私の人形制作第68回 井桁裕子

「切断ヴィーナス」のファッションショー

2月14日、「カメラと写真映像のワールドプレミアショー・CP+2015」というイベントに行ってきました。
これは、多くの写真関係者が毎年楽しみにしているという、映像機器の見本市です。
ご一緒したのは大阪からやってきた森田かずよさんと、バリアフリー建築のお仕事をされているFさんで、場所はパシフィコ横浜、好天に恵まれた一日でした。
会場に着くと、カメラの新製品には目もくれず、ハッセルブラッドのブースに突き進みました。
そこで行われるイベント「切断ヴィーナスショー」の為に私たちは出かけてきたのです。

この「切断ヴィーナスショー」とは写真家の越智貴雄氏が主催のイベントで、義足の女性たちのファッションショーです。
http://ch.nicovideo.jp/ch711/blomaga/ar726566

「義足のファッションショー」の大きなものは2012年3月に、恵比寿ガーデンプレイスでのパラリンピック関係のイベントでのショーが記憶に残っています。
その頃、義足を見せる女性アーティストたちによる、小さなスペースでの自主的なイベントが精力的に取り組まれ始めていたのです。
美術作家では片山真理さんがよく知られていますが、義肢装具士・臼井二美男氏の手がけた義足を使用する女性たちとその仲間が様々な活躍をし、雑誌、新聞、NHKなど多くのマス媒体にも紹介されていきました。
以前からパラリンピック選手を撮影されていた越智貴雄氏は、2013年から彼女達の撮影に取り組むようになり、同年4月に原宿にあるハッセルブラッドのギャラリーでその写真展が行われました。
翌2014年5月に写真集「切断ヴィーナス」が出版され、やはり様々な媒体で取り上げられました。
私も原宿での写真展は観に行きました。
Makiko dollのモデルになっていただいたイラストレーターの須川まきこさん、ロックバンド「SHAMPOO」のオリモマサミさん、アスリートの大西瞳さん、モデルのGIMICOさんなど、実際にお会いしている方達が新たな輝きをみせるファッション写真はとても楽しいものでした。
写真撮影でもショーでも、スタイリストはみんなの共通の友人である菅井葉月さんです。
洋服が主体になるアパレルのファッションショーとは違い、その人の個性が感じられるコーディネートが工夫されています。
菅井葉月さんの所属するオリジナルタイツブランド「tokone」に須川さんのイラストを使った美しいタイツがあり、これはもちろん毎回バッチリ登場します。
須川さんの絵を使ったものでは左右色違いのハイソックスもあり、これは義足の方が片脚ずつで履く場合も楽しめるように作られたものです。
http://to-ko-ne.com/portfolios/makiko-sugawa/

私たちはブースの前で須川さんと落ち合って控え室にお邪魔したりして交流し、その日2回目の、3時半からのショーを観ました。
撮影OKなので、黒山の人だかりの皆さんの多くがカメラを手にして撮影に陣取っています。
Fさんが森田さんの為に場所を取ってくれて、かろうじて前の端っこで前列に座り、ショーの始まりに間に合いました。

須川まきこ須川まきこさん。左下の前列に、臼井さんの姿も見えます…。


大西瞳後ろ姿も素敵な大西瞳さん。


CP+2015出演者(敬称略、左から):大西瞳、小林久枝、村上清加、須川まきこ、阿部未佳、佐藤陽子、藤井美穂


記念撮影そして森田さんも一緒に記念撮影!なんとなく赤と黒で揃った感じに…。
右の男性は「特定非営利活動法人ノアール」の熊篠慶彦さんです。


特別なイベントとはいえ、義足を隠さずに見せて堂々と話題にできるのは清々しい気分です。
身体障害に限らずですが、人間はそもそも不平等なものです。
ハンディキャップがある人はそれを補う助けがあってこそ平等なスタートラインに立てるという面があります。
「義足」「装具」はその象徴のようです。
自分を顧みても、周囲の人々を思っても、障害は他人事ではありません。
助け合う事を当たり前にするという意味での「豊かさ」がますます必要だと感じます。
私はテレビを持っていないので、こうしてたまに電車に乗ると、週刊誌の車内吊り広告に目がいきます。
それらに、差別をむき出しにしたり、戦争を期待するような言論が競って肩を並べるようになっているのが気になります。
寛容さを失って傷つけ合う風潮が増すと、多くの人がこういう殺伐とした考えに共感するのではないか、と心配になります。
障害が有る無しに関わらず、誰もが日々の暮らしに輝きやときめきを持っていられたら、もっと他者を思いやる余裕が持てるようになる気がします。

森田さんと一緒に出かけたのはまだ二度目ですが、何かに付けいろいろな発見や学びがあります。
それを改めて言葉にするのは、なかなか難しいのですが…。
(いげたひろこ)

●今日のお勧め作品は、井桁裕子です。
igeta_04_MakikoDoll
井桁裕子
「Makiko doll」
2009年
桐塑
H115.0cm

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