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井桁裕子のエッセイ−私の人形制作
第46回 「人形遣いの魔法」 2013年4月20日
3/20〜24の日程で、阿佐ヶ谷ザムザにて人形劇「マダムエドワルダ」(原作/ジョルジュ・バタイユ、演出/大岡淳)の公演があり、観に行きました。
http://www.kotensinyaku.jp/archives/2013/03/006140.html
江戸糸あやつり人形座を中心に、「手操り人形」の黒谷都さん、元「ク・ナウカ」の美加里さんという出演陣の魅力に加え、人形制作はご自身が人形遣いでもある北井あけみさんが参加とのことで、とても楽しみにしていたのです。ぜひとも再演をという声も多く聞かれる、充実した舞台でした。
http://madame-edwarda.com/#np-キャスト
その後4月12日、黒谷さんにお誘い頂き、西武線・一橋学園駅のそばにある「江戸糸あやつり人形座」のスタジオ見学にもお邪魔しました。
参加者は黒谷さん、北井あけみさん(「ヂバドロ・アノ」)、松沢香代さん、長井望美さん(「ネンネンネムネム!ねむり鳥」)の総勢5人、私以外は皆さん人形劇の方達です。
敬愛する前衛人形劇の方達とご一緒に、代々続く歴史ある人形劇一座をお訪ねする、ということで、私は実に心躍りながらの参加でした。
スタジオでは結城一糸さん、民子さん、敬太さん、海老沢栄さんの皆様に暖かく迎えていただきました。
糸あやつりは人形に結ばれた木綿糸を「手板」と呼ばれる板につないで上から見下ろしながら操演します。糸が20本くらいあり、これをもってささやかな動きから情感まで表現するのは見るからに大変なことなのでした。
人形の素材は、和紙の張り子に「木の粘土(桐塑と似た市販品)」とのことでしたが、服に隠れた腕や脚には竹が中空になっているのがそのままうまく使われていたりして、実に興味深かったです。
このとき、あまりに楽しみ過ぎていたため写真を撮らせてもらうのをすっかり忘れていました。ウェブとツイッターから転載させて頂きます。




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2009年から始まった映画「ハーメルン」での人形制作は、黒谷さんにいろいろとご教示いただきながらの作業でした。「繊細過ぎてこわい〜!壊しそう!」と黒谷さんからはよく言われていました。稽古でも本番で遣うものをずっと酷使するので、壊れたらすぐ直して使うというものなのです。あまり丁寧に作られていると遠慮を感じて、壊すほど力強くは扱えなくなってしまうということでしょう。しかし、私の手の中では素材の集積でしかなかった人形が、柔らかく呼吸を始め、何か幼い人柄のようなものさえにじませながら陽気に踊り出すのを観たのは、まさに至福の時でした。
実際に舞台で動かす人形は、あまりキレイに作り込んでいない方が面白いようです。動きそうもないモノが、息づいて立ち上がり歩き出す奇跡、そこがいいわけです。
しかしそれを二次的に写真に撮った場合は、舞台で人形が放つオーラがなかなか出てきません。
レンズを通して止まった画像の中では後ろに居る人形遣いのほうが命の輝きを見せてしまい、魂を持ったかに見えた人形の魔法が解けてしまうのです。
人とモノとの不思議な関係は、それに反応する感受性の違いにも個性があるし、解明できない謎です。

2月のブログに書きましたが、去る1月に、モデルになって頂いた舞踏家の皆さんと作品とを一緒に写真撮影をしていただきました。
その、齊藤哲也さんに撮影してもらった舞踏3部作の「写真作品」はまだ未発表となっています。
撮影は実に面白く、自分の作った物が何らかの形で人と関わるというのは本当に楽しい!とつくづく思いました。
私は自分の作品を彫刻と呼んでしまうと面白みに欠ける気がしていたのですが、人とのからみを演じるものは「人形」と呼ぶのが妥当なのだと思うので、「彫刻」という呼び方への躊躇はそこにあったのかもしれないとも思ったのでした。
舞台で使うものであれば造形的にはこんなに細密に作る必要は無く、むしろ手をかけすぎないで素材感を活かし、人との対比を見せた方がいいのですが、写真に撮る場合はその限りではないということも思いました。
ただ、もともとは作品だけで成立するように作ったものなので、こういった二次的な表現をどう考えたらいいのか、当事者もまだわかっていません。
とても面白いものなのですが、それは人形とモデルの記録でしかないのかもしれません。あるいは写真の中で人物の輝きが勝るため、私の作品は色を失った小道具にしか見えないかもしれません。
新しい事は、名前も無く、どう存在するかもわからない、とても曖昧に始まる事なのでした。
そして次の作品についても、どういう形で人との関わりを作っていくか、またそもそもその方向でいいのか?いろいろと考えている今日この頃です。

(いげたひろこ)

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