今でこそ駒井哲郎=色彩画家といっても非難されることはないでしょうが、生前没後を通じて駒井哲郎=白と黒(モノトーン)というのが定説でした。駒井哲郎の輝くような色彩世界を初めて世に知らしめたのは1991年に資生堂ギャラリーで開催された『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』でした。このとき当時の資生堂社長(現・名誉会長)福原義春氏のコレクションのいくつかが公開され、やがて世田谷美術館に大量の「福原コレクション」が寄贈されるにいたりました。福原コレクションの特徴はモノタイプに代表される色彩作品です。白と黒の世界という定説に敢然と叛旗を翻し、知られざる駒井の色彩世界の豊穣さをコレクションの核に据えたのが福原コレクションでした。
2018年に開催された横浜美術館の「駒井哲郎―煌めく紙上の宇宙」展図録表紙には福原コレクションの《時間の玩具》が使われました。ひと昔前の学芸員だったら怖くてできない選択だったでしょう。担当した若い学芸員の片多祐子さんはこの展覧会によって第31回倫雅賞に輝きます。
この《時間の玩具》(同名のモノクロ作品もあります)誰が見ても名作中の名作と思うでしょうが、実はその詳細(いつ、何部つくられたか)が判明したのはつい最近のことです。
それについては亭主の連載「駒井哲郎を追いかけて第67回」に少し書きました。

600No.17
駒井哲郎 『時間の玩具』

1970年
銅版(サンドペーパーによるエッチング〈1版多色〉)
38.5×23.0cm/49.0×32.3cm
3/30  サインあり
都美No.248、美術出版社No.166

*福原コレクションについては「駒井哲郎 -福原コレクションをめぐって-」も併せてお読みください。


●駒井哲郎関連の図録のご案内です。

1)『生誕100年 駒井哲郎展』カタログ
20220217184046_00001Part1 若き日の作家とパトロン
 会期:2020年6月16日~7月11日
Part2 駒井哲郎と瀧口修造
 会期:2022年2月8日~2月26日
会場:ときのわすれもの(駒込)
出品作家:駒井哲郎、瀧口修造、長谷川潔、恩地孝四郎、オディロン・ルドン、パウル・クレー
カタログ:2022年、ときの忘れもの刊
監修:栗田秀法(名古屋大学大学院教授)
執筆:栗田秀法、土渕信彦(瀧口修造研究家)
編集・デザイン:柴田卓
B5サイズ  56P
価格:1,540円(税込み)+送料250円

「Part1 若き日の作家とパトロン」ページより
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「Part2 駒井哲郎と瀧口修造」のページより
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駒井哲郎展三校-1-33 (1)_page-0021


2)『山口長男とM氏コレクション展』カタログ
20220217184046_00007会期:2016年10月12日~10月22日
会場:ときのわすれもの(青山)
出品作家:津田青楓、仙波均平、山口長男、緑川廣太郎、オノサト・トシノブ、桂ゆき、古茂田守介、駒井哲郎、高橋秀、加納光於
カタログ:2016年、ときの忘れもの刊
執筆:三上豊(和光大学)
25.7x18.2cm  20P 和英併記
価格:550円(税込み)+送料250円
*1950年代から70年代にかけて絵の具会社や画廊を経営していたM氏は多くの画家たちと親交し、彼らのパトロン的存在でもありました。本展では山口長男の代表作「五つの線」(1954年、油彩、180×180cm、第39回二科展、翌年の第3回サンパウロ・ビエンナーレ展出品作品)をはじめ、M氏がコレクションした作品約20点を出品。
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3)『S氏コレクション 駒井哲郎 PART I 展』カタログ
20220217184046_00010会期:2009年11月20日~11月28日
会場:ときのわすれもの(青山)
カタログ:2010年2月10日初版、ときの忘れもの刊
執筆:滝沢恭司(町田市立国際版画美術館)
A5サイズ、22P  
価格:330円(税込み)+送料120円
*サラリーマンコレクターS氏が35年かけて蒐集した駒井哲郎の銅版画の中から、第一回展示として30点を出品。  
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4)『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』カタログ
20220217184046_00013シリーズ企画<資生堂ギャラリーとそのアーティスト達>第1回展
会期:1991年6月1日~6月16日
オープニング:1991年5月31日
会場:資生堂ギャラリー(銀座)
カタログ:1991年、資生堂企業文化部刊
執筆:中林忠良、野見山暁治、駒井美子、福原義春、中村稔、河合晴生
解題:綿貫不二夫
デザイン:ディスハウス(北澤敏彦) 
26×18cm  63P 収録図版:85点
価格:1,100円(税込み)+送料250円
資生堂91年駒井展図録


5)『版画の景色 現代版画センターの軌跡』展カタログ
20220217184046_00016会期:2018年1月16日~3月25日
主催・会場:埼玉県立近代美術館
出品作家(45 名):靉嘔/安藤忠雄 /飯田善国/磯崎新/一原有徳/アンディ・ウォーホル/内間安瑆/瑛九/大沢昌助/岡本信治郎/小田襄/小野具定/オノサト・トシノブ/柏原えつとむ/加藤清之/加山又造/北川民次/木村光佑/木村茂/木村利三郎/草間彌生/駒井哲郎/島州一/菅井汲/澄川喜一/関根伸夫/高橋雅之/高柳裕/戸張孤雁/難波田龍起/野田哲也/林芳史/藤江民/舟越保武/堀浩哉 /堀内正和/本田眞吾/松本旻/宮脇愛子/ジョナス・メカス/元永定正/柳澤紀子/山口勝弘/吉田克朗/吉原英雄
カタログ:2018年、埼玉県立近代美術館刊
編集:梅津元、五味良子、鴫原悠(埼玉県立近代美術館)
デザイン:刈谷悠三+角田奈央+平川響子/neucitora
26.0×18.5cm
価格:3,300円(税込み)+送料250円
*ケースを開くとサイズや仕様の異なるA~Bの3冊が収められています。Dのケースにも当時の写真や資料が収録されているので4分冊ともいえます。詳しくは2018年1月29日ブログを参照
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駒井哲郎のページより
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*画廊亭主敬白
亭主が直接間接に関わったカタログ5冊をご紹介しました。画廊で取り扱っていますので、ぜひご購入ください。
本日2月22日は亭主が敬愛するアンディ・ウォーホルと栗山豊の命日です。
ウォーホルはどなたもご存じでしょうが、栗山豊を知る人はそうはいないでしょう。
因縁の二人の命日が同じ2月22日であることは、幾度かこのブログに書いてきました。
ウォーホル没後35年、栗山豊没後21年の今年、二人の事績を若い人たちに伝えられるような展覧会を考えています。開催できるのは秋10月頃かなあ。
知っている人も、知らない人もどうぞ楽しみにしていてください。

「生誕100年 駒井哲郎展 Part 2 駒井哲郎と瀧口修造」
会期=2022年2月8日(火)~26日(土) 11:00-19:00 ※日・月・祝日は休廊
2月9日ブログに出品作品の画像、データ、価格を掲載しました。
駒井哲郎と瀧口修造展DM2020年に銅版画の詩人と謳われた駒井哲郎(1920-1976)の生誕100年の記念展「Part1 若き日の作家とパトロン」を開催しました。
今回の「Part2 駒井哲郎と瀧口修造」では詩人・安東次男との詩画集『人それを呼んで反歌という』全点を展示するほか、その才能にいち早く注目した詩人・評論家の瀧口修造など駒井が影響を受けた作家たちの作品も合わせてご覧いただきます。