「安藤忠雄展 ドローイングと版画」は昨日10月21日、盛況のうちに終了しました。
1984年の初期版画から、今年描いた新作ドローイングまで15点ほどの展示でしたが、たくさんの方にお出でいただきました。
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《中之島プロジェクト II[アーバンエッグ2]》(右)と《SCENE I /WALL》(左)
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《水の教会》(左)、《風の教会》(右)

来場者の平均年齢が30歳を切ったのは何年ぶりでしょうか。
最年少が新米パパに抱かれたゼロ歳のご近所の赤ちゃん、最年長は大阪から来られた三島喜美代先生85歳(昭和7年生まれ)。私たちとは40年以上のお付き合いです。
三島喜美代
三島先生を囲んで、右はMEMの石田克哉さん

最終日近くとなるとどこで聞いたのか若い学生さんがぞろぞろ、皆さん珍しそうにあっちこっちうろうろ、長期滞在は亭主の望むところであります。
作品をお買い上げいただいたお客様(今回はイギリス、シンガポール、アイルランドなど海外の方が多かった)には心より御礼申し上げます。
息子さんや、恋人の誕生日祝いに送るという方が二人もいたのには驚きました。
プレゼントに使われるくらい、「アンドー」はよく知られているのでしょう。
おかげさまで光、風、水の教会三部作は完売いたしました。

駒込の展示は終わりましたが、六本木の国立新美術館での「安藤忠雄展―挑戦―」はまだまだ続きます。
会期:2017年9月27日[水]~12月18日[月]
六本木の安藤先生の大個展は日本における「建築展」の歴史をかえる大きなイベントになりつつあります。建築関係ではない一般の人たちがこれほどたくさん入場料を払い、何時間も見て飽きさせない展示にした安藤先生の才能には脱帽します。
振り返ってみれば、安藤先生は「展示の天才」でもあります。
2003年6月21日~8月31日に東京都現代美術館で開催された「田中一光 回顧展」の展示デザインを担当した安藤先生はあの大会場の壁面を24,000個の透明のペットボトルで埋め尽くした。きらきら光るペットボトルの壁に田中一光さんのポスター群が浮き上がる、誰も思いつかないような画期的な会場構成で、見事な「建築作品」でした。今回の六本木もドローイングを主体とした素晴らしい展示です。
ブームを呼んでいる今回の安藤展、長年「建築家の版画とドローイング」を扱ってきた私たちには追い風です。磯崎新先生の版画をエディションし始めたのが1977年の「現代と声」企画から、継いで安藤先生の版画をエディションしたのが1984年でした。当時の建築界や美術界の反応は「余技」だの「道楽」だの、まともに取り上げてくれなかった。面と向って「どうせゼネコンに売りつけるんでしょ」と言われたことすらあります。
援助を乞うた親しい友人には「他人の家の図面みたいな版画を誰が買うんですか」と諫言されました。
風は最初は海外からでした。
バブル崩壊、リーマンショックで国内の市場は冷え切り、やむなく海外のアートフェアに私達は活路を見出しました。どこでも飛んで行ってくれる若いスタッフたちに恵まれたこともあり、韓国、台湾、スイス、シンガポール、インドネシア、アメリカ、どこに行っても「アンドーとクサマ」を知らない人はいなかった(草間彌生先生のエディションを開始したのは1982年です)。この二人さえ持っていけばブース代を賄うことができました。
倉庫に積んであった在庫のも、最近ではから平原になりつつあります。
画廊の展示は終わりましたが、安藤作品はいつでもご覧になれますので、どうぞ六本木の展覧会で「私も欲しい!」と思ったら迷わず駒込にお運びください。
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さて、今日と明日は休廊ですが、明後日10月24日からは短い会期ですが、「特集展示:瀧口修造とマルセル・デュシャン」を開催します。
会期=2017年10月24日[火]―10月28日[土]
2017年はデュシャン生誕130年の記念すべき年であり、また現代美術史最大の事件となった既製の便器にR・MUTTとサインしただけの〈泉〉を発表してから(ただし実物は現存せず)、ちょうど100年にあたります。ときの忘れものもささやかですが、デュシャン顕彰の試みとして小展示と中尾拓哉さんのギャラリートークを開催します。
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『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』刊行記念
ギャラリートーク<マルセル・デュシャン、語録とチェス>
日時:2017年10月27日(金)18時より
講師:中尾拓哉
*要予約(既に定員に達したので締切りました)

中尾拓哉さんからのメッセージ
 この度、『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』の刊行を記念し、自著『マルセル・デュシャンとチェス』を軸にした、お話をさせていただきます。
デュシャンがマン・レイとチェスをしている映画『幕間』のシーンに始まり、「デュシャンはこの世界を相手にチェスをしてきたのだろうか、あるいはそうかも知れない」と終わっていく、瀧口修造による『マルセル・デュシャン語録』。その中に散りばめられた言葉とともに、デュシャンがチェスにたいして語った言葉を読みながら、彼がいわゆる「制作」をせずに没頭したとされ、「芸術の放棄」の代名詞となった「チェス」の謎を紐解き、多くの人々を魅了したこの人物の営為に迫ります。


中尾拓哉(なかお・たくや)
美術評論家。1981年生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。2014年に論考「造形、その消失において――マルセル・デュシャンのチェスをたよりに」で『美術手帖』通巻1000号記念第15回芸術評論募集佳作入選。単著に『マルセル・デュシャンとチェス』(平凡社、2017年)。
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●書籍のご案内
TAKIGUCHI_3-4『瀧口修造展 III・IV 瀧口修造とマルセル・デュシャン』図録
2017年10月
ときの忘れもの 発行
92ページ
21.5x15.2cm
テキスト:瀧口修造(再録)、土渕信彦、工藤香澄
デザイン:北澤敏彦
掲載図版:65点
価格:2,500円(税別)*送料250円

10月末までにお申し込みいただいた場合は特別価格:2,500円(税、送料サービス)でおわけします。メールにてお申し込みください。請求書を同封して代金後払いで発送します。

目次(抄):
・Personally Speaking 瀧口修造(再録)
・マルセル・デュシャン語録について 瀧口修造(再録)
・檢眼圖 だれの証拠品、だれが目撃者? 瀧口修造(再録)
・私製草子のための口上 瀧口修造(再録)
・「オブジェの店」を開く構想に関するノート 土渕信彦
・マルセル・デュシャンとマルチプル 工藤香澄
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20170930中尾 拓哉 (著)
『マルセル・デュシャンとチェス』

2017年
平凡社 発行
396ページ
21.6x15.8cm
価格:4,800円(税別)*送料250円
*著者サイン入り
ときの忘れもので扱っています。

気鋭の美術評論家がチェスとデュシャンの失われた関係を解き明かし、制作論の精緻な読み解きから造形の根源へと至る、スリリングにしてこの上なく大胆な意欲作。生誕130年、レディメイド登場100年!
「チェスとデュシャンは無関係だという根拠なき風説がこの国を覆っていた。やっと霧が晴れたような思いだ。ボードゲームは脳内の抽象性を拡張する」──いとうせいこう氏推薦(本書帯より転載)
目次(抄):
・序章 二つのモノグラフの間に
・第一章 絵画からチェスへの移行
・第二章 名指されない選択の余地
・第三章 四次元の目には映るもの
・第四章 対立し和解する永久運動
・第五章 遺された一手をめぐって
・第六章 創作行為、白と黒と灰と
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●本日のお勧め作品は、瀧口修造『マルセル・デュシャン語録』です。
20161217_takiguchi2015_selected_words瀧口修造
『マルセル・デュシャン語録』
1968年
本、版画とマルティプル
外箱サイズ:36.7×29.8×5.0cm
本サイズ:33.1×26.0cm
サインあり
A版(限定部数50部)
発行:東京ローズ・セラヴィ
刊行日:1968年7月28日
販売:南画廊

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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください

『マルセル・デュシャン語録』については土渕信彦さんのエッセイをお読みください。
11.『マルセル・デュシャン語録』(その1)20150713

12.『マルセル・デュシャン語録』(その2)20150813

13.『マルセル・デュシャン語録』(その3)20150913

●六本木の国立新美術館で「安藤忠雄展―挑戦―」が開催されています。
会期:2017年9月27日[水]~12月18日[月]
オープニングのレポートはコチラをご覧ください。

●ときの忘れものは、〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました(詳しくは6月5日及び6月16日のブログ参照)。
電話番号と営業時間が変わりました。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~18時。日・月・祝日は休廊。

JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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