浜田宏司の展覧会ナナメ読み No.2「第4回恵比寿映像祭」
【展覧会ナナメ読み No.02】
展覧会タイトル:第4回恵比寿映像祭――映像のフィジカル
会場:東京都写真美術館
会期:2月10日(金)~ 2月26日(日)
恵比寿映像祭は、東京都写真美術館を主会場にして周辺のギャラリーや文化施設内で展開される東京都が主催する文化発進プロジェクトです。予定されているプログラムは映像作品以外にも、写真、メディアアート、イベント、トークセッション、と多岐に渡ります。今回はジョナス・メカスさんの最新作「スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語」のアジアプレミアが実施されることもあり、プレビューに、ときの忘れものスタッフとして同行させていただきました。
ちなみに、開催から4年目となる本映像祭のため恵比寿を訪れるのは今回で2回目。
初回の恵比寿映像祭の記憶と今回の展示を比較することで、美術展における映像作品について考えてみました。
4年前の映像祭は・・・と記憶を辿ったのですが、残念ながら印象に残っている作品がほとんどありませんでした。自分自身の脳内メモリーの少なさにビックリ!。まあ、昨今の大規模なコンテンポラリーアートの展覧会では、出展作品のうち、1/3近くを映像作品が占めることもあり、似たり寄ったり(おっと、失礼)の作品を見重ねるうちに、過去の映像作品の記憶も曖昧になってしまうのでしょうか?
しかし、アンディ・ウォホールと宇川直宏の作品だけは別でした。ウォホールの展示作品は、イーディーや岸田今日子(!)など当時の各界のセレブ達が、不安げな視線で自らを撮影しているカメラのレンズを凝視する「スクリーン・テスト」のシリーズから数点。そして後者は、昭和天皇崩御を題材にしたコンセプチュアルな作品「DAYLY PSYCHIC TV/ EMPEROR’S DEAD」が出品されていました。両者の作品は、他の展示を圧倒するインパクトを放っていたといまでも鮮明に記憶しています。
ワンフレームで作品の印象が決定する絵画や写真と違い、映像作品は「時間」というファクターが入るので、よっぽど強烈なイメージや明確なコンセプトが作品の中に成立していない限り、印象に残り難いと言えることができます。アンディ・ウォホールと宇川直宏の展示には、その『強烈なイメージと明快なコンセプト』が作品内に両立していました。
前置きが長くなりました。今回の映像祭のテーマは、「映像のフィジカル」です。
展覧会のチラシには、『映像を成り立たせている物質性(フィジカリティ)に光をあて、あえて映像の即物的な面を入り口に、具体的な作品を通じて、映像の豊かさと可能性にあらためて迫ります。』と、展覧会のテーマを補足するテキストが掲載されていました。先ほど、多くの映像作品の中でも記憶に残る作品には『強烈なイメージと明快なコンセプト』が成立してる。と書きましたが、今回の映像祭のコンセプトでもあるその『物質性』が二つの課題を解決していたように感じました。
個人的に、最も印象に残っている作品を紹介しましょう。
カロリン・ツニッス&ブラム・スナイダ―ス Sitdの作品「《RE:》」です。
この作品は、プロジェクターから投影される映像が複数の鏡の反射を利用して、プロジェクター自身に様々な映像を投影するプロジェクションマッピングの技術を使ったメディアアートです。既存の映像プログラミング技術をアート作品のコンセプトに転用した斬新な発想のアートワークです。例えるなら、プロジェクターが自身の手(この場合は「光」ですね)で、自らの体にボディーペインティングを描く。とでも表現すれば良いのでしょうか?
本展覧会のテーマ「映像のフィジカル」を象徴する作品ではないでしょうか?
「物質性」を直球に感じられる作品が2階の同じフロアーにあります。
伊藤隆介の作品「《Film Studies オデッサの階段》」と「Songs(#版23)」です。
《Film Studies オデッサの階段》は、映画史上に残る『戦艦ポチョムキン(エイゼンシュテイン監督)』の有名なシーン「オデッサの階段」を再現した模型とその動きをリアルタイムに投影する映像システムによるミクストメディア・インスタレーションです。ループする模型と壁面に投影される映像に時間を忘れて引き込まれる作品です。そして、「Songs(#版23)」は、動的な前者とは対照的な作品です。数十枚の16mmフィルム片が束ねられ、ライトボックスに固定されまるで鉱石のような光を放つ静的な作品です。同一作家の作品とは思えない『強烈なイメージと明快なコンセプト』が成立してるアートワークです。
他にも多くの印象に残る作品がありましたが、映像祭の展示を見ながら、ときの忘れもので開催中の「ジョナスメカス写真展」の事を思い出していました。
メカスさんの作品のコンセプト「フローズン・フィルム・フレームズ-静止した映画」も、映像を写真メディアに焼き付けることで「物質性」を成立させている作品です。ときの忘れものの展示も、第4回恵比寿映像祭映像のフィジカルと合わせて鑑賞される事をお勧めします。
そういえば、映像祭のオープニングパーティーの会場でメカスさんのアンソロジー・フィルム・アーカイヴスのスタッフのジェドさんとコンタクト出来たのは収穫でしたね。その後、メカスさんの展覧会はご覧いただけたのでしょうか?
展示に関する率直な意見を頂戴したい所です。(はまだこうじ)
第4回恵比寿映像祭
オープニングで挨拶する福原義春さん(東京都写真美術館館長)
NYのアンソロジー・フィルム・アーカイヴスのジェド・ラップフォーゲルさん
右から、ジェドさん、飯村隆彦さん、亭主
担当学芸員の岡村恵子さんに話を聞く亭主

--------------------------------------------
◆第4回恵比寿映像祭

会期:2012年2月10日(金)~ 2月26日(日)
*うち、2月13日、2月20日の月曜は休館
会場:東京都写真美術館全フロア及び恵比寿ガーデンプレイス センター広場、ザ・ガーデンルーム、恵比寿周辺文化施設及びギャラリーほか
●ジョナス・メカスさんの新作映画《スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語》が東京都写真美術館他で上映されます。
《スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語》
Jonas MEKAS in the 21st Century: Sleepless Nights Stories
/2011/112分/英語※日本語字幕付(Dialogues in English)
2012.02.26 sun 11:30-13:30
この映画は、千夜一夜物語をもとにしている。が、アラビアの話とはちがって、すべて私の人生そのものだ。時に日々の現実から離れて、あまりにも別のところへ迷い込んでしまったりするけれど。(ジョナス・メカス)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
◆ときの忘れものは、2012年2月10日[金]―2月25日[土]「ジョナス・メカス写真展」を開催しています(※会期中無休)。

「それは友と共に、生きて今ここにあることの幸せと歓びを、いくたびもくりかえし感ずることのできた夏の日々。楽園の小さなかけらにも譬えられる日々だった」
「this side of paradise」シリーズより日本未発表の大判作品13点を展示します。
1960年代末から70年代始め、暗殺された大統領の未亡人ジャッキー・ケネディがモントークのアンディ・ウォーホルの別荘を借り、メカスに子供たちの家庭教師に頼む。週末にはウォーホルやピーター・ビアードが加わり、皆で過ごした夏の日々、ある時間、ある断片が作品には切り取られています。60~70年代のアメリカを象徴する映像作品(静止した映画フィルム)です。
【展覧会ナナメ読み No.02】
展覧会タイトル:第4回恵比寿映像祭――映像のフィジカル
会場:東京都写真美術館
会期:2月10日(金)~ 2月26日(日)
恵比寿映像祭は、東京都写真美術館を主会場にして周辺のギャラリーや文化施設内で展開される東京都が主催する文化発進プロジェクトです。予定されているプログラムは映像作品以外にも、写真、メディアアート、イベント、トークセッション、と多岐に渡ります。今回はジョナス・メカスさんの最新作「スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語」のアジアプレミアが実施されることもあり、プレビューに、ときの忘れものスタッフとして同行させていただきました。
ちなみに、開催から4年目となる本映像祭のため恵比寿を訪れるのは今回で2回目。
初回の恵比寿映像祭の記憶と今回の展示を比較することで、美術展における映像作品について考えてみました。
4年前の映像祭は・・・と記憶を辿ったのですが、残念ながら印象に残っている作品がほとんどありませんでした。自分自身の脳内メモリーの少なさにビックリ!。まあ、昨今の大規模なコンテンポラリーアートの展覧会では、出展作品のうち、1/3近くを映像作品が占めることもあり、似たり寄ったり(おっと、失礼)の作品を見重ねるうちに、過去の映像作品の記憶も曖昧になってしまうのでしょうか?
しかし、アンディ・ウォホールと宇川直宏の作品だけは別でした。ウォホールの展示作品は、イーディーや岸田今日子(!)など当時の各界のセレブ達が、不安げな視線で自らを撮影しているカメラのレンズを凝視する「スクリーン・テスト」のシリーズから数点。そして後者は、昭和天皇崩御を題材にしたコンセプチュアルな作品「DAYLY PSYCHIC TV/ EMPEROR’S DEAD」が出品されていました。両者の作品は、他の展示を圧倒するインパクトを放っていたといまでも鮮明に記憶しています。
ワンフレームで作品の印象が決定する絵画や写真と違い、映像作品は「時間」というファクターが入るので、よっぽど強烈なイメージや明確なコンセプトが作品の中に成立していない限り、印象に残り難いと言えることができます。アンディ・ウォホールと宇川直宏の展示には、その『強烈なイメージと明快なコンセプト』が作品内に両立していました。
前置きが長くなりました。今回の映像祭のテーマは、「映像のフィジカル」です。
展覧会のチラシには、『映像を成り立たせている物質性(フィジカリティ)に光をあて、あえて映像の即物的な面を入り口に、具体的な作品を通じて、映像の豊かさと可能性にあらためて迫ります。』と、展覧会のテーマを補足するテキストが掲載されていました。先ほど、多くの映像作品の中でも記憶に残る作品には『強烈なイメージと明快なコンセプト』が成立してる。と書きましたが、今回の映像祭のコンセプトでもあるその『物質性』が二つの課題を解決していたように感じました。
個人的に、最も印象に残っている作品を紹介しましょう。
カロリン・ツニッス&ブラム・スナイダ―ス Sitdの作品「《RE:》」です。
この作品は、プロジェクターから投影される映像が複数の鏡の反射を利用して、プロジェクター自身に様々な映像を投影するプロジェクションマッピングの技術を使ったメディアアートです。既存の映像プログラミング技術をアート作品のコンセプトに転用した斬新な発想のアートワークです。例えるなら、プロジェクターが自身の手(この場合は「光」ですね)で、自らの体にボディーペインティングを描く。とでも表現すれば良いのでしょうか?
本展覧会のテーマ「映像のフィジカル」を象徴する作品ではないでしょうか?
「物質性」を直球に感じられる作品が2階の同じフロアーにあります。
伊藤隆介の作品「《Film Studies オデッサの階段》」と「Songs(#版23)」です。
《Film Studies オデッサの階段》は、映画史上に残る『戦艦ポチョムキン(エイゼンシュテイン監督)』の有名なシーン「オデッサの階段」を再現した模型とその動きをリアルタイムに投影する映像システムによるミクストメディア・インスタレーションです。ループする模型と壁面に投影される映像に時間を忘れて引き込まれる作品です。そして、「Songs(#版23)」は、動的な前者とは対照的な作品です。数十枚の16mmフィルム片が束ねられ、ライトボックスに固定されまるで鉱石のような光を放つ静的な作品です。同一作家の作品とは思えない『強烈なイメージと明快なコンセプト』が成立してるアートワークです。
他にも多くの印象に残る作品がありましたが、映像祭の展示を見ながら、ときの忘れもので開催中の「ジョナスメカス写真展」の事を思い出していました。
メカスさんの作品のコンセプト「フローズン・フィルム・フレームズ-静止した映画」も、映像を写真メディアに焼き付けることで「物質性」を成立させている作品です。ときの忘れものの展示も、第4回恵比寿映像祭映像のフィジカルと合わせて鑑賞される事をお勧めします。
そういえば、映像祭のオープニングパーティーの会場でメカスさんのアンソロジー・フィルム・アーカイヴスのスタッフのジェドさんとコンタクト出来たのは収穫でしたね。その後、メカスさんの展覧会はご覧いただけたのでしょうか?
展示に関する率直な意見を頂戴したい所です。(はまだこうじ)
第4回恵比寿映像祭
オープニングで挨拶する福原義春さん(東京都写真美術館館長)
NYのアンソロジー・フィルム・アーカイヴスのジェド・ラップフォーゲルさん
右から、ジェドさん、飯村隆彦さん、亭主
担当学芸員の岡村恵子さんに話を聞く亭主
--------------------------------------------
◆第4回恵比寿映像祭

会期:2012年2月10日(金)~ 2月26日(日)
*うち、2月13日、2月20日の月曜は休館
会場:東京都写真美術館全フロア及び恵比寿ガーデンプレイス センター広場、ザ・ガーデンルーム、恵比寿周辺文化施設及びギャラリーほか
●ジョナス・メカスさんの新作映画《スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語》が東京都写真美術館他で上映されます。
《スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語》
Jonas MEKAS in the 21st Century: Sleepless Nights Stories
/2011/112分/英語※日本語字幕付(Dialogues in English)
2012.02.26 sun 11:30-13:30
この映画は、千夜一夜物語をもとにしている。が、アラビアの話とはちがって、すべて私の人生そのものだ。時に日々の現実から離れて、あまりにも別のところへ迷い込んでしまったりするけれど。(ジョナス・メカス)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
◆ときの忘れものは、2012年2月10日[金]―2月25日[土]「ジョナス・メカス写真展」を開催しています(※会期中無休)。

「それは友と共に、生きて今ここにあることの幸せと歓びを、いくたびもくりかえし感ずることのできた夏の日々。楽園の小さなかけらにも譬えられる日々だった」
「this side of paradise」シリーズより日本未発表の大判作品13点を展示します。
1960年代末から70年代始め、暗殺された大統領の未亡人ジャッキー・ケネディがモントークのアンディ・ウォーホルの別荘を借り、メカスに子供たちの家庭教師に頼む。週末にはウォーホルやピーター・ビアードが加わり、皆で過ごした夏の日々、ある時間、ある断片が作品には切り取られています。60~70年代のアメリカを象徴する映像作品(静止した映画フィルム)です。
コメント