小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第68回
○月○日
4月から早起きになった。
子どもが小学生になり登校が早くなったからだ。
今までより2時間弱早く起きることに。
となると、今まで寝ていた時間にすでに電車に乗っていたりする。電車のなかでぼんやりと吊り革につかまり、車内の動画広告を見ていると「あー、いままではこの時間だとまだ寝ていたなぁ…」とか考える。
周りの学生やビジネスマンはスマホで動画を見ていて、車内の中吊り広告の類もだんだんと減っていき、そこにはモニターが据えられ、そのモニターのカメラによって見ている我々の視聴数や見ているポイントも見られている。
この光景は人によっては終末観も感じるかもしれないが、のんきな自分にとってはあまりそういう感じもない。どうせデジタルなんて勝手に進化していくし、と思っている。それでこっちが面白いと思うコンテンツが増えるなら別にいい。個人的には、サクッと作れる料理レシピみたいなものが流れるとつい見てしまう。妙な雑学とか。
4月から始まったtrain TVなるものも、おそらくただ単に広告を流すよりも、そういう番組的なものを入れてから広告を流した方が食いつきがいいという分析によるものだろう。
何もかもが広告のビジネスモデルになっていることが癪に触るが、いつかはどうにかなるだろう。レトロCMが文化になるように、まぁ残るものだけ残れば良い。残すかどうかはこっち次第だ。
そんなことよりむしろこんな朝の早い時間(といっても7時半とか)に、コレだけの人の数がすでに日常を始めていることに驚いてしまう。世界っていつも動いているものですねぇ。
○月○日
全古書連(全国古書籍商組合連合会)の大市会の準備が始まる。
古書籍の組合は全国各都道府県にあってそれが集まっているのが全古書連だ。その大市は各都道府県持ち回りで年に一回開催され、今年は東京で開催される。以前は2年に一回のペースで東京の番だったらしいが、今回はコロナやらなんやらの関係で実に8年ぶりの開催らしい。しかも8年前は結局開催されなかったらしいので12年ぶりという話もある。いずれにせよ私が開業してから初の大市だ。
東京の組合には曜日によって開催されている市会が異なり、中央市会、東京古典会、東京洋書会、東京資料会、一新会(休会中)、明治古典会がある。
今回の大市では、この各市会の現役と会員やお手伝い含めて、100名弱が一緒に働くことになる。かなりの気合いだ。体はへとへとになりそうだけれど、普段一緒に働いていない人とも動くのでお祭りのようでもある。
○月○日
駒込駅に新しいカレー屋さんがオープンする(した)。
その名もカリーシュダ。
茅場町で人気の名店らしい。カレー大好きな自分には嬉しい開店。

ちなみに本の街、神保町はまたカレー屋さんが多いので、行くたびにカレーを食べてしまいがち。
最近行ってたいへん美味しかったのは、「Indian Street Food & Bar GOND」というお店。ランチに食べる南インドのミールスは最高のごはんだ。少しずつ盛られた数種類のカレーとサンバル。バスマティライスはおかわり無料。最後は何もかもを皿の上で混ぜて食べる。
本とカレーって本にスパイスの匂いがつくから絶対に相性悪いはずなのに、カレーと本と聞くと、最高の組み合わせに感じる。
以前市場にカレーのスパイスの匂いが染みついた本が出品されて、フロアがとてもとてもいい香りに包まれていたことがあった。染み付いていた本はガチの地方史。もしあなたが持っている分厚い「文京区史」なんてものに、スパイスのいい香りが染み付いていたら、あの時の一冊に違いない。謎の組み合わせだった。
あたらしくオープンしたカリーシュダさんはどんな味なのだろう。はやく行きたい。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は隔月、奇数月5日の更新です。次回は2024年7月5日です。どうぞお楽しみに。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●本日のお勧め作品はソニア・ドローネーです。
《コンポジション》
1971年プリント
カラーアクアチント
49.5×40.0cm
Ed.125
サインあり
*先日4月30日のブログでも「草間彌生とソニア・ドローネーの銅版画」をご紹介しましたのでお読みください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
*画廊亭主敬白
遂に社長の堪忍袋の緒が切れた(らしい)。
「買ってもいいけど、売って頂戴!」
このところひたすら買い続けています。いや亭主が求めて買っているんじゃあありませんよ。
まるで雪崩のごとく、大津波かと思うほど、勝手にあちこちから大量の作品群が流れ込んでくるという状況でありまして・・・
年間の展覧会スケジュールは事前に決まっているので、そういう新規の作品は別の形で紹介しなければなりません。いくらものがあっても見せなければ無いと同じです。
ということで今月から「一日だけの特集展示」を開催し、新たに加わったコレクションを特別価格にてご案内します。安いです、お買い得です。
先ずは5月15日(水)に「一日だけの特集展示/ジム・ダイン、菅井汲、関根伸夫」を開催します。
どうぞご期待ください。


ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
○月○日
4月から早起きになった。
子どもが小学生になり登校が早くなったからだ。
今までより2時間弱早く起きることに。
となると、今まで寝ていた時間にすでに電車に乗っていたりする。電車のなかでぼんやりと吊り革につかまり、車内の動画広告を見ていると「あー、いままではこの時間だとまだ寝ていたなぁ…」とか考える。
周りの学生やビジネスマンはスマホで動画を見ていて、車内の中吊り広告の類もだんだんと減っていき、そこにはモニターが据えられ、そのモニターのカメラによって見ている我々の視聴数や見ているポイントも見られている。
この光景は人によっては終末観も感じるかもしれないが、のんきな自分にとってはあまりそういう感じもない。どうせデジタルなんて勝手に進化していくし、と思っている。それでこっちが面白いと思うコンテンツが増えるなら別にいい。個人的には、サクッと作れる料理レシピみたいなものが流れるとつい見てしまう。妙な雑学とか。
4月から始まったtrain TVなるものも、おそらくただ単に広告を流すよりも、そういう番組的なものを入れてから広告を流した方が食いつきがいいという分析によるものだろう。
何もかもが広告のビジネスモデルになっていることが癪に触るが、いつかはどうにかなるだろう。レトロCMが文化になるように、まぁ残るものだけ残れば良い。残すかどうかはこっち次第だ。
そんなことよりむしろこんな朝の早い時間(といっても7時半とか)に、コレだけの人の数がすでに日常を始めていることに驚いてしまう。世界っていつも動いているものですねぇ。
○月○日
全古書連(全国古書籍商組合連合会)の大市会の準備が始まる。
古書籍の組合は全国各都道府県にあってそれが集まっているのが全古書連だ。その大市は各都道府県持ち回りで年に一回開催され、今年は東京で開催される。以前は2年に一回のペースで東京の番だったらしいが、今回はコロナやらなんやらの関係で実に8年ぶりの開催らしい。しかも8年前は結局開催されなかったらしいので12年ぶりという話もある。いずれにせよ私が開業してから初の大市だ。
東京の組合には曜日によって開催されている市会が異なり、中央市会、東京古典会、東京洋書会、東京資料会、一新会(休会中)、明治古典会がある。
今回の大市では、この各市会の現役と会員やお手伝い含めて、100名弱が一緒に働くことになる。かなりの気合いだ。体はへとへとになりそうだけれど、普段一緒に働いていない人とも動くのでお祭りのようでもある。
○月○日
駒込駅に新しいカレー屋さんがオープンする(した)。
その名もカリーシュダ。
茅場町で人気の名店らしい。カレー大好きな自分には嬉しい開店。

ちなみに本の街、神保町はまたカレー屋さんが多いので、行くたびにカレーを食べてしまいがち。
最近行ってたいへん美味しかったのは、「Indian Street Food & Bar GOND」というお店。ランチに食べる南インドのミールスは最高のごはんだ。少しずつ盛られた数種類のカレーとサンバル。バスマティライスはおかわり無料。最後は何もかもを皿の上で混ぜて食べる。
本とカレーって本にスパイスの匂いがつくから絶対に相性悪いはずなのに、カレーと本と聞くと、最高の組み合わせに感じる。
以前市場にカレーのスパイスの匂いが染みついた本が出品されて、フロアがとてもとてもいい香りに包まれていたことがあった。染み付いていた本はガチの地方史。もしあなたが持っている分厚い「文京区史」なんてものに、スパイスのいい香りが染み付いていたら、あの時の一冊に違いない。謎の組み合わせだった。
あたらしくオープンしたカリーシュダさんはどんな味なのだろう。はやく行きたい。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は隔月、奇数月5日の更新です。次回は2024年7月5日です。どうぞお楽しみに。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●本日のお勧め作品はソニア・ドローネーです。
《コンポジション》1971年プリント
カラーアクアチント
49.5×40.0cm
Ed.125
サインあり
*先日4月30日のブログでも「草間彌生とソニア・ドローネーの銅版画」をご紹介しましたのでお読みください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
*画廊亭主敬白
遂に社長の堪忍袋の緒が切れた(らしい)。
「買ってもいいけど、売って頂戴!」
このところひたすら買い続けています。いや亭主が求めて買っているんじゃあありませんよ。
まるで雪崩のごとく、大津波かと思うほど、勝手にあちこちから大量の作品群が流れ込んでくるという状況でありまして・・・
年間の展覧会スケジュールは事前に決まっているので、そういう新規の作品は別の形で紹介しなければなりません。いくらものがあっても見せなければ無いと同じです。
ということで今月から「一日だけの特集展示」を開催し、新たに加わったコレクションを特別価格にてご案内します。安いです、お買い得です。
先ずは5月15日(水)に「一日だけの特集展示/ジム・ダイン、菅井汲、関根伸夫」を開催します。
どうぞご期待ください。


ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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