いまから48年前の今日、11月20日東京藝大の現職教授のまま駒井哲郎先生が亡くなられました(1976年(昭和51年)11月20日没)。
まだ56歳という惜しみてもあまりある早すぎる死でした。
駒井先生は1920年(大正9年)6月14日、東京市日本橋区魚河岸(現在の東京都中央区日本橋室町1丁目)に生まれました。10数代続いた扇子問屋の家系ですからちゃきちゃきの江戸っ子です。明治維新で扇子を持つ侍が廃業となり、駒井先生が生まれた頃は、魚河岸で氷問屋(長谷川氷室)を営んでいました。
戦争で日本橋の店も焼けて、世田谷へ移りますが、本籍はずっと日本橋においたままでした。日本橋への思いは格別のものがあったのでしょう。
駒井哲郎
《影<日本の四季>より冬》
1975年
銅版
イメージサイズ:25.5×23.5cm
シートサイズ:44.0×34.0cm
E.P.
サインあり
発行:北辰画廊
※都美No.331、レゾネNo.322(美術出版社)
亭主は上掲の作品「影」が展示された自由が丘画廊での最後の個展(1975年11月)に辛うじて間に合い、そのときの新作展の巡回を少しお手伝いすることができました。
良く知られているように駒井先生の初個展は1953年(昭和28)1月銀座の資生堂ギャラリーで開催されました。奇しき縁というのでしょうか駒井先生の最後の展覧会も資生堂ギャラリーでした(1976年10月春陽会会員による「九人の会展」、翌11月20日死去)。
亭主が浪人生活を経て『資生堂ギャラリー七十五年史 1919~1994』の編纂に携わるきっかけとなったのは1991年に発足したばかりの企業文化部の柿崎孝夫さんの知遇を得て1991年の『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』の企画に参加、図録を編集したことでした。
当時社長だった福原義春さんの駒井コレクションのお手伝いもすることができました。
考えてみると、
半世紀の私たちの歩みの節目節目で駒井先生の作品と展覧会の縁に助けられ、道がひらけてきました。

タウン雑誌『日本橋』の2006年3月号(通巻323号)に掲載された福原義春さんの記事
画面を二度クリックしてください。拡大されて読めます。
『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』カタログ
シリーズ企画<資生堂ギャラリーとそのアーティスト達>第1回展
会期:1991年6月1日~6月16日
オープニング:1991年5月31日
会場:資生堂ギャラリー(銀座)
カタログ:1991年、資生堂企業文化部刊
執筆:中林忠良、野見山暁治、駒井美子、福原義春、中村稔、河合晴生
解題:綿貫不二夫
デザイン:ディスハウス(北澤敏彦)
26×18cm 63P 収録図版:85点
価格:1,100円(税込み)+送料250円
この展覧会では第5回実験工房展で湯浅譲二先生とのコラボレーション/ミュージック・コンクレート「レスピューグより」に使われたスライドの原画作品も出品することができました。
まだお元気だった湯浅先生は資生堂パーラーまで出かけてくださり、実験工房と駒井先生についてお伺いすることができました。
残念なことに湯浅譲二先生もこの夏、お亡くなりになりました。
(1929年8月12日 - 2024年7月21日)
以下は同展カタログの解題からの再録です。
~~~
◆実験工房第5回発表会でのスライドの原画(№10~№24)
――春陽会や、サンパウロ・ビエンナーレで受賞、新進気鋭の銅版画家として脚光を浴びた駒井哲郎は、1952年(昭和27)瀧口修造を顧問格とするインターメディア集団「実験工房」に参加する。メンバーは、造形から北代省三、山口勝弘、福島秀子、写真の大辻清司、音楽からは武満徹、鈴木博義、湯浅譲二の三人の作曲家とピアニストの園田高弘、それに音楽評論の秋山邦晴、照明の今井直次、技術の山崎英夫たちであった。その第5回発表会が1953年(昭和28)9月に第一生命ホールで開かれ、駒井哲郎は湯浅譲二と組んでオートスライドの作品「レスピューグ」の共同制作を行なった。
湯浅譲二の回想(「プリントアート」17号、1974年)によれば、
……私達は当時始めて(原文ママ)出来たオート・スライドを手にして、造形、音楽が協力してインターメディア的作品を発表することになった。私は駒井さんと組んで、ロベール・ガンゾの詩による「レスピューグ」を制作した。
ガンゾの詩は、部分的に引用すると、
朝の光だ 見よ 私達のもとへ丘が拡がる 鳥達や 花咲く樹々 そして 揺れそよぐ緑の叢にたたえる水と共に お前は やっと女らしく 肌ほてらせて あたかも私に引きしぼった恍惚の弓よ
といったものだった。駒井さんは赤や青、オレンジや黒などの色紙の上に絵具でイメージを画き、それをスライドにし、私は、フルートとピアノをもとにして、テープの逆回転などを利用しながら、日本では殆ど最初といっていい、ミュージック・コンクレートを作った。何日間もの連続徹夜での制作の末に開かれたコンサートの日に、会場の第一生命ホールで私はヘルツ・ノイローゼで倒れ、友人が薬局に走ってくれたりするあわただしさの中に、駒井さんはアルコールを大部入れて現われた。
興奮と不安、冒険への気負いが奇妙に入り混った夜だったが、いわば青春と友情のここちよい夢といった世界がそこにはあった。
(以下略)
『第1回資生堂ギャラリーとそのアーティスト達 没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』カタログより
~~~~~~~~~~
その後も幾度か湯浅先生の演奏会にうかがうことができました。

『作曲家の個展Ⅱ 一柳慧 × 湯浅譲二』
日時:2017年10月30日19時開演
会場:サントリーホール 大ホール
サントリー芸術財団の主催。毎年日本人作曲家からふたりを選び新作を委嘱して、公演するというもの。
2017年は一柳慧と実験工房のメンバーだった湯浅譲二のお二人でした。
この日、開演に先立ちお二人のトークがありました。
右から一柳先生、湯浅先生、聞き手の沼野雄司さん。
湯浅先生は足がご不自由な様子でゆっくりと歩かれて登場、お洒落な服装といい、ぴんと延ばした背筋に社長は「素敵だわね」とため息をついていました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
●本日のお勧め作品は駒井哲郎です。
駒井哲郎《仏国風景》
1954年
銅版(ビュラン)
9.7×6.9cm
Ed.50
サインあり
※レゾネNo. 78(美術出版社)
駒井哲郎《フロントピース Mai 斬られた首:「からんどりえ」より》
1960年
シュガーアクアチント・エッチング
29.7×24.8cm
Ed.9(レゾネと異なる)
サインあり
※レゾネNo. 124(美術出版社)
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
「生誕100年 駒井哲郎展」カタログ
発行:ときの忘れもの
発行日:2022年2月8日
A5変形、56ページ、
出品/駒井哲郎、瀧口修造、恩地孝四郎、長谷川潔、オディロン・ルドン、パウル・クレー
監修:栗田秀法(名古屋大学大学院教授)
執筆:栗田秀法、土渕信彦(瀧口修造研究家)
編集・デザイン:柴田卓
価格:1,540円(税込み)+送料250円
●12月7日(土)は臨時休廊いたします。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

まだ56歳という惜しみてもあまりある早すぎる死でした。
駒井先生は1920年(大正9年)6月14日、東京市日本橋区魚河岸(現在の東京都中央区日本橋室町1丁目)に生まれました。10数代続いた扇子問屋の家系ですからちゃきちゃきの江戸っ子です。明治維新で扇子を持つ侍が廃業となり、駒井先生が生まれた頃は、魚河岸で氷問屋(長谷川氷室)を営んでいました。
戦争で日本橋の店も焼けて、世田谷へ移りますが、本籍はずっと日本橋においたままでした。日本橋への思いは格別のものがあったのでしょう。
駒井哲郎《影<日本の四季>より冬》
1975年
銅版
イメージサイズ:25.5×23.5cm
シートサイズ:44.0×34.0cm
E.P.
サインあり
発行:北辰画廊
※都美No.331、レゾネNo.322(美術出版社)
亭主は上掲の作品「影」が展示された自由が丘画廊での最後の個展(1975年11月)に辛うじて間に合い、そのときの新作展の巡回を少しお手伝いすることができました。
良く知られているように駒井先生の初個展は1953年(昭和28)1月銀座の資生堂ギャラリーで開催されました。奇しき縁というのでしょうか駒井先生の最後の展覧会も資生堂ギャラリーでした(1976年10月春陽会会員による「九人の会展」、翌11月20日死去)。
亭主が浪人生活を経て『資生堂ギャラリー七十五年史 1919~1994』の編纂に携わるきっかけとなったのは1991年に発足したばかりの企業文化部の柿崎孝夫さんの知遇を得て1991年の『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』の企画に参加、図録を編集したことでした。
当時社長だった福原義春さんの駒井コレクションのお手伝いもすることができました。
考えてみると、
半世紀の私たちの歩みの節目節目で駒井先生の作品と展覧会の縁に助けられ、道がひらけてきました。

タウン雑誌『日本橋』の2006年3月号(通巻323号)に掲載された福原義春さんの記事
画面を二度クリックしてください。拡大されて読めます。
『没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』カタログ
シリーズ企画<資生堂ギャラリーとそのアーティスト達>第1回展会期:1991年6月1日~6月16日
オープニング:1991年5月31日
会場:資生堂ギャラリー(銀座)
カタログ:1991年、資生堂企業文化部刊
執筆:中林忠良、野見山暁治、駒井美子、福原義春、中村稔、河合晴生
解題:綿貫不二夫
デザイン:ディスハウス(北澤敏彦)
26×18cm 63P 収録図版:85点
価格:1,100円(税込み)+送料250円
この展覧会では第5回実験工房展で湯浅譲二先生とのコラボレーション/ミュージック・コンクレート「レスピューグより」に使われたスライドの原画作品も出品することができました。まだお元気だった湯浅先生は資生堂パーラーまで出かけてくださり、実験工房と駒井先生についてお伺いすることができました。
残念なことに湯浅譲二先生もこの夏、お亡くなりになりました。
(1929年8月12日 - 2024年7月21日)
以下は同展カタログの解題からの再録です。
~~~
◆実験工房第5回発表会でのスライドの原画(№10~№24)
――春陽会や、サンパウロ・ビエンナーレで受賞、新進気鋭の銅版画家として脚光を浴びた駒井哲郎は、1952年(昭和27)瀧口修造を顧問格とするインターメディア集団「実験工房」に参加する。メンバーは、造形から北代省三、山口勝弘、福島秀子、写真の大辻清司、音楽からは武満徹、鈴木博義、湯浅譲二の三人の作曲家とピアニストの園田高弘、それに音楽評論の秋山邦晴、照明の今井直次、技術の山崎英夫たちであった。その第5回発表会が1953年(昭和28)9月に第一生命ホールで開かれ、駒井哲郎は湯浅譲二と組んでオートスライドの作品「レスピューグ」の共同制作を行なった。
湯浅譲二の回想(「プリントアート」17号、1974年)によれば、
……私達は当時始めて(原文ママ)出来たオート・スライドを手にして、造形、音楽が協力してインターメディア的作品を発表することになった。私は駒井さんと組んで、ロベール・ガンゾの詩による「レスピューグ」を制作した。
ガンゾの詩は、部分的に引用すると、
朝の光だ 見よ 私達のもとへ丘が拡がる 鳥達や 花咲く樹々 そして 揺れそよぐ緑の叢にたたえる水と共に お前は やっと女らしく 肌ほてらせて あたかも私に引きしぼった恍惚の弓よ
といったものだった。駒井さんは赤や青、オレンジや黒などの色紙の上に絵具でイメージを画き、それをスライドにし、私は、フルートとピアノをもとにして、テープの逆回転などを利用しながら、日本では殆ど最初といっていい、ミュージック・コンクレートを作った。何日間もの連続徹夜での制作の末に開かれたコンサートの日に、会場の第一生命ホールで私はヘルツ・ノイローゼで倒れ、友人が薬局に走ってくれたりするあわただしさの中に、駒井さんはアルコールを大部入れて現われた。
興奮と不安、冒険への気負いが奇妙に入り混った夜だったが、いわば青春と友情のここちよい夢といった世界がそこにはあった。
(以下略)
『第1回資生堂ギャラリーとそのアーティスト達 没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展』カタログより
~~~~~~~~~~
その後も幾度か湯浅先生の演奏会にうかがうことができました。

『作曲家の個展Ⅱ 一柳慧 × 湯浅譲二』
日時:2017年10月30日19時開演
会場:サントリーホール 大ホール
サントリー芸術財団の主催。毎年日本人作曲家からふたりを選び新作を委嘱して、公演するというもの。
2017年は一柳慧と実験工房のメンバーだった湯浅譲二のお二人でした。
この日、開演に先立ちお二人のトークがありました。右から一柳先生、湯浅先生、聞き手の沼野雄司さん。
湯浅先生は足がご不自由な様子でゆっくりと歩かれて登場、お洒落な服装といい、ぴんと延ばした背筋に社長は「素敵だわね」とため息をついていました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
●本日のお勧め作品は駒井哲郎です。
駒井哲郎《仏国風景》1954年
銅版(ビュラン)
9.7×6.9cm
Ed.50
サインあり
※レゾネNo. 78(美術出版社)
駒井哲郎《フロントピース Mai 斬られた首:「からんどりえ」より》1960年
シュガーアクアチント・エッチング
29.7×24.8cm
Ed.9(レゾネと異なる)
サインあり
※レゾネNo. 124(美術出版社)
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
「生誕100年 駒井哲郎展」カタログ発行:ときの忘れもの
発行日:2022年2月8日
A5変形、56ページ、
出品/駒井哲郎、瀧口修造、恩地孝四郎、長谷川潔、オディロン・ルドン、パウル・クレー
監修:栗田秀法(名古屋大学大学院教授)
執筆:栗田秀法、土渕信彦(瀧口修造研究家)
編集・デザイン:柴田卓
価格:1,540円(税込み)+送料250円
●12月7日(土)は臨時休廊いたします。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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