2012年現在、81歳の磯崎新は健在である。本来、正統な作家論はその作家が棺に納められ蓋が閉じられて書くべきであるのは知らぬわけではない。常識の中で考えるならば磯崎論を書くのはまだ時期尚早であろう。しかしながら、そのような常識にいか程の価値があろうか。作家、つまりは創作者としての磯崎新を考えるのと、人間としての磯崎の内実を究明したいという願望とは、それ程に明らかに分離できるものではない。例え作家としての磯崎がいささか分裂しているとしてもだ。人間は常識を、俗なるを旨として基盤にしている生物でもある。最大の常識は、肉体は必ず滅し肉体が滅すれば意識も又消えるという通念である。しかし作家=創作家はその通念を脱するのを生の目的にもする者である。肉体は滅しても意識は生き残る、例えば言葉の記録として、更には言葉にな得ぬモノはマテリアルとして。つまり意識は時に肉体から遊離する。そう考えようとするからこそ通念を超える生、すなわち創作を生きようとする。創作的表現は通念としての人間の生を時に超えてはそれ自体の生を生きるからである。創作の歴史は肉体の消滅から自由である。それ故に創作家はその特権の小宇宙を生きようとする。それが作家の矜持ともなる、通念を超えるモノである。肉体の消滅を超えようとする。

それに残念ながら磯崎を書くわたくしの方の事情もある。今のところわたくしの方の気力体力は作家論をやるには丁度良いのではないかと思われる。体力の方は年相応に衰えてきているが、モノを書くのは今がピークだろうと自覚している。机上でモノ想いにふけり今では古くなってしまったペンを指で走らせる、脳の細胞組織は酷使するが、動いたり人とやり合ったりの労働ではないから疲れるところが異なる。頭脳のフルマラソンには丁度良い年齢のようだ。それに正直なところ現実の社会生活のストレスからは書く事はほんの少し計り解放してくれる事もある。磯崎を書く事は、しかし精神的なと言うよりも深層意識はかなり疲弊し、時に傷つく。わたくしだって作家だから作家を書く事は同時に自分自身を値踏みする事になるからだ。キリキリと自身が痛むのである。こんな事はだから一回きりにしなくてはならない。そうしないと自分がおかしくなってしまいそうでもある。でも論を書いて傷むことはあっても死ぬ事はない。それに傷むのと同じ位の快楽だって無いわけではない。傷の深さと同じ位の快楽が得られる、なんて書けば自分の歪んだナルシズムまで誤って掘り起こしてしまいそうだ。・・・・・・・・・

(石山修武「作家論 磯崎新21」より) 

独特の石山節で延々と「磯崎新論」をブログで書き続けている石山修武先生から、第9回「世田谷式生活・学校」のご案内をいただきましたのでご紹介します。
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「世田谷式生活・学校」もいよいよ第二期に入り、9回目となりました。
より具体的な内容での議論と実践へと進んで参りたいと考えております。

いつもながら唐突にメールを差し上げ、大変恐縮ではありますが、
是非ご都合がよろしければ第9回「世田谷式生活・学校」に御参加頂きたいと思います。
尚、私どものメールアドレスの把握上、限られた方々への案内となってしまっております。
ご知り合いの方々への周知、および参加の呼びかけを頂けたら大変ありがたいと思います。

参加される場合、お手数ですが人数把握のため予約頂きたいと思います。
参加者氏名、人数記載の上、参加の旨連絡頂きたいと思います。
ishiyama.osamu@gmail.com

第9回 世田谷式生活・学校

7月28日土曜日 19:30~20:30(開場19:15)
場所:アグリタウン千歳烏山
(京王線 千歳烏山駅から徒歩3分)

添付のパンフレットを参照頂きたく思います。
詳細に関しましては決まり次第下記URLにて告知致します。
http://ishiyama.arch.waseda.ac.jp/www/jp/setagayalife.html
宜しくお願い致します。

世田谷区民のライフスタイルを考える会
代表 石山修武


早稲田大学石山修武研究室
〒169-8555 新宿区大久保3-4-1
早稲田大学理工学部55号館N棟8階
TEL:03-3209-2278
FAX:03-3209-8944
MAIL:ishiyama.osamu@gmail.com

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