瑛九型紙とフォトデッサン

瑛九は、1936年に画家の長谷川三郎、美術評論家の外山卯三郎の協力を得て、フォトグラム作品10点を複写したプリントを挟み込んだ作品集『眠りの理由』(芸術学研究会、限定40部)を刊行しました。切り抜いた紙(型紙)や、ネット状の物体を印画紙の上に置き、感光させた後、現像することでできる写真作品は、フォト・デッサンと命名されます。
瑛九という名前を用いるようになったのも、この『眠りの理由』の刊行がきっかけであり、まさに彼にとってはアーティストとして大きな飛躍を遂げた作品集となりました。
瑛九はその後もフォト・デッサンや、写真を切り貼りしたフォト・コラージュ、さらにそれにドローイングを加えた作品などを制作し続け、1950年代には宮崎、大阪、東京などで「瑛九フォト・デッサン展」をたびたび開催し、1951年にはフォト・デッサン作品集『真昼の夢』(9点組、限定100部)を刊行しました。
ときの忘れものは、9月3日から「生誕110年 第30回瑛九展 フォト・デッサンと型紙」を開催し、フォトデッサンと瑛九が遺した型紙作品をご紹介しています。

最近は新しいコレクションを増やすのが難しくなってきましたが、30回に相応しい珍しい作品をご覧にいれたいと、財布の紐と相談しながら準備してきました。
下にご紹介する《バレエレッスン》は新発掘のフォトデッサンですが、真贋の決め手になったのは、ときの忘れものが旧蔵していた「型紙」です。

12_Q Ei バレエレッスン今回出品するフォト・デッサン《バレエレッスン》に


瑛九フォトデッサン型紙14B2011年の「第21回瑛九展」に出品した《瑛九フォトデッサン型紙14B》(売却済み)をPhotoshop上で当てはめてみました。

Q Ei バレエレッスン検証一致しました。瑛九のフォト・デッサンにはこのような発見があります。


今回、9点の型紙を出品していますが(全点販売しています)、その多くは公立美術館に収蔵されている瑛九のフォトデッサンに使われたことがわかっています。
《フォトデッサン型紙30》
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海瑛九《海》
1951年 フォトデッサン 36.8×52.4cm
北九州市立美術館所蔵
※瑛九フォトデッサン展(2005年10月22日~12月18日・国立国際美術館主催)出品作品(出品№24)


《フォトデッサン型紙36》
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芝居瑛九《芝居》
1950年 フォトデッサン 44.3×53.5cm
国立国際美術館所蔵
※瑛九フォトデッサン展(2005年10月22日~12月18日・国立国際美術館主催)出品作品(出品№17)

《フォトデッサン型紙39》
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3人の乙女瑛九《3人の乙女》
1952年 フォトデッサン 55.0×45.0cm
埼玉県立近代美術館所蔵
※瑛九フォトデッサン展(東京/1987年9月4日~9月23日、大阪/1987年10月16日~10月28日・朝日新聞社主催)出品作品(出品№44)
※瑛九フォトデッサン展(2005年10月22日~12月18日・国立国際美術館主催)出品作品(出品№45)


《フォトデッサン型紙44》
44
44_syokudou瑛九《食堂》
1950年 フォトデッサン 42.5×52.4cmcm
宮崎県立美術館所蔵
※瑛九フォトデッサン展(2005年10月22日~12月18日・国立国際美術館主催)出品作品(出品№23)


《フォトデッサン型紙46》46
46_mahiru-kisya瑛九《真昼の汽車》
1950年 フォトデッサン 43.7x54.6cm
福岡市美術館所蔵
※瑛九フォトデッサン展(2005年10月22日~12月18日・国立国際美術館主催)出品作品(出品№20)


上記のフォトデッサンは、下記図録の展覧会に出品されたものです。
『瑛九フォトデッサン』『瑛九 フォトデッサン展』カタログ
2005年10月22日 国立国際美術館 発行
88ページ 25.7x18.2cm
テキスト:細江英公、五十殿利治、安來正博


そのほかにも型紙を展示します。
《作品》(フォト・デッサン型紙)
25_A25_B

《フォトデッサン型紙37》
28_37_A28_37_B

《フォトデッサン型紙38》
29_38_A29_38_B

《フォト・デッサン型紙47》
33_47_A33_47_G

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ときの忘れものは2011年にも「第21回瑛九展 46の光のかけら/フォトデッサン型紙」と題したフォトデッサンと型紙の展示を開催し、全46点の型紙の裏表両面を掲載した大判のポスター(限定200部、番号入り)を製作しました。
「第21回瑛九展 46の光のかけら /フォトデッサン型紙」ポスター
poster_A_600瑛九展ポスター(表)
限定200部
デザイン:DIX-HOUSE
サイズ:84.1x59.4cm(A1)
限定200部(番号入り)
価格:2,200円(税込)
+梱包送料:3,000円


poster_B_600瑛九展ポスター(裏)
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生誕110年 第30回瑛九展 フォト・デッサンと型紙(予約は不要です)
会期=2021年9月3日(金)―9月25日(土) 11:00-19:00 ※日・月・祝休
332_a332_b第30回瑛九展では、フォト・デッサン25点、型紙(紙)6点、型紙(セロファン)3点、計34点を出品し、全点を収録したカタログを刊行しました(9月8日ブログを参照)。
瑛九の「フォト・デッサン」は、先行するマン・レイやモホリ=ナジが印画紙上に物を置き、直接光をあてて制作した「フォトグラム(レイヨグラム)」と同じ技法ですが、彼ら先行者と異なり、瑛九は自ら切り抜いた「型紙」を使って膨大な点数を制作しました。その作品群を見れば、それらが絵画性の強い独創的なものであったことは一目瞭然です。

第30回瑛九展カタログ『生誕110年 第30回瑛九展 フォトデッサンと型紙』カタログ
2021年 B5版 28P
執筆:ワーグナー浅野智子(美術博士)、飯沢耕太郎(写真評論家)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
発行:ときの忘れもの
税込価格 880円、送料250円
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●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。