本日11月20日は駒井哲郎先生(1920年6月14日 - 1976年11月20日)の命日です。
ご存命なら103歳、47年前の今日、56歳の若さで亡くなられました。
ちょうど今、慶應義塾大学アートセンターで
Artist Voice III: 駒井哲郎──線を刻み、線に遊ぶ」が開催されています。
会期:2023年10月10日 (火) - 2024年1月26日 (金) *土日祝・休館
会場:慶應義塾アートセンター(三田キャンパス 南別館 1階)
   アート・スペース[KUAS]
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 小さな展示室1 室という施設の特性を生かして、作家の呟きや生の声を感じ取れるような展示を目指す「Artist Voice」シリーズ第3 回展では、駒井哲郎(1920-1976)を取り上げます。駒井は慶應義塾普通部在学時に版画の制作を始め、銅版画による表現を生涯一貫して探求し、日本における銅版画のパイオニアと評されています。本展覧会では、慶應義塾の所蔵品より、版画作品のほか、駒井が本学の機関誌『三田評論』『塾』に提供した挿図原画や駒井哲郎関連資料を展示します。思索を重ね、線を刻んだ硬質な版画作品に対し、ペンや筆によるのびやかなスケッチからは、作家の解放的で遊び心のある一面を垣間見ることができます。
作家の線の軌跡をたどりながら、インクと紙が織り成す詩情とユーモア漂う世界をご堪能ください。
同展サイトより再録)

また駒井先生の晩年の取り扱い画廊を描いた『自由が丘画廊ものがたり 戦後前衛美術と画商・実川暢宏』(金丸裕子著、平凡社)という本も刊行されたばかりです。
自由が丘画廊ものがたり_全体


9月6日ブログ「福原義春さん逝く」に亭主が企画に携わった「没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展」(1991年5月、資生堂ギャラリー)について書きました。
企業文化部の柿崎孝夫さんに改装中だった資生堂ギャラリーの再開記念に何か企画を考えてくれと依頼されたのがきっかけでした。
「高村智恵子紙絵展」「松本竣介たちの新人画会展」そして1953年に資生堂で初個展を開いた駒井先生の回顧展の3つの企画案を一晩で書き上げ提案したのでした。
それが社長の福原義春さんの眼にとまり、駒井先生の回顧展が実現しました。
当初は定石通り、銅版画の代表作(モノクロ)で構成するつもりでした。
ところが、偶然なのですが、同じ銀座の画廊・池田美術さんが会期も同じく「駒井哲郎展」を開催することを知り、こりゃあ困ったと思いました。せっかく資生堂ギャラリーの再開記念の華やかなニュースにしたいと意気込んでいたのに、そこから歩いても行ける画廊で同じような展覧会が開かれるとあっては企画者としては面目が立たない。
そのときひらめいたのが、1975年秋に自由が丘画廊の駒井先生の最後の新作展で発表された色彩豊かなモノタイプ作品のことでした。
あちら(池田美術さん)はきっとモノクロの代表作を展示するに違いない、だったらこちら(資生堂)は輝くばかりの色彩作品で壁面を埋め尽くそう。
駒井先生の周辺はきっと「邪道」だと非難するかも知れないが、もともと駒井先生の色彩版画は1953年の資生堂での初個展の折に初めて発表されたという因縁もある。
駒井のコの字もご存じなかった柿崎さんを言いくるめ(説得し)、短時間のうちに、芸大からは卒業制作の油彩を、昔のお客様からはモノタイプを、福原義春さんからは名作「黄色い家」などのカラー作品を借りまくりました。
幸運にもちょうど新潮社が雑誌の表紙に使った美しいモノタイプ作品を駒井家に返却したと聞いて、駒井夫人にお願いして全点お借りしました。
極めつきは、駒井夫人が「こんなのもあるのだけれど」と出してきてくれたのが15枚の第5回実験工房発表会におけるミュージック・コンクレート「レスピューグより」のスライドのための色彩豊かな原画でした。各作品は16.5×12.5cm(正確にはサイズはまちまち)前後の小品でグアッシュやパステルで描かれてしました。
さっそく駒井哲郎先生とコラボレーションした湯浅譲二先生にお会いして、その当時の様子を伺うこともできました。
15枚の原画は資生堂の展覧会で再び陽の目をみ、その後福原コレクションに加わり今は世田谷美術館に収蔵されています。

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『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』図録
1991年  資生堂 発行
63ページ 26.0x18.0cm
収録図版:85点(油彩、水彩、銅版、木版、モノタイプ)
執筆:中林忠良、野見山暁治、駒井美子、福原義春、中村稔、河合晴生、
解題:綿貫不二夫
企画・編集:資生堂企業文化部、アルスマーレ企画室
デザイン:ディスハウス(北澤敏彦)
*シリーズ企画<資生堂ギャラリーとそのアーティスト達>の第1回展図録

資生堂91年駒井展図録


資生堂91年駒井展図録レスピューグ原画2

あれから32年、倒産後の再起のきっかけを作ってくれた駒井先生とご遺族、福原義春さん、柿崎孝夫さんなど資生堂の皆さんには感謝の言葉しかありません。

臨時休業のお知らせ
誠に勝手ながら、12月2日(土)は臨時休業とさせていただきます。

●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
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建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。