「ベルギー・アントワープの2人展」
2024年11月24日から12月20日までGallery Art Forumにて

根岸文子


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 2024年の年末にベルギー・アントワープでスペイン人の夫・カルロス ムニィスと2人展を行いました。私たちは、主にスペイン、日本で活動をしておりますが、お誘いをいただいて、今回初めてベルギーで展覧会を行うことになりました。私は、スペインに来てからもう30年以上経ちますが、他のヨーロッパの国にはあまり出かけたことがなく、もちろんベルギーも未開の地でした。元々、スペインとベルギーは歴史的に関係の深いところで、特に16世紀ベルギーは世界一の大帝国となったスペインの支配下にあり、ヨーロッパの北で盛り上がるプロテスタント運動により戦いが激しくなっていった場所でもあります。そんな話も、もう約5世紀前の話ですが、ベルギーについて感じたことは、あれ?スペインのどっかの街みたい?と何か外国ではない様な、そんな感じがする国なのです。特にベルギーの首都ブリュッセルはヨーロッパ共同体の中心でもあり、ヨーロッパ中、そして世界中から人が集まる街、素晴らしいアールヌーボーの近代建築に囲まれた可愛らしい街、フラミッシュ、フランス語、英語、時にはスペイン語が飛び交う親しみやすい街です。そのブリュッセルから車で約1時間のところにあるのがアントワープの街です。スヘルデ川沿いにある大きな湾口都市としても知られています。欧州ではロッテルダムに次ぐ大きな港だそうです。そしてそのアントワープの古い街には小さい時見ていた漫画・フランダースの犬の主人公ネロがルーベンスの絵を見ながら眠るように亡くなっていく大聖堂があります。商業の街、産業の街、工芸の街、アートの街として知られる小さな可愛らしい旧市街を持った街です。

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 16世紀 ここ、スヘルデ川の港町には世界中から人や物が集まり商業、産業で栄えました。そして物ばかりでなく、当時の新しい知識、新しい考え方、いろいろな都市の情報、医学、薬草なども集まった場所です。大切な知識や情報はここで編集され本となり、時には密に扱われました。そんなアントワープには、世界遺産でもあるプランタン・モレトゥス印刷博物館があります。印刷所というよりはモレトゥス家の大豪邸という感じの建物です。16世紀アントワープには数多くの印刷所が作られました。その中で、彼は世界最大の国・スペイン王国のフェリペ二世の御用達印刷業者になり世界で最も大きく重要な印刷所となって行きました。昔ながらの印刷システム、そして印刷本ができることで発展していった銅版画の工房などが見学出来ます。ここで印刷された有名な本の中にはプロテスタント運動のはじまるヨーロッパで危機を感じるスペイン国王フェリペ2世が作らせた他言語版聖書などが挙げられます。16世紀当時の学問、いろいろな所からやってくる新たな知識や情報、時には、あからさまには語れなかった情報、知識、サイエンスなどが集まった場所なんだなぁと思うとたまらない興奮に駆られる場所でもあります。スペインと違ってお天気は悪め、家の中にこもって何かをしたくなる場所です。こんな場所で多くの人がいろいろな研究に励んだことでしょう。              
 私たちの展覧会を行ったGallery ART-FORUMは、そんな旧市街とは全く違った、港側にあります。最近急速な都市開発が行われている地区にあります。

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 すごく目立つのは、著名な女性建築家ザハ・ハディドのアントワープ港湾局の建物です。旧市街からは離れたところにありますが、町はずれに突然あるびっくりする建物です。

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 そんなアントワープの新地区に画廊はありました。一歩外に出て、ちょっと歩くと個人のヨットが停まる港があり、古い倉庫街であった街並みには新しい港を眺められるレストランが立ち並んでいます。旧市街を忘れて海辺を散歩しているような気持ちを味わえる地域です。

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古い煉瓦造りの元倉庫だった建物の細い急な階段を上がっていくと画廊があります。世界からのいろいろな物が集まってきた港町ながらの雰囲気です。画廊の主はMS ANNE-MIEさんそしてスタッフであり音楽家でもあるMR JEROENさんが私たちのお世話をしてくれました。外からの光が大きな窓から入ってくる白い壁の明るい空間の中に、私たちの作品が並べられました。パッと、明るく広がっていくような活気のある空間になっていました。オープニングでは、スタッフのJEROENさんの演奏、シャンパン、などで現地の方々と楽しい交流ができました。2024年最後のわたしたちの大イベントとなりました。
もう2025年に入りました。来年同様、今年もどうぞよろしくお願いいたします。皆さんにとって良い年になりますように。

(ねぎし ふみこ)

■根岸文子 Fumiko NEGISHI
1970年東京生まれ。1993年女子美術大学絵画科版画コース卒業後、スペインに渡る。スペイン美術大学の版画工房で学ぶ。スペイン国内版画展で新人賞、モハカ絵画奨学コース(スペイン)等を受ける。99、01、04、07、09年ときの忘れもので個展。02年エガン画廊(マドリッド)で個展、またマドリッド国際アートフェアに同画廊より出展、GENERACION 2002、2005グループ展に参加(カッハマドリッド)。06年ギャラリーすどうで二人展開催。2016 在西日本大使邸で個展。2017スペイン・バレンシア市 Galeria cuatro、2019スペイン・マドリッド市 Galeria HG Contemporary で個展。KIMONO-JOYA展へアーティストとして、また企画に参加している。日本と西洋を結ぶ国際的なアーティストが日本の羽織を題材に制作した作品の展覧会であり、2015年スペイン・バヤドリード市、Palacio de Pimentel、2019年在日スペイン大使館などでの展覧会を展開している

●本日のお勧め作品は根岸文子です。
negishi_83《行く川の流れIV》
2021年
絹にアクリル画
27x22cm
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。


◆画廊では「30周年目前 新春・画廊コレクション展」を開催しています。
会期:2025年1月28日(火)~2月1日(土)
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出品作品の詳細は1月26日ブログに掲載しました。特別価格の公開は一週間限定です(2月1日には削除します)。
おかげさまで開始早々ご注文が相次ぎ、担当の松下は急遽倉庫に行って追加作品を探してくるとのことです。どうぞ掘り出しものにご期待ください。

●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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