企画展の開催中は<会期中無休>としてから徐々に休日に来廊される方も増えてきました。
なにより東京以外の遠方からいらっしゃる方とお会いできるのが嬉しい。
昨日はギャラリーは三浦がつめて、社長と亭主は倉庫で終日、次回企画展「S氏コレクション 駒井哲郎 Part Ⅱ」の準備に追われました。
駒井哲郎の<異端のコレクター>Sさんには遠路倉庫まで来ていただき、ご自身のコレクションの中から、今回展示する25点ほどの作品を亭主と相談しながらセレクション。
亭主も駒井哲郎に関しては一家言持つが、やはり30数年のオタク・コレクターには敵わない。たいへん勉強になりました。
面白かったのは、Sさんがときの忘れものの倉庫を、都心の画廊によくある作品がぎっしり詰まったトランクルームのような場所と思っていたらしいこと。なにせ亭主は不動産だけは悪運が強い! わが倉庫は古式ゆかしい神社と某宗教団体の本殿(?)の間に位置し、直ぐ隣は結構お洒落なラブホテルという、まことに霊験あらたか、神とエロスに祝福された場所です。
貧乏画廊なのできっと狭い穴倉のような倉庫と思っていたら、あにはからんや意外にのんびりお茶もできる空間だったので(大事な作品を預けている)Sさんもすっかり安心したらしい(笑)。

さて、ときの忘れもので開催中の「マン・レイと宮脇愛子展」には、宮脇がマン・レイから贈られた作品、写真、オブジェ、カタログ、手紙などを展示しています。
中でも美しいのが折本仕立の「回転扉(Pain Peint)」です。

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マン・レイ「回転扉(Pain Peint)
1916/1973年
Alexandre Iolas出版
H24.0×W17.0×D3.0cm
19ページ
図版:13点(シルク10点)掲載
中扉にジュリエット・マン・レイのサインと宮脇愛子への献辞あり
付属ポスター:82.0×48.0cm

パンパン
 はじめてふみ込んだマン・レイのアトリエ、それは不思議な空間であった。
 昔の馬小屋を改造した十メートルもあろうかと思われるアトリエの高い天井のちょうど中間ぐらいのところにテント風の布が張ってあって、隅の方に、ハンガーのオブジェがたくさん重なりあいながらかかっていた。私はものめずらしげにキョロキョロとあちこち眺めまわしていた。
 かけられないハンガー。
「ほら、ハンガーもあんなにもつれあっていたらとうてい服なんかかけられないだろう――」いつのまにかマン・レイが傍で、いたずらっぽい中学生のような表情をしながら、私に説明してくれる。
 高い壁のところに旧式スピーカーが真青な空の中にはめ込まれている油彩がかかっていた。そのスピーカーからはほんとうに音が出てくるのだった。
「しゃべる絵ってのはどうだい!?」マン・レイは興味しんしんの私にむかって、次々と話かかけてくれる。私はこのアトリエの雰囲気と、マン・レイの魅力にすっかりとらわれてしまった。古い洋だんすの上には、眼の写真の切抜きのついたメトロノームのオブジェや、気味が悪いくらい真青な色をしたバゲット、「パン・パン」(pain peint=ペイントされたパン)の作品がのっていた。
 何と自由な――。
 そういえば「なぜこんなに長くパリに住んでいるの?」と私が尋ねたとき、「そりゃー、自由に暮らせるからさ!」とそくざにマン・レイは答えたのだった。

宮脇愛子『はじめもなく終りもない―ある彫刻家の軌跡』(1991年、岩波書店)より抜粋

上述のごとくマン・レイのアトリエにあった折本仕立ての「回転扉(Pain Peint)」は、刊行されて直ぐの1973年に宮脇愛子に贈られ、今回の展示にも出品されています。

この作品にインスパイアーされ、宮脇愛子がマン・レイへのオマージュとして制作したのが新作エディション、シルクスクリーン入り小冊子『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き)です。
マン・レイへのオマージュ
限定25部
サイズ:18.0x14.5cm
折本形式(蛇腹)、表裏各15ページ、
革装カバー付

宮脇愛子オリジナルドローイング、自筆サイン入り
宮脇愛子が1959年より2010年まで制作したドローイングより厳選のシルクスクリーン13点挿入
(シルクスクリーン刷り:石田了一)
磯崎新撮影・「アトリエのマン・レイと宮脇愛子」カラー写真1点貼り込み
宮脇愛子に贈られたマン・レイ作品の画像貼り込み(印刷)
マン・レイとの交流と、『うつろひ』への宮脇愛子インタビュー DVD(約10分)付
発行:ときの忘れもの
一冊一冊手作りですので、納品は展覧会終了後、順次申し込み順にお送りします。

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◆ときの忘れものは、9月28日(火)~10月16日(土)「マン・レイと宮脇愛子展」を開催しています(会期中無休)。
案内状 編集版_600