ドリュール作業工程
[その2]
前回ご紹介した専用接着液「fixor」を跡の溝に細筆で塗ります。そして半日~1日ほど乾かします(諸説あり)。乾いたら金箔をつけていきます。
モチーフの大きさよりも少し大きく切った金箔を本にのせていくのですが、ただではのらないので、自分の鼻のあたりかこめかみのあたりの脂を指でちょろっと拝借して革を撫でます。するとその100%天然オイルが糊の代わりになり、うまい具合に金箔がピタッとのります。
乾燥肌で自前の脂が取れないわ、という方でも大丈夫。その場合はアーモンドオイルやハンドクリームなどでも代用可です。
しかし、思いのほかそれらは粘度が強いので、革に残ってしまうこともありますし、いちいち適量を考えながら取るのもホネの折れる話ですので、やはりメイド・イン・じぶんの天然オイルが一番よいでしょう。<「本格的に熱した」道具を箔の上から押していきます。
この時、「ねちょ」っと音がすると、道具が熱すぎるか、fixorの濃度が濃すぎるかの原因が考えられますので、道具を少し冷まします。
逆に箔が全然つかない場合は、道具の温度が低すぎるか、fixorが十分についていないことがありますので、2回目のfixorを塗り直し、道具の温度を上げます。その後、十分な輝きが出るまで箔を重ねていきます。
なお、fixorは何度もつけるとゴムのようになってしまうので、2回ぐらいにとどめておきます。

fixorの濃度や道具を熱する温度、力の加減など、なかなか言葉では説明しがたいもので、イメージもわきにくいと思いますが、箔押しの作業工程はこのような流れになっています。
色々と書きましたが、なんだかんだで終始常に気をつけなくてはいけないこと第1位は、道具を持った手がぶれないこと、そして、ココロもぶれないこと、に尽きるのでした。
(文:中村美奈子)

●作品紹介~中村美奈子制作



中村美奈子 作品6
革装文鎮
・山羊革(外側)
・鉄塊(内側)
・金箔・パラジウム箔
・真鍮ワイヤー
・2016年制作
・47×47×47cm
日常でもデスク周りで使える文鎮にテクスト(ウィリアム・ブレイク)を箔押ししました。
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。
本の名称
(1)天
(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)
額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。
角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。
シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。
スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。
総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。
デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。
二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。
パーチメント
羊皮紙の英語表記。
パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。
半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。
夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。
ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。
両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。
様々な製本形態
両袖装
額縁装
角革装
総革装
ランゲット製本
●今日のお勧め作品は、駒井哲郎です。
駒井哲郎
《芽生え》
1955年
アクアチント・エングレーヴィング
イメージサイズ:15.5×28.0cm
Signed
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ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。
◆frgmメンバーによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
[その2]
前回ご紹介した専用接着液「fixor」を跡の溝に細筆で塗ります。そして半日~1日ほど乾かします(諸説あり)。乾いたら金箔をつけていきます。
モチーフの大きさよりも少し大きく切った金箔を本にのせていくのですが、ただではのらないので、自分の鼻のあたりかこめかみのあたりの脂を指でちょろっと拝借して革を撫でます。するとその100%天然オイルが糊の代わりになり、うまい具合に金箔がピタッとのります。
乾燥肌で自前の脂が取れないわ、という方でも大丈夫。その場合はアーモンドオイルやハンドクリームなどでも代用可です。
しかし、思いのほかそれらは粘度が強いので、革に残ってしまうこともありますし、いちいち適量を考えながら取るのもホネの折れる話ですので、やはりメイド・イン・じぶんの天然オイルが一番よいでしょう。<「本格的に熱した」道具を箔の上から押していきます。
この時、「ねちょ」っと音がすると、道具が熱すぎるか、fixorの濃度が濃すぎるかの原因が考えられますので、道具を少し冷まします。
逆に箔が全然つかない場合は、道具の温度が低すぎるか、fixorが十分についていないことがありますので、2回目のfixorを塗り直し、道具の温度を上げます。その後、十分な輝きが出るまで箔を重ねていきます。
なお、fixorは何度もつけるとゴムのようになってしまうので、2回ぐらいにとどめておきます。

fixorの濃度や道具を熱する温度、力の加減など、なかなか言葉では説明しがたいもので、イメージもわきにくいと思いますが、箔押しの作業工程はこのような流れになっています。
色々と書きましたが、なんだかんだで終始常に気をつけなくてはいけないこと第1位は、道具を持った手がぶれないこと、そして、ココロもぶれないこと、に尽きるのでした。
(文:中村美奈子)

●作品紹介~中村美奈子制作



中村美奈子 作品6
革装文鎮
・山羊革(外側)
・鉄塊(内側)
・金箔・パラジウム箔
・真鍮ワイヤー
・2016年制作
・47×47×47cm
日常でもデスク周りで使える文鎮にテクスト(ウィリアム・ブレイク)を箔押ししました。
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●ルリユール用語集
ルリユールには、なじみのない用語が数々あります。そこで、frgmの作品をご覧いただく際の手がかりとして、用語集を作成しました。
本の名称
(1)天(2)地
(3)小口(前小口)
(4)背
(5)平(ひら)
(6)見返し(きき紙)
(7)見返し(遊び紙)
(8)チリ
(9)デコール(ドリュール)
(10)デコール(ドリュール)
額縁装
表紙の上下・左右四辺を革で囲い、額縁に見立てた形の半革装(下図参照)。
角革装
表紙の上下角に三角に革を貼る形の半革装(下図参照)。
シュミーズ
表紙の革装を保護する為のジャケット(カバー)。総革装の場合、本にシュミーズをかぶせた後、スリップケースに入れる。
スリップケース
本を出し入れするタイプの保存箱。
総革装
表紙全体を革でおおう表装方法(下図参照)【→半革装】。
デコール
金箔押しにより紋様付けをするドリュール、革を細工して貼り込むモザイクなどの、装飾の総称。
二重装
見返しきき紙(表紙の内側にあたる部分)に革を貼る装幀方法。
パーチメント
羊皮紙の英語表記。
パッセ・カルトン
綴じ付け製本。麻紐を綴じ糸で抱き込むようにかがり、その麻紐の端を表紙芯紙に通すことにより、ミゾのない形の本にする。
製作工程の早い段階で本体と表紙を一体化させ、堅固な構造体とする、ヨーロッパで発達した製本方式。
半革装
表紙の一部に革を用いる場合の表記。三種類のタイプがある(両袖装・額縁装・角革装)(下図参照)【→総革装】。
革を貼った残りの部分は、マーブル紙や他の装飾紙を貼る。
夫婦函
両面開きになる箱。総革装の、特に立体的なデコールがある本で、スリップケースに出し入れ出来ない場合に用いる。
ランゲット製本
折丁のノドと背中合わせになるように折った紙を、糸かがりし、結びつける。背中合わせに綴じた紙をランゲットと言う。
全ての折丁のランゲットを接着したあと、表装材でおおい、装飾を施す。和装本から着想を得た製本形態(下図参照)。
両袖装
小口側の上下に亘るように革を貼る形の半革装(下図参照)。
様々な製本形態
両袖装
額縁装
角革装
総革装
ランゲット製本●今日のお勧め作品は、駒井哲郎です。
駒井哲郎《芽生え》
1955年
アクアチント・エングレーヴィング
イメージサイズ:15.5×28.0cm
Signed
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