ときの忘れものは、本日1月4日より新年の営業を開始します。
一昨年、昨年とコロナ対策で予定していた企画展が次々と開催中止や延期になりましたが、今年2022年は無事、予定通り開催できることを祈りたいと思います。
通常は日・月・祝日休廊ですが、
今年前半に個展を開催する若い作家たちはいずれも遠方(スイス、福島、京都)のため、会期を短くする代わりに会期中無休とします。ご注意ください。

1月
◆「杉山幸一郎展 スイスのかたち、日本のかたち
会期=2022年1月20日(木) ~ 1月29日(土) ※会期中無休

スイス・クールに在住する若手建築家・杉山幸一郎(b. 1984)の初個展を開催します。杉山は建築設計をする傍ら、ドローイングやオブジェクトを制作しています。
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中に世界屈指の大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ピーターメルクリ スタジオ)に留学。
2013年に若手建築家の登竜門と言われるUnder 30 Architects exhibitionに選出されて出展しました。2014年文化庁新進芸術家海外研修制度により、スイスの建築家ピーター・ズントーのアトリエで研修。2015年から2021年5月までアトリエ ピーター ズントーに勤務し、ワークショップチーフを経て、プロジェクトリーダーとして活躍。現在はスイスと日本でフリーランスの建築家として活動しています。
本展では、建物の表層を抽象化して線や色の面に置き換えて表現しようと試みた水彩ドローイングシリーズ〈Line & Fill〉や、ドローイングを立体化したオブジェクト、また、小さな建築のようで家具としても使える作品群をご覧いただきます。 展覧会カタログも刊行します。
作家は個展のためにスイスから一時帰国、作家在廊日はHPでお知らせします。
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【杉山幸一郎 ステートメント】
between craftsman and artist
熟練した職人が素材の特性を読み、最も理にかなった形で用途を満たすものを作り出す。そうして生まれ、すでに生活の一部となった身の回りにある物たちがどう作られたのか。そのプロセスに興味があります。
アーティストが自身の作品を通して、目の前に存在しているけれど、なかなか気づくことのできない何かを表現する。それが言葉の壁を超えて共有されているという事実に心を打たれます。
最近、これらの≪あいだ≫に僕の目指す建築家像があるような気がしています。

Line & Fill
建築は何千という数えきれないほどのマテリアル(部材)から成り立っています。
音が連なってメロディができあがるように、単体では意味を成し得ないマテリアルもいくつか集まって組み合わさることで、単なる要素の羅列では達成し得ないような共鳴効果が起こることがあり ます。
建築空間を創り上げるとはつまり、複数のマテリアルを秩序をもって配置し互いに共鳴させることで新しい感覚を創っていくことだと僕は考えています。


2月
◆「生誕100年 駒井哲郎展Part 2 駒井哲郎と瀧口修造」
会期=2022年2月8日(火)~2月26日(土)※日・月・祝日は休廊

*当初は2月4日スタートの予定でしたが、2月8日~26日に変更しました。
現代銅版画の先駆者、駒井哲郎(1920-1976)の生誕100年にあたる2020年春に記念展Part 1を開催しましたが、コロナ禍でPart 2が延び延びになってしまいました。
ようやく開催にこぎつけたPart 2では、駒井哲郎とその才能にいち早く注目をしていた瀧口修造を中心に、駒井が影響を受けたルドンや長谷川潔、恩地孝四郎の作品も合わせてご覧いただきます。駒井哲郎が銅版を制作し始めた時代は、技法的にも未開拓で、国内には優れた指導者がいませんでした。そのため駒井作品は他ジャンルの作家たちの創作が深く影響しています。詩人で美術評論家の瀧口修造や、敬愛したオディロン・ルドン、抽象木版画の先駆者である恩地孝四郎やパリの長谷川潔など洋画家や評論家といったジャンルを超えた作家とのつながりにも着目して、版画芸術が広く文化として発展してきた流れもご紹介します。
展示するのは安東次男との詩画集『人それを呼んで反歌という』全16点を始め、瀧口修造の水彩やデカルコマニー、オディロン・ルドンのリトグラフ、長谷川潔の銅版画、恩地孝四郎の木版画です。
Part 1を含む展覧会カタログを刊行します。執筆は名古屋大学大学院人文学研究科教授の栗田秀法先生と、瀧口修造研究の土渕信彦さんです。
駒井哲郎_時間の玩具
駒井哲郎《時間の玩具》


3月
◆Colla:J 創刊15周年記念展「コラージのフォトコラージュ」
会期=2022年3月4日(金)~3月12日(土)※会期中無休

Webマガジン コラージは日本の美意識をテーマに、各地の生活文化、歴史的な建物、工芸、モダン建築などを15年にわたり取材・撮影してきました。発刊号数は170号、収録写真点数は20万点を超えます。雑誌の編集は写真、文章、図版などのコラージュにより構成され、料理のレシピと同様、素材の融合から様々な世界観が生まれます。ふだんは完成された誌面を見る訳ですが、その過程にある編集室でしか見られない姿を固定化してみました。雑誌は号数を重ねるごとに、人格のようなものを持ちひとり歩きを始めます。今回の作品はその人格が作り出したと言えそうです。また会期中は会場に仮設のコラージ編集室を設け、スタッフの作業風景にも触れて頂けます。
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【Webマガジン コラージの概要】
めまぐるしく変容する世界情勢の中で、ともすれば見失いがちになる日本人としての生き方。月刊Webマガジン「Colla:J」は、人々が築いてきた暮らしの価値観を丁寧に観察し、これからのライフスタイルをより豊かにするための情報を、豊富なヴィジュアルと資料によってお届けしていきます。


【Colla:Jの目指すもの】
Colla:Jは、日本人の美意識とは何かを考えます。
ものと人、人と人、人と地域の交流から生れる、出会いの素晴らしさを表現します。
ものづくりの根源にある、創造の喜びと価値を再発見します。
クリエーターの創造力を刺戟する誌面づくりを目指します。
運営は、Colla:Jのコンセプトに賛同頂いたサポーター企業様のご協力により行っています(閲覧は無料です)。


◆「アートフェア東京2022/倉俣史朗・葉栗剛・野口琢郎」
会期=2022年3月10日―3月13日 ※3月10日(木)は招待制

会場=東京国際フォーラム ホールE/ロビーギャラリー(東京都千代田区丸の内3-5-1)
3月10日(木)プライベートビューイング 12:00 - 16:00
       ベルニサージュ 16:00 - 19:00
3月11日(金) - 13日(日)
パブリックビューイング 11:00 - 19:00 ※最終日の13日のみ16:00まで
倉俣史朗が遺した貴重なスケッチをもとに版画にしたシルクスクリーン作品集『倉俣史朗 Shiro Kuramata Cahier 3』(シルクスクリーン10点セット)を2022年にリリースし、初公開します。アートフェア東京に合わせて、書籍『倉俣史朗 Shiro Kuramata Cahier』も刊行予定です。
名古屋で制作活動を行なう彫刻家・葉栗剛の最新作木彫の<男気>シリーズの木彫作品や、京都西陣の箔屋に代々伝わる伝統的な引箔制作の技法を用いながら、漆と箔を駆使した新たな美術表現に取り組んでいる野口琢朗の新作箔画を展示します。
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2021年、アートフェア東京にて


◆「佐藤研吾展 群空洞と囲い」
会期=2022年3月25日(金)~4月3日(日) ※会期中無休

2018年に、ときの忘れもので初個展『佐藤研吾展―囲いこみとお節介』を開催した若手建築家・佐藤研吾はコロナ禍で海外への渡航が難しくなったり、建築の仕事を請け負ったりする中で、拠点を福島県大玉村に移しました。東北での活動から様々なインスピレーションを受ける中で制作したドローイング、自作の木造による撮影機、写真などを今回は展示します。ときの忘れものでは佐藤氏のエッセイを毎月配信。佐藤さんの縦横無尽な活動からどんな作品が生まれるのか、期待しています。
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【佐藤研吾 ステートメント】
空海による教風が確立された密教を純密と呼ぶのに対して、それ以前の有象無象の密教を雑部密教、雑密と呼ぶことがある。雑密は、地場の神信仰と結合し、体系化されずに断片的かつ同時多発的に生まれ出た、私度の僧による信仰であった。
雑密の内で制作された一木彫の仏像には、当時の腐敗した仏教界、社会全体に怒りの念を表明する、屹立とした荒々しさがあった。おそらくは木彫でないと表現できないような、ドップリと大らかに構えた量感ある異様な造型感覚が注入されていた。
歴史の中では古代から中世への転形と言える束の間の造型であったのかもしれないが、正統に対する異端、中心に対する外縁が担わざるを得ない先鋭性がそこにはあった。造型の極北として、外縁から生まれ出た必然として、雑密仏は再考される必要がある。
そんな、夢想に近い、1000年前の制作への思考を、私は東北地方の片田舎で巡らせている。地域圏は違うが、自分自身が在地社会に身を置いたことで、雑密仏に込められたような外縁としての造型感覚を突き詰めて考えることができるかもしれないと考えた。それは、移動が制限されていた昨今のコンディションによってさらに強く思うに至った。
東北では比較的容易にクリの丸太が手に入る。寒冷地の利であるとも言える。そしてクリの丸太に空洞を彫り抜く。空洞を彫るのは、これが同時に建築の縮減模型の役割も果たすからだ。そして、彫った空洞に鉄をまとわり付かせ、自立させる。自立した空洞は、家具、あるいは何かを囲い込むための道具として、ヒトの生活圏のどこかに位置付けられる。鉄とクリの取り合いは重要な関心事である。なぜならばこの空洞は、ある種の開口部にまつわる実験でもあるからだ。入口と出口。空洞はその形式故に必ずある方向性が定められる。そして方向を持った複数の空洞が、古寺に集結する雑密仏の如く群居し、揺蕩う煙のように微かに連続する風景を企てる。
2021年12月 佐藤研吾


4月
◆「中村潤展 うろうろをへて こつこつのはて」
会期=2022年4月15日(金)~24日(日)※会期中無休

2019年にグループ展「Tricolore2019―中村潤・尾崎森平・谷川桐子展」に出品した中村潤は、トイレットペーパーを編んで造形したものや、方眼紙に針と糸で刺したオブジェ作品を京都で制作しています。
ときの忘れものでは初個展となる「中村潤展」は、ギャラリーの吹き抜け空間を生かした展示を試みます。
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【中村潤 ステートメント】
紙や糸くずなどを素材に大,小,様々な立体物をつくります。
気になる素材を手に取り,手触りを確かめたり,光にあてて眺めたり。手の中で遊ぶように始まる作品制作の主な技法は,編む,折る,ねじる,縫う等,生活に親しみにある手の技法です。
積み重なり,繰り返されるだけでふつふつと沸くおかしみのような色や形を期待して,手を動かします。
無理矢理ではない「へー」とか「ほー」とか「きれい」とか「なんでー」の形を見たいのです。
何かを表すためでも,考えるためでも無い色や形の結実がポンと置かれると,空間がすっと広がってのびやかになる。そんなことになればいいなと思います。
春を楽しみに,こつこつと冬を過ごします。


5月
◆「生誕110年 第4回松本竣介展」
1912年東京に生まれた松本竣介は今年生誕110年を迎えます。少年時代を盛岡で過ごし、中学時代に聴力を失いますが、やがて絵画に志して17歳になる年に再び上京。1948年に亡くなるまで絵を描き続けました。
太平洋戦争直前に「生きてゐる画家」という文を発表して自由芸術を標榜し、戦後すぐには「全日本美術家に諮る」という美術家の団結を求める文を画家たちに送るなど、明確な意志を貫いた作家でもあり、その早世が惜しまれました。
僅か36歳の生涯で描いた竣介の作品は、桐生の大川美術館、盛岡の岩手県立美術館、東京国立近代美術館、神奈川県立近代美術館などに収蔵されています。
ときの忘れものは2011年に生誕100年記念展を開催して以来、今回4回目の「松本竣介展」になります。本展では油彩、素描など約15点の作品をご覧いただきます。展覧会に合わせてカタログを制作します。
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松本竣介 紙にインク ※松本竣介展(2012年 ときの忘れもの)p.13所収 No.29


6月
◆「細江英公 × ガウディ生誕170年記念展」
*会期の詳細は後日発表します。
ときの忘れものではこれまで〈新版・鎌鼬〉〈春本・浮世絵うつし〉〈抱擁〉〈ガウディへの讃歌〉〈Villa Bottini〉など、さまざまなシリーズの細江英公写真展を開催しています。今回久しぶりとなる細江英公展では、ガウディ生誕170年を記念して、〈ガウディへの讃歌〉をご覧いただきます。
現在88歳の細江英公は、1964年にバルセロナでガウディ建築と衝撃的な出合い、その13年後、1977年から数度に亘って「サグラダファミリア」「グエル公園」「カサバトリョ」などガウディ建築の撮影を行ない〈ガウディへの讃歌〉として発表しました。40年以上も前に撮影・プリントされたヴィンテージプリントのモノクロとカラーを15点ご覧いただきます。
2014年細江英公展
2014年、青山のときの忘れものでの「細江英公写真展―ガウディの宇宙」オープニングにて

以上、1月~6月の企画展の予定です。
諸般の事情で会期が変更になる場合もございますので、事前にホームページでご確認いただければ幸いです。
おだち れいこ

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています。WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。