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杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」
第69回 2021年12月10日
建物の芯

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ここスイスでは雪が積もり始めました。
寒くなってくると、屋内でゆっくりと時間を過ごす機会が増えてきます。
最近はふと、「建物の芯」というものを考えていました。

ここで話す建物の芯とは言ってみれば、ある建物を訪れた後にそれを振り返って、頭(考え)とお腹(感覚)に残っている残像の、その真ん中を取り出したもの。という感じでしょうか。
それを考えるきっかけになったのは、友人が送ってくれた作品集をパラパラとめくっている時でした。

例えば、自分はどういう建物を設計したいのだろう、どういうものをこの世界に生み出したいのだろうと考えると、それは、
・写真でしか見たことないけれど、そのために遠くても絶対に訪れてみたい。と思わせる魅力があるもの。
・建築を訪れた後の心に「いろいろよくできていたなぁという全体像」ではなく「よくわからなかったけれど、どういうわけか強い印象が残った」というもの。
その両方とも、僕にとっては芯のある建物。だと言えます。

具体的に建物の芯というのは、ある建物の様々な空間、場所に共通して根底に流れている一つの考え方かもしれないし、もっと単純に、建築の構成、建築ヴォリュームのあり方にあるかもしれません。
考え方であれ、カタチの作り方であれ、最終的に共通する芯を残していく。
その芯を顕にするために削り出していく作業が、建築空間を体験するということではないか。と思い始めました。

抽象的に言えば、いくつかの数字を眺めていきながら、共通する約数(公約数)を探していく。という感じかもしれません。ここでの公約数は、建築の芯、その建築がそうあるべき姿。に置き換えられます。

約数を知るには、いくつかの数字から芯を見つけ、削り取らなくてはいけない。
その作業が、建築の印象を残していくのだと思っています。
すぎやま こういちろう

杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ピーターメルクリ スタジオ)に留学。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントーにて研修、2021年まで同アトリエ勤務。
2021年秋からスイス連邦工科大学デザインアシスタント。建築設計事務所atelier tsu。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。



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