小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第71回

ブログをご覧のみなさま、本年もどうぞよろしくお願いします。
信じられないことに2025年となりましたね。2000年から25年も経ち、とんでもない未来に来てしまったなぁ、としみじみ思います。
本を取り巻く状況は、個々のお店の浮き沈みはあれど、全体的には年々悪化をしているような気がします。自分の周りでも閉店に次ぐ閉店で、あまり明るい話題は聞きません。2025年も、まだまだ試練は続きそうです。
幸い青いカバはなんとか丸8年を迎えられそうで、ありがたい限りですが、それでも順風満帆とは言い難く、日々瀬戸際の戦いと言ったところ。まぁ、戦えるだけ戦おうという気持ちと、意地でも生き残ってやる!という気持ちとともに、「どうすれば生き残れるのか?」という商人の打算がないまぜになって、新年早々、複雑な思いを抱いています。
個人店は、どんなものでも使えるものは商売に使え、というむかし聞いたありがたい言葉を噛み締めながら、SNSもやるし、雑誌やメディアも取材を受ければやるし、なんなら今年は本が出る予定です。
月一回太郎次郎社さんのウェブで書いていた「本だけ売ってメシが食えるか」という連載が、大量の新作とともに一冊になります。もちろん書きたくて書いているものなので、一生懸命に作っているのですが、やはりこれも「店の宣伝」という要素はどうしても拭えないのです。純粋な書き手とは違い、店をやっている以上、店主のすべての行動が店の行動になるし、そこで付くイメージもすべて引き受けるのが商売人。イヤなことはやらないけれど、やれることはなんでもやる。それが店を一日でも長く続けていけるコツなのではないか、と思います。

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先日ひさしぶりに有楽町の三省堂さんに行きました。夜の時間帯で、それなりにお客様もいたようでしたが、全盛期の混みっぷりを知っている身としては、やはり少しさみしい気がするものです。子どもが絵本コーナーで本を選んでいる間に近くの学習参考書コーナーで、目にした一冊。
『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』
2023年にめちゃくちゃ売れた本だったので、ご存知の方も多いと思いますが、恥ずかしながらわたしは初めて現物を見ました。ダイヤモンド社が学習参考書を出しているのも少しびっくりでしたが、自分がこれだけ売れた本を知らなかったということにも衝撃を受けました。普段本屋に行かないわけではなく、そこそこ通っているはずなのに、やはり見たい場所しか見ていないのだなぁと痛感しました。そうして見たい場所だけの情報だけ見ているようでは、本屋として、本を売るプロとして失格では?と思ったのです。
そうした気持ちで、2024年のベストセラーを眺めて、大半が知っている本だったので安心したのですが、これは今年のベストセラーに小説が多かったからでしょう。来年はどんなジャンルのどんな本が来てもいいように、本屋で全部の売場をまわり、いっぱい本をめくろう、と思います。
あ、めくるだけでなく、ちゃんと買います。
というわけで、2025年もどうぞよろしくお願いします。

(おくに たかし)

●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」隔月、奇数月5日の更新です。次回は2025年3月5日です。どうぞお楽しみに。

小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。

●本日のお勧め作品は戸村茂樹です。
tomura-29《野外ノート RozeⅡ》
2017
銅版(ドライポイント)
イメージサイズ:9.6×9.6mm
シートサイズ:196×140mm
Ed.12
サインあり
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●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
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TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
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営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は原則として休廊ですが、企画によっては開廊、営業しています。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。