宮崎県立美術館「瑛九展を観て」

「生誕110年記念 瑛九展-Q Ei 表現のつばさ-」
会期:2021年10月23日(土)~12月5日(日)
会場:宮崎県立美術館
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宮崎県立美術館で生誕110年記念の瑛九展が開催されました。展覧会に参加するため宮崎出張に行ってきました。12月に入ったばかりで寒いかな、と思ったのですが街には花が咲いて木々が生い茂っておりました。夕方でもまだ明るく全体的に明るいイメージを感じました。

・瑛九展と瑛九について
IMG_7681初期の作品群。竹久夢二風の作品や、エスペラントの父・ザメンホフの肖像も。瑛九が影響を受けてきた人物がわかります。


IMG_7702瑛九は1911年に宮崎県宮崎市に生まれました。瑛九の生家は宮崎市内で眼科医院を営んでいました。1925年、宮崎中学校(現宮崎県立宮崎大宮高等学校)を中退して上京します。画像は2021年時点での杉田眼科外観。


FG006 00_08.2881935年に中央美術展に初入選。1936年4月に瑛九の名でフォトデッサン作品集『眠りの理由』を40部限定で刊行しています。瑛九のフォトデッサンについてはブログ9月13日『瑛九の型紙とフォトデッサン』をお読みください。


2021-02-12--15-17-401第二次世界大戦後は、絵画や版画(銅版画、リトグラフ)の制作に力を入れます。


IMG_76821951年からは埼玉県浦和市(現・さいたま市浦和区)仲町に移住し、精力的な製作活動を行います。浦和画家としても知られるようになる所以ですね。
1959年に健康を害して入院し、翌1960年に心不全のため48歳の若さで死去しました。


今回の瑛九展ではほぼ時系列に瑛九の作品の変遷をたどることができます。
初期から晩年までの作品が一挙に鑑賞できることはなかなかないと思うので貴重な展示だったと思います。ときの忘れものブログでもおなじみの小林美紀先生によるレクチャーにも参加してきました。ここで宮崎県という土地と瑛九作品について考えました。


・宮崎県と瑛九
瑛九といえば無数の点描で構成された油絵や光と影を駆使して表現するフォトデッサンが思い浮かぶのではないでしょうか。
瑛九は『芸術新潮』1952年10月号でこんな文章を書いています。<寫眞家は印画紙を新しい画用紙だなどと思つては駄目だろうが、寫眞家でない僕は、印画紙は新しい面白い画用紙だとしか思つていない。唯この感光する紙はペンやクレヨンではかけないので、そのかわりに光をつかわねばならない。光源そのものを大きくしたり小さくしたり、光をあたえる場所とさえぎる場所によつて黒や灰色を作らねばならない。光がインクである。>このように印画紙に光で描くことを説明しています。

FG005 01_04.521そもそも宮崎は神話の時代から「日向」と称されてきた土地でした。平均気温、年降水量、年日照時間のいずれも多い温暖で明るい土地と言えます。瑛九は幼いころから、宮崎県の明るい気候の中で光で遊ぶことを自然に身に着けていたのかもしれません。


これらの気候的条件からか宮崎県は冬でも多数の植物が生い茂っていました。街中のいたるところに花壇があり全体的に華やかなムード。瑛九の晩年の点描にも言えることですが、優れたカラーリスト(色彩画家)としての瑛九はこの宮崎の色彩豊かな環境から培われたのではないかと考えてしましますね。

・瑛九エピソード
IMG_7718杉田家の墓(下原墓地)。青空の下、きれいな花が活けてあります。ご挨拶をしてきました。


FG007 00_10.232橘橋から望む大淀川風景。
瑛九ゆかりの地として中村茉貴さんもご紹介くださった「橘橋」。瑛九は、宮崎を訪れた友人を橘橋の袂に広がっている河原によく連れて行ったそうです。
橘橋にまつわるエピソードは中村さんのエッセイをお読みください。「納得するまで、最後までやり抜」く力を手に入れられたような気分になります。


IMG_7744青島から望む太平洋。海水浴場のある青島へ行くのが杉田家の恒例行事であり、静養目的で赴くこともあったと言います。もちろん青島神社にも参拝してきました。


・おまけ
今回は瑛九を旅する宮崎出張ということで瑛九ゆかりの地を訪ね歩きました。なので観光とは違います。違うのですがこちらをご覧ください。
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Googleマップで「宮崎県 青島」と検索をかけた結果です。確かに青島のところに「多くの猫がいることで知られる小さな島」と書かれています。しかし私は青島で猫を一匹も見かけませんでした。
おそらく猫がたくさんいることで知られる小さな島は「愛媛県 青島」なのではないかと思います。
猫好きさん要注意ですね。しかし青島は青島でよかったです。

こちらもご覧ください
ブログ2021年11月6日『宮崎県立美術館「生誕110年記念 瑛九展」』
いたみ ちはる

●本日のお勧めは瑛九です。
qei-195瑛九 Q Ei
《題不詳》
フォト・デッサン
45.2×55.7cm
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宮崎県立美術館「生誕110年記念 瑛九ーQ Ei 表現のつばさ
32bcab83-s会期=2021年10月23日~12月5日(終了)
瑛九
11月6日のブログで尾立麗子による内覧会のレポートを掲載しましたが、社長命令でその後もスタッフ3人が宮崎に赴き、小林美紀先生からレクチャーを受けました。そのレポートは順次ブログに掲載します。
スタッフMのレポート/12月19日ブログ
スタッフIのレポート/12月21日ブログ
スタッフSのレポート/12月26日ブログ


●冬季休廊のお知らせ
ときの忘れものは、12月26日(日)~1月3日(月)まで冬季休廊いたします。
休廊中にいただいたメールには1月4日(火)以降に順次ご返信いたします。
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●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
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