開廊したばかりの1995年6月、ときの忘れものの第一回展は「銅版画セレクション1/長谷川潔、難波田龍起、瑛九、駒井哲郎」でした。4人のうち現存だったのは難波田先生のみ、秋には「難波田龍起展―新作銅版画集『古代を想う』発表記念」も開催していただきました。
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1995年9月ときの忘れものにて
難波田先生(左)と社長、亭主

90歳を超えてもお元気で大作にも取り組まれていたのですが、入院されたのが1997年4月、お亡くなりになったのはその年の11月8日でした。
直前まで亭主は銅版画にサインをいただくために、幾度も病室に通いました。徐々に体力が衰え、10枚もサインをされると手に力が入らなくなり、だんだんと字も弱くなってしまう。
亭主の長年の夢だった瑛九の作品集がようやく完成に近づき、難波田先生は友人瑛九のために特装版に挿入する銅版画「森の中の生物」をつくってくださったのでした。版自体はまだお元気なときに作っていただいたのですが、刷りに時間がかかり、全部が刷り上ったのが秋、病院のベッドに版画を持ち込むなんて気がとがめたのですが、先生は「少しづつサインを入れるから持っておいで」とおっしゃってくれ、心を鬼にして無理をお願いしたのでした。
最初はフルネームで記入されていたのが、最後は震える手でイニシャル「T.N.」を書くのが精一杯、限定100部すべてにサインを書き終えたのは亡くなる三週間程前でした。
今でもその日々を思い出すと心がいたみ、先生との20年間の往来が次々と浮かんできます。
19780918ギャラリーミキモト 難波田展オープニング 松永健一
難波田龍起銅版画集『街と人』『海辺の詩』
発表記念展 1978年9月18日
銀座・ギャラリーミキモトにて
左から亭主、松永伍一先生、難波田先生、奥様

群馬県桐生にある大川美術館で「難波田龍起展~Tコレクションを中心に~」が始まり、10月18日の「第28回 美のパーティ」にお招きを受け、社長と二人で参加してきました。
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「難波田龍起展~Tコレクションを中心に~」
会期:2014年10月4日(土)~ 12月14日(日)
会場:大川美術館
群馬県桐生市小曽根町3-69(水道山中腹)
TEL:0277-46-3300 FAX:0277-46-3350
大川美術館入り口
急な坂を上ると、山の中腹に建つ美術館の入り口があります。

大川美で瑛九とオノサト
コレクションでは瑛九オノサト・トシノブが並んで展示されていました。

大川美でピカソ、ブラック
ピカソ、ブラックなど海外作家のコレクションも充実しています。

大川美で難波田史男記念室
龍起先生のご子息難波田史男さんの特集展示

大川美で演奏会
地元の皆さんが大勢集まり、横坂源さんのチェロ演奏を楽しみました。

大川美で難波田1
企画展示室では初期から晩年までの難波田作品の逸品がずらり。中心は関西のコレクターTさんのコレクションです。

大川美で難波田2
Tさん夫妻、難波田先生夫妻とともに福井県勝山に旅行したのも懐かしい思い出です。
Tさんが奥様と手をつないで歩く姿がほほえましくて「こういう夫婦になりたいね」と思ったことでした。

大川美で難波田3再会
1949年の「彫刻のある静物」はときの忘れもの旧蔵で、いまは関東在住のIさんのコレクションです。

大川美で難波田4海の詩
今回初めて公開されたコラージュ連作「海の詩」

大川美で館長挨拶
パーティで挨拶する二代目館長・寺田勝彦さん。
ユーモアを交えながら「開館当時は年2万8千人も来館されたのに、近年は1万人を割り込んでしまった。皆さんどうぞご支援とご協力を」と訴えられました。

大川美で難波田武男さん挨拶
三男の難波田武男さんの挨拶。
11月15日(土)にも武男さんが「父を語る」トークをされます。

大川美で難波田展パーティ大川美で難波田展パーティ

大川美で難波田展パーティ大川美で難波田展パーティ

大川美で難波田武男さん、椿原さん
初期の代表作「アクアポリスの空」を出品された老舗画廊・椿近代画廊の椿原さん(左)と武男さん。

大川美で難波田武男さんと
亭主と武男さん

11月2日(日)NHK日曜美術館のアートシーン(9時45分から)で同展が紹介されます(再放送は同日夜8時45分から)。
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大川美術館では初となる難波田龍起展を、Tコレクションの全面的な協力のもとに、常設展・松本竣介展示室の導線上の空間において開催いたします。難波田龍起は、当館の主軸画家・松本竣介が18歳で上京して以後、亡くなるまで、兄と慕い親しく交流した画家でもあります。
北海道旭川で生まれた難波田龍起(なんばた たつおき/1905-1997)は、高村光太郎と出会い、1924年頃より高村のアトリエをしばしば訪れ、しだいに古代ギリシャへの憧憬を深めるようになりました。1933年頃からは松本竣介、鶴岡政男らと親しく交流するようにもなりました。戦後は抽象表現に向かい、純粋な線と色彩によるイメージの構築を探究してゆきます。
92年に及ぶ長い人生のなかで難波田は、70歳前後に、最愛の息子で同じく画家としての道を歩み出していた次男・史男(ふみお・享年32)と長男・紀夫(のりお・享年35)の相次ぐ死という不幸に見舞われることとなります。しかしその後、静謐な精神性をたたえた画境は一層独自の極まりをみせてゆくこととなるのでした。
本展は、その最初期から最晩年にいたるまでの代表的な作品を網羅するTコレクションと、当館所蔵の難波田龍起作品を中心に、難波田の人と芸術を振り返ります。戦中戦後の困難な時代を生き抜き、苦難の多い人生のなかで、絵画の可能性をひたすら探り続けた難波田龍起。その彼方にある光とも呼ぶべき「魂の風景」を見、絶えず新しい創造に挑み続けました。難波田のいうまさしく「生命の創造」は、展示室内で竣介の作品とともに響き合うことにもなることでしょう。
私たちの現在もまたさまざまに困難な時代といえるでしょう。今、大川美術館において難波田龍起の絵画世界とじっくり向き合うことの意味にも思いをはせる機会になればとおもいます。
また、今回は、当館の所蔵作品とTコレクションとをあわせて展示する作家特集展示「コレクション競演・難波田史男」を同時開催いたします。難波田父子の共鳴しあう魂の律動をご覧ください。(同館案内より)

2014_ookawa『難波田龍起展 T氏コレクションを中心に』図録
2014年
大川美術館 発行
72ページ
23.0x18.2cm

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●ときの忘れもののコレクションから難波田龍起、難波田史男、お二人の作品をご紹介します。
難波田龍起のエッセイ 絵画への道」もあわせてお読みください。
難波田龍起_夕暮_水彩_難波田龍起
「夕暮」
1989年
水彩、インク
24.8x33.4cm
サインあり
裏にタイトルと年記あり

難波田史男_野と空_水彩_難波田史男
「野と空」
1971年
水彩、インク
27.0x38.1cm
サインあり

難波田史男_門_水彩_難波田史男
「門」
1972年
水彩、インク
26.9x38.0cm
サインあり

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