ヒマな画廊も土曜日ともなると結構来客が続く。昨日も公立美術館の学芸員さんが二人来廊された。お二人とも女性である。おそらく全国の学芸員の半数は女性ではないか。
 今でこそ館長クラスに女性は多くはないが、あと10年もしたら、女性館長が全国を席捲するに違いない。画廊の世界も女性が牛耳っている場面が多い。
 話変わって、「彷書月刊」は、古本屋さんと古本好きのためにある雑誌である。特集形式なので、面白い号が出ると買っていた。巻末には古本屋の目録がずらっと掲載されているので古本情報の収集にはもってこいだ。
 発売されたばかりの10月号の特集は『画廊回遊』。
彷書月刊表紙彷書月刊目次 8月のはじめだったか突然、編集部から原稿依頼の手紙がきた。思い当たるふしはなかったが、編集部の若い女性(といってもお会いしたことはない)が、前から私どもの展覧会を注目してくれていたらしい、おそらくこのブログも読まれていたに違いない。
 例によって軽薄にも「書きます」なんて言ってしまったのだが、雑用に追われ、締め切りぎりぎりになって書き出す始末。何とかまとめて編集部に送った。
 先日、その10月号が届いたのだが、他の執筆者の皆さんの熱気にたじろいだ。私はのほほんと昔話をしただけ、売上げに響かねばいいが・・・・

●目次から特集分を書き出してみます。
岡崎球子(岡崎球子画廊)/インタビュー
菊畑茂久馬(画家)/南画廊のこと
三田晴夫(美術評論家)/私の歩いた画廊
宮田有香(国立新美術館研究補佐員)/内科画廊1963-1967
蝦名則(えびな書店)/佐谷さんのこと
沢田妙(イラストレーター)/ルポ 匡画廊(千葉県・佐倉)にて、野原の茶展
種村品麻(スパンアートギャラリー)/ギャラリーライフー画廊春秋からスパンアートギャラリーへ
内藤巽(ヴァニラ画廊)/ヴァニラのオルタナティブ
綿貫不二夫(ときの忘れもの)/画廊亭主のつぶやき
猪羽允(いのは画廊)/「金」と無縁で!!
言水ヘリオ(言水編集室)/情報誌をとおして画廊とかかわる
板橋正子(土日画廊)/彫刻家鈴木正治さんのこと

本屋さんで見たら、どうぞ買ってください。ときの忘れものにも置いてあります。735円です。

 執筆者12人のうち、画廊主(私は髪結いの亭主ですが)は6人。今流行の(といって悪ければ画商界の先端を行く)所は一軒もない。私のようないい加減な所は別として、それぞれ独自の美意識に基く好企画を打っている、いかにも「彷書月刊」らしい人選です。
 早速読んだのだが、驚いたのは、種村さん(スパンアートギャラリー)、内藤さん(ヴァニラ画廊)、猪羽さん(いのは画廊)など、名にし負う個性派のご主人の文章に、ほとんど固有名詞(人名)が出てこない。
 因みに、私めの駄文は人名だらけで、磯崎新小野隆生細江英公瑛九恩地孝四郎駒井哲郎久保貞次郎井上房一郎ブルーノ・タウト土方定一池田満寿夫滝川太郎オノサト・トシノブ靉嘔志水楠男菅井汲瀬木慎一山口長男北園克衛森原智子川上澄生坂本一敏イブ・クラインデュシャン、と僅か2ページに24人も登場させている。
 それに比べて、種村さんの文章に登場するのは奥様の幸子さんと、父君の種村季弘さん(私大ファンです)の二人のみ。
内藤さんは、人名ゼロ。
猪羽さんは、村上隆、奈良美智をいま注目をされている作家の例として挙げているだけで、画廊の作家は一人も登場させていない。固有名詞なしでご自分の画廊の志をきちんと述べておられる。
~ん。考えてしまいましたね。
 私なんざ、作家名を挙げなければ、自分の画廊のことなど一行も語れやしない。
それはともかく、他にも、画家や遺族、顧客らが今や伝説となりつつある南画廊などを回想している。
 おせっかいながら、そそっかしい某氏が出席したという佐谷和彦さんを偲ぶ会が開催されたのはパレスホテルです。活字は一人歩きするので、訂正まで。