銀座と青山の二会場で同時開催した「ナミビア:室内の砂丘 尾形一郎 尾形優写真展」は昨日終了しました。
展覧会について執筆して下さった山口由美さんの文章にあったように、「打ち捨てられた町と封印された土地。地震と津波に襲われ、そして、福島第一原発の事故によって封印された周辺の町」に自然と思いはめぐります。
311から3ヶ月が経ち、被災地の皆さんのご苦労が身にしみるだけに、国政を担う人たちには何とか混迷を脱して復興へのビジョンを提出してもらいたいものです。
Hさんのブログには以下のような感想が綴られていました(Hさん、勝手に引用させていただきます)。
今日の夕方は例によって買い物袋を提げたままときの忘れものに立ち寄る。現在開催中なのは尾形一郎・尾形優の写真展。タイトルの通り、廃屋の中に砂丘が入り込んだイメージは現実離れしているが、実はこれはれっきとした実在する光景。ナミビアの砂漠の中にあるダイヤモンド鉱山で働く幹部のために建てられた邸宅が、ダイヤモンドの枯渇による閉山によって打ち捨てられ、現地人の略奪に遭い剥がされた窓やドアから入り込んだ砂がこのような光景を作り出した。
作品はとにかく非現実的でそのうえ美しい。建物の内部と砂とがカラッカラに乾いているテクスチャは生写真でなければ伝わらないだろうと思う。その一方で、芸術作品としての強度もあり、ただ「凄い景色があったから写しました」だけではない、何の背景知識が無くても伝わってくるメッセージを持ってくる。
今回の展覧会は2会場で開催で、銀座のギャラリーせいほうではもっと大きな作品も展示してあるとか。そちらも見てみたいなぁ。
****************
今回は彫刻専門のギャラリーせいほう さんのご協力で、ときの忘れものでは到底不可能な大作7点の展示が実現できました。
尾形作品のクオリティの高さを広い会場で皆さんに見ていただくことができ、亭主としては大満足です。
最終日に九州から駆けつけてくださったTさんを交え、資生堂パーラーで尾形さんご夫妻、ギャラリーせいほうの田中さんとささやかな打ち上げをいたしました。
今回は、先日の細江英公先生のポートフォリオに続き、ときの忘れものの2つ目のポートフォリオとして20点組にまとめて、青山では発表しました。
展覧会は終わりましたが、(いつも言うことですが)作品はいつでも画廊でご覧になれます。
ただし、7点の大作はさすがに収納の余地がなく、倉庫に保管しますので、ご覧になりたい方は事前にご連絡ください。
さて、本日最終日を迎えた重要な展覧会といえば、町田市立国際版画美術館の駒井哲郎展です。
福原義春コレクションのよる約500点もの駒井作品を前期と後期の二回にわけて展示した大展覧会も本日が最終日です。
亭主はオープニングや講演会など、珍しく3度も町田まで足を運び、初期から晩年までの駒井哲郎作品をじっくりと見ることができました。
規模としては、1980年に東京都美術館(上野)で開催された回顧展に匹敵しますが、印象はまったく異なります。
あのときは蜿蜒と、「黒い作品」が続き、くたびれてしまった。
今回は展示を二期にわけたこともありますが、特に後期の展示には「白と黒の造形」の緊密な作品群の中に華やかな色彩作品(カラー銅版、モノタイプ、水彩)がまるで舞踏会における女性たちのように自然に並べられ、心地よいリズムをつくっていることです。
昨秋の資生堂ギャラリーの駒井哲郎展が色彩作品のみに絞った革命的、ドラマチックな展示だったとすれば、今回の町田の展示は、駒井哲郎の真髄がまさに「銅版」という掌にひらに納まる小世界にあったことを雄弁に物語る展示でした。
明治以来の油彩作品の長い歴史の中で、僅か10cm余りの小画面の中で、駒井哲郎ほど輝くような色彩世界を現出させた作家ははたしていたでしょうか。
亭主の敬愛する瑛九は躍動する色彩の世界を追い求めましたが、駒井哲郎もそれに劣らず、いや生涯を通じて光と闇、禁欲的な表現を追い求めながら、なお内側から噴出する色彩への憧憬を抑えがたく生きた作家だったのではないでしょうか。
従来の駒井哲郎評価に大きな転換をもたらす画期的な展覧会です。
このブログでも植田実さんが連載エッセイ「美術展のおこぼれ」で詳細に論じておられます。
まだの方、お見逃しなく。
昨秋の資生堂ギャラリーの駒井哲郎展も今回の町田の駒井哲郎展も福原コレクションの展示です。
ともに同じ500点ものコレクションを素材として編まれた二冊のカタログ。
駒井哲郎には生前と没後に二度刊行された作品集がありますが、漏れた作品やデータの不詳のものも少なくなく、私たち画商にとっても不便でした。
今回の二冊のカタログの刊行で随分と資料的には充実したデータが駒井ファンに提供されたことになります。
ともにファン必見の美しいカタログです。
二冊ともときの忘れもので扱っていますので、ご注文ください。
駒井哲郎の2冊のカタログ
『駒井哲郎作品展 福原コレクション
生誕90年ー闇と光のあわいに』図録
2010年 資生堂企業文化部発行
29.5x22.5cm 241ページ
収録図版:485点
執筆:堀江敏幸、駒井美子、福原義春、林洋子、清水真砂、福島昌子、
桑原規子、三上豊、横山勝彦、西澤晴美、中島理壽(年譜)
編集協力:桜井裕子、三上豊、綿貫不二夫
『駒井哲郎1920-1976』展カタログ
2011年 東京新聞発行
20.6x20.6cm 304ページ
執筆:福原義春(資生堂名誉会長)、清水真砂(世田谷美術館学芸部長)、滝沢恭司(町田市立国際版画美術館学芸員)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
駒井哲郎の色彩銅版画の傑作2点をご紹介します。

駒井哲郎「黄色い家」
1960年 銅版(カラー)
21.1×15.1cm Ed.10
signed

駒井哲郎「クラブのA」
1958年 銅版(カラー)
21.2×15.1cm Ed.10
signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
展覧会について執筆して下さった山口由美さんの文章にあったように、「打ち捨てられた町と封印された土地。地震と津波に襲われ、そして、福島第一原発の事故によって封印された周辺の町」に自然と思いはめぐります。
311から3ヶ月が経ち、被災地の皆さんのご苦労が身にしみるだけに、国政を担う人たちには何とか混迷を脱して復興へのビジョンを提出してもらいたいものです。
Hさんのブログには以下のような感想が綴られていました(Hさん、勝手に引用させていただきます)。
今日の夕方は例によって買い物袋を提げたままときの忘れものに立ち寄る。現在開催中なのは尾形一郎・尾形優の写真展。タイトルの通り、廃屋の中に砂丘が入り込んだイメージは現実離れしているが、実はこれはれっきとした実在する光景。ナミビアの砂漠の中にあるダイヤモンド鉱山で働く幹部のために建てられた邸宅が、ダイヤモンドの枯渇による閉山によって打ち捨てられ、現地人の略奪に遭い剥がされた窓やドアから入り込んだ砂がこのような光景を作り出した。
作品はとにかく非現実的でそのうえ美しい。建物の内部と砂とがカラッカラに乾いているテクスチャは生写真でなければ伝わらないだろうと思う。その一方で、芸術作品としての強度もあり、ただ「凄い景色があったから写しました」だけではない、何の背景知識が無くても伝わってくるメッセージを持ってくる。
今回の展覧会は2会場で開催で、銀座のギャラリーせいほうではもっと大きな作品も展示してあるとか。そちらも見てみたいなぁ。
****************
今回は彫刻専門のギャラリーせいほう さんのご協力で、ときの忘れものでは到底不可能な大作7点の展示が実現できました。
尾形作品のクオリティの高さを広い会場で皆さんに見ていただくことができ、亭主としては大満足です。
最終日に九州から駆けつけてくださったTさんを交え、資生堂パーラーで尾形さんご夫妻、ギャラリーせいほうの田中さんとささやかな打ち上げをいたしました。
今回は、先日の細江英公先生のポートフォリオに続き、ときの忘れものの2つ目のポートフォリオとして20点組にまとめて、青山では発表しました。
展覧会は終わりましたが、(いつも言うことですが)作品はいつでも画廊でご覧になれます。
ただし、7点の大作はさすがに収納の余地がなく、倉庫に保管しますので、ご覧になりたい方は事前にご連絡ください。
さて、本日最終日を迎えた重要な展覧会といえば、町田市立国際版画美術館の駒井哲郎展です。
福原義春コレクションのよる約500点もの駒井作品を前期と後期の二回にわけて展示した大展覧会も本日が最終日です。
亭主はオープニングや講演会など、珍しく3度も町田まで足を運び、初期から晩年までの駒井哲郎作品をじっくりと見ることができました。
規模としては、1980年に東京都美術館(上野)で開催された回顧展に匹敵しますが、印象はまったく異なります。
あのときは蜿蜒と、「黒い作品」が続き、くたびれてしまった。
今回は展示を二期にわけたこともありますが、特に後期の展示には「白と黒の造形」の緊密な作品群の中に華やかな色彩作品(カラー銅版、モノタイプ、水彩)がまるで舞踏会における女性たちのように自然に並べられ、心地よいリズムをつくっていることです。
昨秋の資生堂ギャラリーの駒井哲郎展が色彩作品のみに絞った革命的、ドラマチックな展示だったとすれば、今回の町田の展示は、駒井哲郎の真髄がまさに「銅版」という掌にひらに納まる小世界にあったことを雄弁に物語る展示でした。
明治以来の油彩作品の長い歴史の中で、僅か10cm余りの小画面の中で、駒井哲郎ほど輝くような色彩世界を現出させた作家ははたしていたでしょうか。
亭主の敬愛する瑛九は躍動する色彩の世界を追い求めましたが、駒井哲郎もそれに劣らず、いや生涯を通じて光と闇、禁欲的な表現を追い求めながら、なお内側から噴出する色彩への憧憬を抑えがたく生きた作家だったのではないでしょうか。
従来の駒井哲郎評価に大きな転換をもたらす画期的な展覧会です。
このブログでも植田実さんが連載エッセイ「美術展のおこぼれ」で詳細に論じておられます。
まだの方、お見逃しなく。
昨秋の資生堂ギャラリーの駒井哲郎展も今回の町田の駒井哲郎展も福原コレクションの展示です。
ともに同じ500点ものコレクションを素材として編まれた二冊のカタログ。
駒井哲郎には生前と没後に二度刊行された作品集がありますが、漏れた作品やデータの不詳のものも少なくなく、私たち画商にとっても不便でした。
今回の二冊のカタログの刊行で随分と資料的には充実したデータが駒井ファンに提供されたことになります。
ともにファン必見の美しいカタログです。
二冊ともときの忘れもので扱っていますので、ご注文ください。
駒井哲郎の2冊のカタログ
『駒井哲郎作品展 福原コレクション生誕90年ー闇と光のあわいに』図録
2010年 資生堂企業文化部発行
29.5x22.5cm 241ページ
収録図版:485点
執筆:堀江敏幸、駒井美子、福原義春、林洋子、清水真砂、福島昌子、
桑原規子、三上豊、横山勝彦、西澤晴美、中島理壽(年譜)
編集協力:桜井裕子、三上豊、綿貫不二夫
『駒井哲郎1920-1976』展カタログ2011年 東京新聞発行
20.6x20.6cm 304ページ
執筆:福原義春(資生堂名誉会長)、清水真砂(世田谷美術館学芸部長)、滝沢恭司(町田市立国際版画美術館学芸員)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
駒井哲郎の色彩銅版画の傑作2点をご紹介します。

駒井哲郎「黄色い家」
1960年 銅版(カラー)
21.1×15.1cm Ed.10
signed

駒井哲郎「クラブのA」
1958年 銅版(カラー)
21.2×15.1cm Ed.10
signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
コメント