本日7月27日は高崎が生んだ文化のパトロン井上房一郎さんの命日です(1898年5月13日 - 1993年7月27日)。
亭主が井上さんの知遇を得たのは15歳、高校1年でした。学生時代はアルバイトとマンドリンに明け暮れた亭主ですが、28歳のとき美術の世界に入りました(現代版画センター)。その道筋をつけてくれたのも井上さんでした。
連休初日、一年数か月ぶりに新幹線に乗り、高崎に向かいました。井上さんが建設に尽力した群馬音楽センターで開催されたTMO(高崎高校マンドリン・オーケストラ)の第54回定期演奏会の応援のためです。
20210722第54回TMO定演プログラム表紙
2021年7月22日TMO第54回定期演奏会、於:群馬音楽センター
亭主はもう舞台は引退し、裏方の会場整理の手伝いですが、さすがにコロナ禍での開催はぎりぎりまで難航し、例年ですと全国から参集するOBとの合同練習は10回ほどするのですが、今年は僅か5回しかできず、参加者も大幅に減りました。
当日は体温測定からソーシャルディスタンス、感染防止に努め、入場者を500人以下に抑える(定員は約2000人の大会場です)など、苦心の末の開催でした。
廃部寸前までいったクラブもいまや部員数十人の規模に、OBたちの参加がなくとも立派に舞台を勤められるまでになりました。休校、部活動の休止など様々な困難の中でよくぞ定期演奏会開催にこぎつけてくれたと現役高校生たちに拍手を送った一日でした。

20210722TMO54回定演音楽センター外観会場は1961年(亭主が高校一年のとき)竣工したレーモンド設計の群馬音楽センター。今年は開館60周年でした。

20210722TMO54回定演音楽センター二階ロビー群馬音楽センター二階ロビー

20210722TMO54回定演受付2OB会主催の定演は今年54回目。
入り口の達筆は元小学校校長のK君。

20210722TMO54回定演受付お客様を迎えるのはスーパーOBの面々、全員70歳台。

20210722TMO54回定演令子亭主の身を案じ、社長もついてきてくれました。

20210722TMO54回定演ロビー群馬音楽センター一階ロビー

20210722TMO54回定演1部いよいよ開幕、第一部と二部は現役部員の演奏。

20210722TMO54回定演3部
第三部はOBと現役が一体となって演奏。プログラムの表紙写真は前々回の定演のものですが、激減ぶりがお分かりになるでしょう。コロナ禍がおさまることを願うばかりです。数人の女性は賛助の皆さんです。
舞台にたなびくTMO団旗は亭主の盟友・故北澤敏彦さんのデザインです。

井上房一郎・人と功績
熊倉浩靖『井上房一郎・人と功績』
2011年7月 みやま文庫刊

このブログで「井上房一郎さんのこと」をたびたび紹介してきました。
地方初のオーケストラとして群馬交響楽団をつくり、群馬音楽センターの設計をアントニン・レーモンドに依頼します。竣工した1961年に亭主は高崎高校に入学、井上さんにめぐり会いました、井上さんは63歳でした。
自らコレクションを寄贈した群馬県立近代美術館の設計は磯崎新先生を登用します。竣工は1974年、井上さんは76歳になっていました。
群馬を代表する企業(井上工業)の社長でしたが、筋金入りのリベラリストでした。
哲学とは、私たちが私たちの社会に賢明に生きようとする願望の学問です。高崎哲学堂は、現在の政治や教育の手の届かぬことを勉強する高崎の寺小屋です」と学ぶこと、考えることの重要さを若い人たちに呼び掛けてやみませんでした。
「高崎哲学堂設立準備会」を起こしたのは71歳のとき。機関誌のタイトルは『よろこばしき知識』でした。
1969年(71歳)から、95歳で亡くなる1993年7月27日まで実に261回の哲学堂講演会を自ら主宰して開催し続けます。聴衆僅か数人か数十人でも決して理想の旗を降ろしませんでした。費用は全て井上さんのポケットマネー。この講演会は没後も2006年まで通算375回開催されました。
幾人かを挙げてみますが、まさに『よろこばしき知識』を体現する人選でした。
増谷文雄、梅原猛、上山春平、安部公房、湯川秀樹、ドナルド・キーン、谷川徹三、磯崎新、真継伸彦、芳賀徹、矢内原伊作、伊東俊太郎、生松敬三、菊地昌典、今西錦司、木村尚三郎、武者小路公秀、木田元、安永寿延、市井三郎、江上波夫、菊地昌典、高木仁三郎、渡辺一民、吉本隆明、鶴見和子、前田愛、木村重信、司馬遼太郎、加藤周一、久野収、日高一輝、井深大、木下順二、村上陽一郎 、山折哲雄、福永光司、山口昌男、樺山紘一、カール・ベッカー

詳しくは、熊倉浩靖著『井上房一郎・人と功績』について(その1その2その3)をお読みください。

*2018年6月、ときの忘れもの主催で「高崎市のレーモンド建築ツアー」を開催しました。
<月刊WEBマガジン Colla:J(コラージ)>(塩野哲也さん)が当日のツアーの様子や井上房一郎さんが関与した高崎の文化的資産について、綿密な調査取材をもとに、コラージ愛逢月で「Session in TAKASAKI 井上房一郎の描いた絵」を紹介していますのでお読みください。

桂離宮の美を再発見したといわれるブルーノ・タウト。
ナチスから逃れ日本に滞在した3年半のうち、
実に2年以上を群馬県・高崎の禅寺で過ごした事をご存知でしょうか。
その滞在をサポートした人物が井上房一郎です。
高崎の工芸運動を指導し、レーモンド設計の群馬音楽センターや
磯崎 新の群馬県立近代美術館を立案した先鋭的な文化の推進者でした。
希代のパトロンの生涯を通して、都市文化醸成の過程をたどります。

編集思考室シオング「Colla:J」編集局
編集兼発行人 塩野哲也>

画面をクリックしてください。
20180725

<特集 :Session in TAKASAKI 井上房一郎の描いた絵
群馬県立近代美術館 磯崎新
タウトの暮らした禅寺 少林山達磨寺
高崎文化の発信源 旧井上房一郎邸
群馬音楽センター アントニン・レーモンド

01


02


73ページには、亭主の少年時代の写真も掲載されています(もちろん井上さんも)。
上掲右端は亭主の後輩で、井上さんの助手を務めた熊倉浩靖さんです。

●今日のお勧め作品は、アントニン・レーモンドです。
アントニン・レーモンド_色彩の研究_600
アントニン・レーモンド Antonin RAYMOND
色彩の研究
紙に油彩
64.1x51.6cm
Signed
作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆「没後30年 倉俣史朗展 今尚色褪せないデザインの革命児
倉俣史朗展DMハガキ
会期=8月12日~8月22日(無休)
会場=Bunkamura Gallery

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。