綿貫さま

日曜美術館の恩地孝四郎特集を見てられないかもしれませんので、(中略)。
私の感想としては45分で恩地孝四郎を紹介するという点ではまずまずかなと思いました。途中に北朝鮮のミサイル発射の速報(テロップ)が入り、少し興ざめでしたが・・(ツイッターでもそのことをふれているのが多かったです。)
特集を見れば、恩地の先進性また彼の芸術の深さ・大きさをある程度理解できたのでは思います。展覧会の入場者数は必ず増えるはずです。
特に、ピアノ演奏と作品のコラボがあったので現代音楽を題材にした作品との関係性がよく分かり、さすがと感じた次第です。また、彼のマルチブロックという作品について、芸大の先生が実際の制作方法を実演してくれたので、その新しさも含め、より理解できました。

綿貫さんの言われるように、恩地芸術の偉大さをもっとアピールしても良かったと思いますが、大英博物館のキューレターの話が説得力がありました。
(中略)
特集のなかでの桑原さんの話も説得力がありましたよ。

すでに読んでられると思いますが、日経新聞の2月3日の宮川さんの記事が内容も一番しっかりしていたと感じました。念のために、添付しておきます。

荒井由泰

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私は先ほど「日曜美術館」で。。。恩地孝四郎が、戦後、占領政策で来日していた美術専門家等を通じて世界に知られるようになった経過も説明されていましたが、それを媒介したのは、日系二世で戦前末期に来日して早稲田の建築に入学したため戦争中も日本に残っていた内間安せい(王へんに星という字です)という人です。内間さんは、戦後は日本で版画中心の芸術家として活動し、1959年に「帰米」しますが、サンパウロ・ビエンナーレに日本代表として、ベニス・ビエンナーレにアメリカ代表として出展されました。棟方志功、丹下健三、流政之、江藤淳と昭和30年代にアメリカに行った文化人の多くは内間さんの世話なしには渡米や渡米後の生活ができていなかったはずですが、それを公にしているのは流さんだけというのも・・・・ご本人も目立ちたがる人ではないので忘れられた感もありますが、こういう人なしには、才能や業績があってもなかなか、世界的な場で評価されるようにはならないような気がしています。
Yuji Hasemi さんのfacebookより>

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東近美の恩地孝四郎展は去年の「月映」展を見たから「もういいや」ではなく、見たから「こそ」ぜひとも見に行こう!と推したい。よくぞここまでと思う。丁寧な集め方には本当に感銘をうけた。恩地孝四郎展の集大成だと思う。もうこの規模・内容の厚みは再現出来ないと思う。創作版画の粋、でしたわ。
遊行七恵さんのtwitterより)>

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東近美、恩地孝四郎展素晴らしい。ただ並べただけの展覧会だが、あれだけの物量を「ただ並べただけ」が一番いいというキュレーション的判断なのだろう。あれはかなり調査を重ねた上での展覧会の実現なんじゃないかな。おとした作品も多そう。清い展覧会で爽快だし、恩地の良さが始めてわかった。
土屋誠一さんのtwitterより)>


東京国立近代美術館で開催中の「恩地孝四郎展」の亭主の感想は先日書きました。
歴史に残る画期的な回顧展にもかかわらず、学生の感想文みたいな朝日新聞の展評に怒り狂っておりましたが(おかげでアクセスが急騰した 苦笑)、テレビ(亭主の家には無い)は作品をそのまま紹介したのでしょう。「NHK日曜美術館」を見た方たちの感想は概ね好意的で恩地作品への驚きと尊敬にあふれている。

「抽象のパイオニア」というのなら、岸田劉生と同い歳であったという五十殿利治さんの思いがけない指摘をまつまでもなく、恩地の晩年10年の仕事を「版画」という狭い枠で論じるのではなく、1950年代をともに生きた坂田一男(2歳上)、中原実(2歳下)らから、はるか後輩の村山知義(10歳下)、斎藤義重(13歳下)、長谷川三郎(15歳下)、吉原治良(14歳下)らの仕事と比べて俯瞰するような展評をこそ読みたい。

荒井さんが送ってくれた日経の展評の末尾は、以下の通り。
戦後花開く抽象の時代もこうした探求を引き継ぎながら作品としてより自律したフォルムと詩的なイメージをいくつものシリーズで追究した。
版画の近代化を推し進めた先駆者の不断の実験精神。それを整理して示す重量級の展示である。

『日本経済新聞』2016年2月3日 文化欄 宮川匡司

今回の大型作品の衝撃を伝えているとは言い難い(無いものねだり)のですが、「困惑する」と「重量級の展示」じゃあえらい違いです。
昔は新聞の文化欄の記事を外部の執筆者に依頼することが多かった(例:瀧口修造)。筆一本で(原稿料で)生きる人たちはそれだけに優れた専門知識と、独自の視点が必要です。
最近は社内の記者がにわか勉強で書くことが多いようです。

今回、新聞の展評を読んで、1969年春の新入社員研修を思い出しました。
編集局幹部Nさんが将来の幹部候補生(つまり私たち、見習い生と呼ばれていました)に向ってはいた言葉には驚きました。
「経済部の記者が株をやったらおしまいだ(自分の筆で市場を操作できる)。君らが書く記事はデスクにずたずたにされ、校閲でチェックされ、整理部でほとんどが削られ、そうやって切磋琢磨された中から本紙の記事ができあがる。
しかるに学芸部の記者は、あれは新聞記者じゃあない。月末になると社旗を掲げたハイヤーで大手の画廊を集金して回る。書いた記事はスペースが確保されているから、必ず掲載される。」
こんなこと、入社したばかりの新人に言っていいのかしらと思っていましたが、「競争なき原稿にはろくなものがない」と言いたかったのでしょう。新聞の凋落を予感させる言葉でした。

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なお、この機会に内間先生の功績を称えるYuji Hasemi さんのfacebookには感銘しました。ありがとうございます。
2014年9月12日付ブログ用画像_08
■「内間安瑆の世界
1982年NY郊外の仕事場にて
内間安瑆先生と俊子夫人
日米の架け橋として恩地だけではなく多くの作家たちの手助けをされました。

●今日のお勧め作品は、内間安瑆です。
ForestByobu (Fragrance)_600
内間安瑆
「FOREST BYOBU(FRAGRANCE)」
(森の屏風<芳香>)
1981年
木版(摺り:米田稔)
Image size: 76.0x44.0cm
Sheet size: 83.6x51.0cm
Ed.120 Signed
*現代版画センターエディション

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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

◆ときの忘れものは2016年2月6日[水]―2月20日[土]「恩地孝四郎展」を開催しています(*会期中無休)。
恩地孝四郎展DM1200

恩地孝四郎の木版画を中心に水彩、素描など15点をご覧いただきます。

●イベントのご案内
2月12日(金)18時より西山純子さん(千葉市美術館主任学芸員)を講師に迎えてギャラリートークを開催します(要予約/参加費1,000円)。
※必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記の上、メールにてお申込ください。
E-mail. info@tokinowasuremono.com