先月、私どもの近くにある画廊で、関根伸夫先生の個展が開催された。
私にとっては現代美術とは何かを教えてくれた師匠なので、オープニングに出かけ旧交を暖めたのだが、「日本はもう駄目だよ、オレは中国に移住することにした」というので、ちょっと驚いた。
「年に2枚の絵」で広いアトリエを貸してくれる奇特な人が出てきて、本格的に中国を拠点にする気になったらしい。
関根さんらしいといえばそうなのだが、「やはり日本は駄目か」と妙に納得しました。

先月8日、小説家の立松和平さんが亡くなった。私より二つも若い。その早世(といってもいい)が惜しまれます。
私の家にはテレビがないので良く知りませんが、お茶の間でも親しまれていたようですね。

私は昔、立松さんの本のお手伝いをしたことがある。
恐らく、最初期の頃だと思うが国文社から『今も時だ』という本が出版された(1978年8月15日初版発行)。
立松和平 今も時だ
その担当編集者が私の高崎高校の同級生だった。
私はご存知の通りマンドリンに明け暮れていたが、小柄な田村雅之は切っ先鋭い剣士で剣道部だった。
硬派とばかり思っていた田村が詩を書き、文学系の出版社に勤めるなんて思いもかけなかった。
ある日、田村が当時渋谷桜ヶ丘にあった現代版画センターを「今度、初めて立松和平さんという人の本を出すんだ。お前のところの版画を表紙に使わせてくれ。」といって訪ねてきた。
立松さんと相談したのだろう、作家にとって二冊目の表紙には関根伸夫の「月をよぶ」というシルクスクリーンが選ばれた。タイトルは例によって絵の通りでもあるのだが、また運を呼び込む含意もある。田村はその後、砂子屋書房を起こし、詩や短歌の本屋として大活躍している。2006年の日和崎尊夫展のギャラリートークの講師もつとめてくれた。

立松さんと関根さんのお二人を会わせた記憶が曖昧なのだが、1983年8月に宇都宮の大谷石の地下大空間で開催した「アンディ・ウォーホル展」ではお二人に協力していただいた。
立松さんのご冥福を祈る次第です。

関根月を呼ぶ
関根伸夫「月をよぶ」
1975年 シルクスクリーン
53×35cm Ed.75 サインあり

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから


◆梅の花がほころび、青山墓地の桜の開花が待たれるこの頃ですが、ときの忘れものではマルセル・デュシャンの「大ガラス」連作をはじめ、瑛九駒井哲郎クレーカンディンスキー草間彌生日和崎尊夫磯辺行久オノサト・トシノブハインリッヒ・フォーゲラー、アンドレ・マッソン、山村耕花、安藤忠雄、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー、森下慶三などを展示中です。
デュシャン6
春の展示
2010年3月10日[水]―3月18日[木] 12:00-19:00 *日・月曜、祝日休廊

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから