杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第111回

考古学者

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そういえば、小さい頃になりたかった職業の一つに、考古学者がありました。
その頃はテレビでマヤ文明やらエジプト文明やらの研究をしたり、何もありそうにない化石の採掘現場に突如現れたカケラから、大きな想像を膨らませることのできる職業に、例えようのない興味と大きな憧れがありました。

そんな過去のものを発見し、想像し、あるいは仮説を創造していく職業から、現在に仮説を立てて、未来のものを創造していく建築家という職業に就いたわけですが、いざ現場で地下が掘られた景色が目の前に現れてくると、それはかつてテレビで見た、考古学者が採掘現場で働いているものと同じではないかと、その光景がデジャブとして現れました。

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地中熱のために地下300mまで掘られたパイプが集まる機械は、埋まっていた宝箱のようにも見えるし、地下のパワーを吸い取る何かにも見えなくもない。

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配管の位置を示したピンク色のスプレーは、ナスカの地上絵のようにも見えなくはない。

これから空に向かって建てていく前に、地下に刻まれた記憶を少しだけ掘り起こして、それを受け継ぎながら、≪これから≫を作っているようにも見えます。なんとも不思議な気持ちです。

もうすぐ地下のコンクリート工事が始まります。
最近は毎日のようにマウンテンバイクで現場に通いますが、何も起きていない週末でも、些細な何かが進展しているような錯覚を感じています。

すぎやま こういちろう

杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

●本日のお勧め作品は杉山幸一郎です。
sugiyama-lf88《Line & Fill 88》
2021
紙に油彩
42.0×60.0cm
Signed
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。


*画廊亭主敬白
本日6月10日はガウディの命日です。
ブログでは毎月16日更新で、スペイン在住の建築家・丹下敏明さんの「ガウディの街バルセロナより」を連載しています。

アントニ・ガウディ(カタルーニャ語 :Antoni Gaudi i Cornet [ənˈtoni gəu̯ˈdi i kuɾˈnɛt]、洗礼名:Antoni Placid Guillem Gaudi i Cornet、1852年6月25日 - 1926年6月10日)

<ライトは生涯に七百五十の設計をこなしたといわれ、ル・コルビュジェは百の建築作品を実現させ、百七十のプロジェクトを残し、六十五の都市計画を立案し、二十の家具、五十の著作を発表したほか、四百の絵画、七の壁画、四十のタピストリー、五十の彫刻作品を残している。これに対してガウディは、二十五の建築作品、十のインテリア、二十五のプロジェクト、五の都市計画的提案、百の家具デザイン、出版物に至っては二稿というものである。
この数字は建築家としての職業年が、ガウディは50年、ル・コルビュジェは60年、ライトに至っては70年以上という事にも関係するが、実のところはガウディの置かれていた時代と地方が、いくらかずれていたためであり、ましてやこれまで少なからぬ論者によって語られてきたガウディの工業的手法を理由としない。ガウディはこの書で見てきたように明らかに、現代人としての思考を持ち、基本的な現代技術文明を見通していた。
ガウディが死んで既に四半世紀を経ている。この間、彼の残した技術的課題のうちの多くのものは、すでに解決されている。ところがガウディの築いた空間は古典となり、時間を乗り越え、その狂気じみた誠意と熱意は我々の前にいまだ色あせることは無い。ましてやポスト・モダン建築にいる現在の我々にとって、改めて見定められるべきである。
この書は失われ、歪められていくであろうガウディの建築と人生を、半世紀経た時点で、カトリック信者でないものによって書かれた。
そして題名が示す通り、”ガウディ論”ではなく、”ガウディの生涯”であるのは氾濫する資料を整理して、なるべく記録性を高める事に努力したいという意思表示であり、また正直には筆者の建築と人生に対する経験の浅さからの逃げでもある。その意味では将来”ガウディ論”が書き上げられるときが来るかもしれないが、むしろ”ガウディ論”はこれからの建築や人生に対する姿勢や行動の中に書き上げられるべきであるかもしれない。
また、この書が同様の状況にある建築を志す人々の役に立てば、筆者の最上の喜びである。
ガウディからのメッセージがここにある。
『本物の建築をつくりたいものは、特別な才能を持っているだけでは駄目なのです。丁度大きな山へ登ろうとするものがするようにしなければならないのです。極めて高い頂上へ達するためには不可欠であること、つまり、おのずの力量を知り、訓練をし、犠牲すら払いなさい。』
”ガウディの生涯”
彰国社、1978年刊
後書きより
(20230203/丹下敏明 さんのfacebookより)

◆「開廊30周年記念 塩見允枝子×フルクサス from 塩見コレクション
Part 1 2025年6月5日(木)~6月14日(土)
Part 2 2025年6月18日(水)~6月28日(土)
※6月17日(火)に展示替え、日・月・祝日休廊
塩見允枝子×フルクサス案内状 表面ときの忘れものは開廊30周年を迎えました。記念展として「塩見允枝子×フルクサス from 塩見コレクション」展を開催しています。

松本莞『父、松本竣介
2025年6月8日東京新聞に昭和初期から戦後活躍 早世の洋画家 松本竣介の生き様 新宿在住次男・莞さん 逸話まとめ出版という大きな記事が掲載されました。
また『美術手帖』2025年7月号にも中島美緒さんの書評「家庭から見た戦時の画家の姿」が掲載されています。
ときの忘れものは松本竣介の作品を多数所蔵しています。
松本莞さんのサインカード付『父、松本竣介』(みすず書房刊)を特別頒布するとともに、年間を通して竣介関連の展示、ギャラリートーク他を開催してまいります。詳細は1月18日ブログをお読みください。
今まで開催してきた「松本竣介展」のカタログ5冊も併せてご購読ください。
1200-hyoshi著者・松本莞
父、松本竣介
発行:みすず書房
判型:A5変判(200×148mm)・上製
頁数:368頁+カラー口絵16頁
定価:4,400円(税込)+梱包送料650円

●ときの忘れものの建築空間(設計:阿部勤)についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は原則として休廊ですが、企画によっては開廊、営業しています。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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中庭・側面