早くご紹介しなくちゃと思いつつ、会期終了間際になってしまいました。
横須賀美術館で4月5日まで「海老原喜之助展」が開催されています。

20150207海老原喜之助展 表20150207海老原喜之助展 裏
「生誕100年 海老原喜之助展―エスプリと情熱」
会期:2015年2月7日[土]~4月5日[日]
会場:横須賀美術館
時間:10:00~18:00

若くして、エコール・ド・パリの次代を担う画家として注目され、帰国後も詩情あふれる作品を描き、戦後は力強い代表作を次々と発表した海老原喜之助の首都圏では実に24年ぶりの大回顧展とのこと。

海老原ファンの亭主は1971年に鎌倉で開かれたときの「海老原喜之助-デッサン・水彩・版画展」カタログは、いつでも見られるところにおいて大事にしています。

海老原といえば、「エビハラ・ブルー」。
力強く、詩情あふれる画風は亭主の世代にとっては懐かしくも、これぞ洋画の代表作家でした。
代表作が1935年の『曲馬』(熊本県立美術館所蔵)と、戦後1954年の『船を造る人』(北九州市立美術館所蔵)の二作であることは異論ないでしょう。

亭主は『曲馬』が熊本県立美術館に収蔵される現場に居合わせることができました。
同館は前川國男設計で、熊本城の二の丸公園の一角に1976年(昭和51)3月に開館したのですが、準備室の人々は海老原の生まれ故郷(鹿児島)に対抗してなんとしても海老原の代表作が欲しかった。
海老原は鹿児島で生まれましたが、後年制作の拠点としたのは熊本でした。お弟子さんも熊本に多い。お墓も熊本です。
七回忌のときには関係者に配りたいからと海老原夫人から銅版画の原版を託され、亭主は100部ほど後刷りをしたこともありました。

それはともかく、熊本が熱望した『曲馬』は当時、わが師匠久保貞次郎先生が所蔵していました。
久保先生はこの作品のことを『曲馬少年』といっていましたが、北川民次の700号の大作とともに栃木県真岡のアトリエの大壁面にかけていました。
その日、熊本から遠路はるばる真岡の久保邸に赴かれたのは、美術館準備室長のTさん、市内の大病院院長のMさん、画家の坂本善三先生、版画家の浜田知明先生の四人でした。
久保先生の提示した価格は、ん千万円(後で県議会で問題になったとか)。
ものも言わずじっと絵を見つめる四人、緊張した雰囲気をやぶって久保先生のいつものあけっぴろげで快活なこの絵の来歴話が始まります。

「絵は大きいのに限ります。大きな絵は誰も買い手がないから安いんです。この絵も銀座の兜屋にあったんですが、●●万円でした(亭主はその数字を鮮明に記憶していますが、もし間違いだといけませんので●●万円としておきます。20万円に満たない金額でした)。
鎌倉の土方君(土方定一先生)も買いたかったのだけれど、どうしても●●万円が用意できなくて、ボクがキャッシュで買いました。」

買値をばらし、その100倍以上の値で買いなさいというんですから、熊本の4人の皆さんはあっけにとられていました。

あれから40年、久保先生、坂本先生は鬼籍に入りましたが、浜田先生は今もご健在で制作に励まれています。
近年の市場における海老原作品の低評価は悔しくて仕方ありませんが、この展覧会が再評価のきっかけになって欲しいと切に願う次第です。

●今日のお勧め作品は、海老原喜之助です。
28海老原喜之助
「祭り」
1954年
リトグラフ
55.5x36.5cm
Ed.100 サインあり

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