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杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」
第75回 2022年06月10日
最終講評会

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スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)の最終講評会が終わりました。
一年生後期の設計課題では、バルセロナのポブレノウ(Poblenou)地区の一区画丸ごと、都市住宅を計画します。一区画と言っても113mx113m とかなり大きく、小さな街を作るイメージです。ここに、アトリエ兼住居を設計していきます。

覚えている限りで僕自身の学生時代を振り返ると、一年時には製図の仕方を、そして照明を作ったり、空間構成を考えたりという課題を行なっていたと思います。初めて住宅設計の課題をやったのは、二年生になってからです。

一方でETHでは初学期に住宅課題を、次の学期には一万平米超えの敷地を扱います。学生にしてみれば、建築設計のイロハを学ぶ傍らで、かなり労力をかけて考えていかなければできない規模の課題です。それでも学生たちは課題の要求に応えて、建築を始めたばかりとは思えない思考の密度で、新鮮なアイデアを提案してきます。

今ではかなり流行が落ち着いてきたものの、学期が始まった当初はまだコロナの影響下で、バルセロナへ実際に赴き、敷地を見ることが難しい状況にありました。そんな中、バルセロナ市が提供している年代ごとの地図を眺め、歴史を紐解き、スイスとの気候の違いを考慮し、またバルセロナ大学の教授を招いてポブレノウについてのレクチャーをしてもらいながら、できる限りの情報をかき集めて、課題に取り組んでいきました。

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地区全体の敷地模型をCADコースでモデリングして、3Dプリントした巨大な都市模型です。これは、課題を理解する上で大きな助けになりました。こうして早い段階からモデリング、3Dプリントに慣れていくことで、建築家以外の道への可能性も自然と開けていきます。建築学科だからといって、全員が建築家を目指さなければいけないわけではありません。

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各スタジオは学生が約20名。15のスタジオがあるので、学年全体で300名近い学生がいます。いくつか似ている設計があっても構わないと思うのだけれど、それぞれのスタジオで敷地の条件が違うし、同じ敷地でも学生たちは別々のものを毎週のエスキスに準備してきました。

そんなやる気のある学生たちにスイス建築は支えられているんだと実感しています。

(すぎやま こういちろう)

杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ピーターメルクリ スタジオ)に留学。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントーにて研修、2021年まで同アトリエ勤務。
2021年秋からスイス連邦工科大学デザインアシスタント。建築設計事務所atelier tsu。
2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展 スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。


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