もあります。
それはともかく、ただ一点、パンフに掲載された上掲の初期作品「一つの朱の丸」については以前詳しくご紹介したのでお読みください。
1978年3月15日桐生のアトリエにてオノサト・トシノブ先生
かつて亭主は「不運なオノサト、強運の瑛九」と書いて、オノサト先生の不運というか悲しむべき現状を嘆いたことがあります。
いくらいい作家・作品でも人々の目に触れなければ「なかった」と同じです。
一つ違いの瑛九(1911年生まれ、1960年没、享年48)とオノサト(1912年生まれ、1986年没、享年74)、二人は戦前から前衛の道を歩んだ盟友でした。
瑛九の最後の個展(1960年2月 銀座兜屋画廊)の折には病床の瑛九に代わって桐生から毎日銀座に通い画廊の店番をしたのはオノサト先生でした。その直後に亡くなった瑛九の葬儀では久保貞次郎先生が葬儀委員長、オノサト先生が副委員長をつとめます。
48歳の若さで逝った瑛九は夢だった海外での個展もかなわず、美術展の賞など無縁で経済的には決して恵まれた生涯ではありませんでした。
対してオノサト先生は1961年49歳のときにアメリカ・ワシントンのグレス画廊で個展を開催、翌1962年からは志水楠男氏の南画廊で個展を開催、1963年第7回日本国際美術展で最優秀賞受賞、1964年と1966年には二回続けてヴェネチア・ビエンナーレに日本代表として選ばれるなど内外で華々しい活躍を示します。南画廊を通じて海外のコレクターにも作品がコレクションされ、まさに日本の現代美術を代表する作家としての評価が確立するかに思われました。
1969年6月南画廊での三度目の個展(小品展を入れると4度目)を開いたのですが、これを最後に南画廊と縁が切れます。1970年代、オノサト先生は南画廊という最良の発表の場を失います。
その影響は大きく、没後の評価は圧倒的に瑛九です。晩年のオノサト先生は描けども発表の場はなく、有能な画商(もちろん亭主も含め)にも恵まれず不遇でした。没後30数年を経て、いまだに市場での評価は不安定で、日本中の学芸員が愛する(笑)瑛九とは異なり「不運のオノサト」状態がずっと続いています。
オノサト先生の美術館での個展は生前と没後あわせて僅かに9回です。
1971年山形県酒田の本間美術館「オノサト・トシノブ展」
1989年練馬区立美術館「オノサト・トシノブ展」
1992年長野県信濃美術館「オノサト・トシノブー円を描いた画家」展
1993年桐生・大川美術館「円の生命力―オノサト・トシノブ展」
2000年群馬県立近代美術館「抽象のパイオニア オノサト・トシノブ展」
2005年桐生・大川美術館「織都・桐生に生きた抽象画家 オノサト・トシノブ展」
2012年山梨県・須玉美術館「特別展 オノサト・トシノブ生誕100年」
2012年桐生・大川美術館「生誕100年 オノサト・トシノブ」
2014年山梨県・須玉美術館「コレクション展~オノサト・トシノブ50年の軌跡~」
以上6館で開催された9回の展覧会がすべてです。
それに比べて瑛九たるやここに書き写すのが億劫になるぐらい、数多い。そのあたりのことは昔、亭主が雑誌に書いた 『瑛九作品集』編集を終えて をお読みください。その差たるや歴然としています。
都内の美術館でオノサト作品がまとめて30点以上展示されるのは、1989年の練馬区立美術館「オノサト・トシノブ展」以来、実に30年ぶりです。
にもかかわらず、まったく注目されていません(涙滂沱)。twitterで検索しても都現美のオノサト展示はほとんど出てこない。
瑛九とオノサト、この二人の故郷の美術館の扱いも実に対照的です(オノサトは生まれは長野県ですが、子供のころ群馬県桐生に移住し、亡くなるまで桐生に在住)。
オノサトのコレクションもそれなりにある群馬県立近代美術館のホームページを見てください。
平成14年度から現在までの18年間の「過去の企画展・特別展示」の一覧を見てもオノサトの名を冠した展覧会はただの一度も開催されていません。
かたや瑛九の故郷、宮崎県立美術館のホームページは、もう瑛九だらけですね(笑)。なにしろ常設コーナーがあるくらいです。
「過去の特別展」には、二つの大回顧展。
平成8年「宮崎県立美術館開館記念展 魂の叙情詩 瑛九展」
平成23年「生誕100年記念 瑛九展」
「過去のコレクション展」を見れば、瑛九の名がみえない年のほうが珍しい、しょっちゅう瑛九の展示をしています。
故郷(の美術館)に愛される瑛九、冷たくされるオノサト・・・・(トホホ)
亭主の故郷でもある群馬の名誉のためにも付言しますが、県立美術館が冷淡な分、桐生の大川美術館は三回もオノサト展を開き、気をはいています。
<1月18日より、企画展「#桐生のアーティスト2020」を開催いたします。#企画展 に合わせ、#常設展 では #大川美術館 #コレクション による #桐生 ゆかりの #アーティスト の作品を展示しております。画像は、桐生の地にて創作をおこない、#抽象絵画 で国際的な評価を集めた #画家 #オノサトトシノブ(1912ー1986)の作品です。今年度新規寄託作品も含まれております。ぜひご覧ください。(20200107/大川美術館のfacebookより)>
2012年に大川美術館で開催された「生誕100年 オノサト・トシノブ」展については二回にわけてレポートしました(第一回、第二回)のでお読みください。
オノサト・ファンの皆さん、東京都現代美術館のオノサト展示(福原コレクション)は必見です。どうぞお出かけください。
●東京都現代美術館リニューアル・オープン記念展 コレクション展
MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ
会期:2019年11月16日(土)~2020年02月16日(日)

今回の第3期は、約3年間の改修休館の間に収蔵された作品およそ400点のなかから寄贈作品を中心に、1930年代から近年の作品まで約160点をご紹介します。過去と現在、美術館とコレクターといった複数の視点の交差をとおして、コレクションの意味を考えます。
出品作家:荒木高子、池田満寿夫、石井茂雄、岡本信治郎、オノ・ヨーコ、オノサト・トシノブ、草間彌生、新海覚雄、末松正樹、豊嶋康子、中村宏、秀島由己男、藤田嗣治、ホンマタカシ、mamoru、宮島達男、向井潤吉、保田春彦、ブレンダ・ファハルド、アルナルド・ポモドーロ ほか(同館HPより)
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◎昨日読まれたブログ(archive)/2010年09月12日|奈良美智の初期作品
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◆ときの忘れものは『オノサト・トシノブ展』を開催し、初期作品を中心に油彩、水彩、版画を17点展示しています。
会期:2020年1月10日[金]―2月1日[土] *日・月・祝日休廊

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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