「いとしの国ブータン紀行」第1回

アートフル勝山の会 荒井由泰
 
 28年前、ふとしたことからブータンと出逢い、恋人のごとく思いを募らせてきたが、ようやく、一週間という短期間ではあったが、いとしの国・ブータンを旅する機会を得た。ブータンとの出逢いそして今回の旅で体感したブータンについて5回シリーズで記してみたい。

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私とブータンとの出逢い
私とブータンとの関係は浜野安宏氏(ライフスタイルプロデューサー)の壮大なプロジェクト提案からはじまった。1987年勝山青年会議所主催の講演会で福井県勝山市を訪れた浜野氏を完成前の越前大仏を案内する機会があったが、その折、彼が突然、「越前大仏の落慶のイベントをぜひとも手がけたい」と言いだした。そして彼の口から「ブータン」を使ったイベントにしたいと、はじめて「ブータン」という言葉がでた。当時、「ブータン」という国については私も含め、ほとんど知られていなかった。彼にブータンの魅力を山ほど聞かされ、越前大仏とブータンを組み合わせることにより、新しい大仏に魂をうえつけることができる旨を説かれた。高度成長のなかに失われた日本の心そして原風景がブータンにあると共感し、浜野氏のプロジェクトの内容をまとめ、施主である当時の相互タクシーの多田社長に提案させていただいた。残念ながら、費用面でも4億円と高額であり、唐突の「ブータン」であったことから、この落慶のイベントは実現できなかった。しかし、私にとってはブータンが身近な存在となるきっかけとなった。浜野氏には感謝の気持ちでいっぱいだ。

IMG_0760若かれしころの浜野安宏氏(勝山市にて)


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せっかくなので越前大仏のことを少しお話しすると、越前大仏は大仏殿(中に大仏と1000余りの石仏)、中門・大門(木造)、五重の塔、広大な庭園からなり、勝山出身の実業家・多田清氏(当時 相互タクシー社長)の手で1987年5月に建立された。総工費380億円という壮大なもので、今となれば昭和の大建造物だ。ちなみに大仏殿は熊谷組、大門・中門は前田建設工業、五重の塔は清水建設が手がけた。今後もこんなプロジェクトはそうないだろう。多田社長は「1000年後にも地域に貢献できる文化財にする」と明言し、情熱をもって取り組まれた。その後、様々な経緯を経て、現在は臨済宗妙心寺派の拠点の一つとして、宗教法人として運営されている。福井県立恐竜博物館、白山平泉寺(JR東日本の大人の休日倶楽部のCMで吉永小百合が案内しています)とともに勝山市の名所となっている。ぜひとも皆さんにも訪れてもらいたい場所である。

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IMG_4128現在の越前大仏


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日本ブータン友好協会への入会
浜野氏の熱い言葉に動かされ、ブータンに興味を持ち、すぐさま日本ブータン友好協会に入会した。1988年2月に行われた通常総会に初めて出席した。日本ブータン友好協会は1981年に設立され、当時、発起人の方々が役員をつとめられていた。発起人の多くが京都大学関係者で、登山や学術研究でブータンと交流のあった方々であった。文化人類学者でKJ法の生みの親・川喜田二郎氏、フランス文学者で文化勲章受章者・桑原武夫氏、植物学者で日本人として最初のブータン訪問者・中尾佐助氏、社会人類学者で文化勲章受章者・中根千枝氏、南極探検隊長で品質管理の権威・西堀栄三郎氏、外交官の東郷文彦氏ら、まさに日本頭脳というべきそうそうたる面々だ。総会では会長の桑原武夫先生が挨拶され、懇親会には出席されず退席された。先生は私と同郷の福井出身であったので、お話しできず残念に感じたことを思い出す。桑原先生は同年4月に急逝された。当時、副会長であった西堀栄三郎氏とはいろいろお話しできたことを懐かしく思い出される。
日本ブータン友好協会の会員になったことで、会報等でブータンに関する情報が得られるようになり、また、ブータンに関する書籍を読むことで、ブータンとの距離が近くなった。特に、2011年にブータンのワンチュク国王夫妻が来日され、東日本大震災に対する心温まる対応には、日本国民が感動し、まさに日本にブータンブームをもたらしたことは記憶にあたらしい。日本ブータン友好協会の会員ということで、東京での歓迎レセプションに出席させていただき、国王夫妻のあたたかい心遣いにじかに接することができ、ブータンへの思いがさらに募った。この時ほど年会費を払い続けて良かったと感じたことはなかった。
(あらいよしやす

*画廊亭主敬白
福井県勝山市という人口3万人足らずの小さな町で1970年代から「アートフル勝山の会」を主宰し、現代美術をサポートするコレクター運動を繰り広げてきた荒井由泰さんと勝山の人たちのことはこのブログで幾度となくご紹介してきました(北陸の里に現代美術の輪 その後)。
ご自身優れたコレクターでもある荒井さんが11回にわたってこのブログで連載した「マイコレクション物語」もたいへん好評でした(全11回の目次はコチラ)。
今回は長年の夢だったブータン訪問を終えた荒井さんに旅の思い出を執筆していただきます。どうぞご愛読ください。

●今日のお勧めは斎藤義重です。
斎藤義重ボーパンG赤斎藤義重 Yoshishige SAITO
「ボーパンG―赤 Beaupin G-Red」
1973年 合成樹脂 アルミ板
73×61cm  Ed.100
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東京画廊シール、自筆サイン・シール有リ

斎藤義重自筆署名シール
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◆荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は毎月19日の更新です。