小淵沢の藤森建築見学記 ～ ＜皆んなで建てよう！藤森旅館＞
先日、山梨との県境すぐの長野県富士見町にオープンした「小泊Fuji」 （別名 藤森旅館）の見学会に行って来ました。
ときの忘れもの亭主が『皆んなで建てよう！藤森旅館（仮)! 建築家・藤森照信 設計の宿泊施設2023年夏オープン！』のクラウドファンディングの応募が届くや否や寄付したのが昨年秋。クラウドファンディングで集めた資金は、手曲げの銅板屋根の設置と、屋根に植える桜を管理する為の設備費に充てられています。
そのリターン品として、贅沢にも一組限定の見学会が行われるということで、私はオープン前に訪問させていただき、代表の山越典子さんに2時間たっぷりご案内いただきました（普段は見学はできませんのでご了承ください）。
山越さんは、2004年にテレビに映っていた藤森建築の代表作［高過庵］に魅了され、藤森建築巡礼が始まり、遠方だとオーストラリアまで足をのばして推し活をされたそうです。藤森先生に建築を建ててもらいたい！という夢を描いてから足掛け12年、多くの方にこのプロジェクトに関わっていただきようやく8月20日に「小泊Fuji 」はオープンします。
7月23日にはホームページも公開されました。
稲がいい感じに育っている時期。「となりのトトロ」の世界です。
敷地が広く、この長いスロープの隣は田んぼにするそうです。
まず驚いたのは立地の素晴らしさ。周り一面水田、南側にはアルプス山脈、東側には八ヶ岳、地名だけあって富士山も見えるという最高の環境です。田舎育ちの都会好きの私でさえ、ここなら移住を考えてもいいと思ったほど。山越さんは、藤森さんの名建築が多く存在する長野県南信地方からほど近いという理由で長野県で土地探しを始めたとか。土地もすぐに見つかったわけではなく、間にはコロナもあり紆余曲折。12年、山越さんのおおらかさといいますか辛抱強さといいますか――よくぞ諦めなかったなと脱帽です。
この旅館は一組限定、最大5名が泊まれる一棟貸しの旅館です。
敷地のすぐ隣には田端の桜という樹齢300年ほどの立派な桜があり、この辺は桜の名所が二箇所あるそうで、藤森さんは屋根に植えるのは「桜」しか考えられないとのことで、桜が10本植っていました。
屋根に桜10本と聞いただけで少々不安になりますが、この屋根に仕込んでいるバケツの土は、量が多いわけでは無いので、巨木にはならないとのこと。
そしてこの建物は、ご主人の存在もとても重要で、もともとエンジニアだったご主人が、藤森旅館のために二級建築士を取得し、現在は大工さんとして旅館の施工に携わっていました。屋根に植えている桜の土をもっとこんもりさせよという藤森さんの指示で、この日は炎天下の中屋根に登り、土を増やす作業をされていました。
建物の裏ですが、こちらは屋根の土が多く見えていています。
煙突にも銅板が貼られていています。
上から見た銅板屋根は昆虫のようにも見えます。
銅板屋根は、この建物の屋根を葺くための銅板が3700枚必要だったそうで、参加者がワークショップで銅板曲げに挑戦。0.3ミリの銅板を角材で叩いてつくるので、もちろん同じ形のものはありません。
お金はかかるが、銅板は藤森建築の魅力の一つだから絶対にやりたかったそうで、クラウドファンディングで屋根代を集めたという経緯だそうです。
銅板屋根は10円玉と一緒で最初はピカピカしていて大工さんも眩しくて屋根葺きが大変だったそうですが、半年経った現在は少し黒ずみ、緑青し始めて経年変化が現れていました。銅板屋根は蓄熱などの機能があるわけではなく、意匠とのことです。
そして、外壁の焼杉も同じく、４ｍの杉の板を焼くワークショップが開かれたそうです。焼き方も長さも均一ではありません。藤森建築の特徴は自然との調和なので、既製品のような全て揃っているものは使わない、それが魅力的なのです。
旅館名の由来は、「泊」という漢字には「みなと」という意味があり、上空から見ると、建物は船のような形をしており、周りは水田なので、まるで海に浮かぶ船のよう、ということで旅館名を「小泊」にしたそうです。
バルコニーが飛び出している先からは富士山が見えるそうですが、伺ったときはあいにく雲に隠れて見えず。ここは、日本の良さを再確認する絶景の地であります。
そんなに藤森建築が好きなら、山越さんの自邸を設計してもらうという考えはなかったのか？と尋ねると、今まで藤森建築をいっぱい見て来て、そこで出会う藤森建築好きの人が、いいよね～とにこにこ見る姿を見るのが好きだから、自分だけのという考えはなかったそうです。自宅はすぐ近く、毎日管理するので、毎日ここで何かしら作業できるからそれで満足のようです。
そんな藤森推しのオーナーが経営している「小泊Fuji」 （別名 藤森旅館）に泊まりに行って、藤森建築の温かさと非日常を体験してみてください。
（おだち れいこ）
●ジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 （Blu-Ray版／DVD版）」を販売しています。
映像フォーマット：Blu-Ray、リージョンフリー／DVD PAL、リージョンフリー
各作品の撮影形式：16mmフィルム、ビデオ
制作年：1963～2014年
合計再生時間：1,262分
価格等については、３月4日ブログをご参照ください。
先日、山梨との県境すぐの長野県富士見町にオープンした「小泊Fuji」 （別名 藤森旅館）の見学会に行って来ました。
ときの忘れもの亭主が『皆んなで建てよう！藤森旅館（仮)! 建築家・藤森照信 設計の宿泊施設2023年夏オープン！』のクラウドファンディングの応募が届くや否や寄付したのが昨年秋。クラウドファンディングで集めた資金は、手曲げの銅板屋根の設置と、屋根に植える桜を管理する為の設備費に充てられています。
そのリターン品として、贅沢にも一組限定の見学会が行われるということで、私はオープン前に訪問させていただき、代表の山越典子さんに2時間たっぷりご案内いただきました（普段は見学はできませんのでご了承ください）。
山越さんは、2004年にテレビに映っていた藤森建築の代表作［高過庵］に魅了され、藤森建築巡礼が始まり、遠方だとオーストラリアまで足をのばして推し活をされたそうです。藤森先生に建築を建ててもらいたい！という夢を描いてから足掛け12年、多くの方にこのプロジェクトに関わっていただきようやく8月20日に「小泊Fuji 」はオープンします。
7月23日にはホームページも公開されました。
稲がいい感じに育っている時期。「となりのトトロ」の世界です。
敷地が広く、この長いスロープの隣は田んぼにするそうです。まず驚いたのは立地の素晴らしさ。周り一面水田、南側にはアルプス山脈、東側には八ヶ岳、地名だけあって富士山も見えるという最高の環境です。田舎育ちの都会好きの私でさえ、ここなら移住を考えてもいいと思ったほど。山越さんは、藤森さんの名建築が多く存在する長野県南信地方からほど近いという理由で長野県で土地探しを始めたとか。土地もすぐに見つかったわけではなく、間にはコロナもあり紆余曲折。12年、山越さんのおおらかさといいますか辛抱強さといいますか――よくぞ諦めなかったなと脱帽です。
この旅館は一組限定、最大5名が泊まれる一棟貸しの旅館です。
敷地のすぐ隣には田端の桜という樹齢300年ほどの立派な桜があり、この辺は桜の名所が二箇所あるそうで、藤森さんは屋根に植えるのは「桜」しか考えられないとのことで、桜が10本植っていました。
屋根に桜10本と聞いただけで少々不安になりますが、この屋根に仕込んでいるバケツの土は、量が多いわけでは無いので、巨木にはならないとのこと。
そしてこの建物は、ご主人の存在もとても重要で、もともとエンジニアだったご主人が、藤森旅館のために二級建築士を取得し、現在は大工さんとして旅館の施工に携わっていました。屋根に植えている桜の土をもっとこんもりさせよという藤森さんの指示で、この日は炎天下の中屋根に登り、土を増やす作業をされていました。
建物の裏ですが、こちらは屋根の土が多く見えていています。
煙突にも銅板が貼られていています。
上から見た銅板屋根は昆虫のようにも見えます。銅板屋根は、この建物の屋根を葺くための銅板が3700枚必要だったそうで、参加者がワークショップで銅板曲げに挑戦。0.3ミリの銅板を角材で叩いてつくるので、もちろん同じ形のものはありません。
お金はかかるが、銅板は藤森建築の魅力の一つだから絶対にやりたかったそうで、クラウドファンディングで屋根代を集めたという経緯だそうです。
銅板屋根は10円玉と一緒で最初はピカピカしていて大工さんも眩しくて屋根葺きが大変だったそうですが、半年経った現在は少し黒ずみ、緑青し始めて経年変化が現れていました。銅板屋根は蓄熱などの機能があるわけではなく、意匠とのことです。
そして、外壁の焼杉も同じく、４ｍの杉の板を焼くワークショップが開かれたそうです。焼き方も長さも均一ではありません。藤森建築の特徴は自然との調和なので、既製品のような全て揃っているものは使わない、それが魅力的なのです。
旅館名の由来は、「泊」という漢字には「みなと」という意味があり、上空から見ると、建物は船のような形をしており、周りは水田なので、まるで海に浮かぶ船のよう、ということで旅館名を「小泊」にしたそうです。
バルコニーが飛び出している先からは富士山が見えるそうですが、伺ったときはあいにく雲に隠れて見えず。ここは、日本の良さを再確認する絶景の地であります。
そんなに藤森建築が好きなら、山越さんの自邸を設計してもらうという考えはなかったのか？と尋ねると、今まで藤森建築をいっぱい見て来て、そこで出会う藤森建築好きの人が、いいよね～とにこにこ見る姿を見るのが好きだから、自分だけのという考えはなかったそうです。自宅はすぐ近く、毎日管理するので、毎日ここで何かしら作業できるからそれで満足のようです。
そんな藤森推しのオーナーが経営している「小泊Fuji」 （別名 藤森旅館）に泊まりに行って、藤森建築の温かさと非日常を体験してみてください。
（おだち れいこ）
●ジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 （Blu-Ray版／DVD版）」を販売しています。
映像フォーマット：Blu-Ray、リージョンフリー／DVD PAL、リージョンフリー各作品の撮影形式：16mmフィルム、ビデオ
制作年：1963～2014年
合計再生時間：1,262分
価格等については、３月4日ブログをご参照ください。
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