追悼 ジョナス・メカス

井戸沼紀美「メカスさんに会った時のこと」


「もうご高齢だから、早く会いに行っておきな」。誰かのそんな、冗談交じりの言葉を間に受けて、友人とNYへ向かったのが2014年。午前11:00頃だったと思う。ご自宅を訪ねると、メカスさんは初め、少々困惑したような顔をしていた。けれどそんな表情もつかの間、彼はキッチンそばのテーブルに我々を招き、炭酸水を用意して話を聞いてくれようとした。ひどく拙い英語にも、思い返すと恐ろしいほど身の程知らずな質問にも、目をそらさずに。厳しさと、そして大きな優しさをもって言葉を返してくれた。のちのメールでTigerとPie-Pieと呼ばれていた2匹の猫が、あたりをうろついて。記憶に残っているのは帰り際、当時持っていた手帳にサインをお願いしたときのこと。名前を書いていただいて、大喜びしている私たちを「ちょっと待って」といった具合に引き止め、サインの横に花を描き足してくれたのだ。思いがけないご褒美をもらったみたいに嬉しかったのを覚えている。帰り際、メカスさんはエレベーターまで我々を見送ってくれた。そのドアが閉まってからもずっと、あの決して長くない時間のことが心の中を漂っている。

①一緒にNYに行った友達を交えた、メカスさんとの写真一緒にNYに行った友達を交えた、メカスさんとの写真


②メカスさんが吉増剛造さんの写真を抱えている様子メカスさんが吉増剛造さんの写真を抱えている様子


③文章に書いた、メカスさんがサインの横に花を書いてくれている様子文章に書いた、メカスさんがサインの横に花を書いてくれている様子
いどぬま・きみ

井戸沼紀美 Kimi IDONUMA
1992年生まれ、都内在住。明治学院大学卒。これまでに手掛けたイベントに『ジョナス・メカスとその日々をみつめて』(2014年)、『ジョナス・メカス写真展+上映会』(2015年)、『肌蹴る光線 ーあたらしい映画ー』(2018年~)がある。

INTERVIEW WITH JONAS MEKAS 2014

2014/09/09 NYのメカスさん宅にてメカスさんを井戸沼紀美さんがインタビューした動画です。

●本日のお勧め作品はジョナス・メカスです。
mekas_12_Peter_Beard_and_John_enacting_"Peter Beard and John enacting a Hollywood "fight".
Montauk, Aug. 1972"
1972年 (Printed in 1999)
Type-Cプリント
イメージサイズ:49.0x32.3cm
シートサイズ :50.7x40.6cm
Ed.10  サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●1月23日に亡くなったメカスさんを偲びジョナス・メカス上映会(DVD)を開催しています。
2005年10月メカス会期:2019年2月5日[火]―2月9日[土]
代表作「リトアニアへの旅の追憶」は毎日上映するほか、「ショート・フィルム・ワークス」、「営倉」、「ロスト・ロスト・ロスト」、「ウォルデン」の4本を日替わりで上映します。
上映時間他、詳しくはホームページをご覧ください。
2月9日夜のトーク「メカスさんを語る」(ゲスト:飯村昭子さん、木下哲夫さん)は既に満席となり受付を終了しました。
「リトアニアへの旅の追憶 Reminiscences of a Journey to Lithuania」
監督:ジョナス・メカス Jonas Mekas
1972年作品/1950~1972年撮影(モノクロ&カラー/87分)
[ジョナス・メカス自身による解説]
この映画は3つの部分から構成されている。
まず第一の部分は、私がアメリカにやって来てからの数年、1950~53年の間に、私の最初のボレックスによって撮られたフィルム群から成っている。そこでは、私の弟アドルファスや、そのころ私達がどんな様子であったかを見ることができる。ブルックリンの様々な移民の混ざりあいや、ピクニック、ダンス、歌、ウィリアムズバーグのストリートなどを。
第二の部分は、1971年に、リトアニアで撮られた。ほとんどのフィルム群は、私が生まれた町であるセミニシュケイを映しだしている。そこでは、古い家や、1887年生まれの私の母や、私たちの訪問を祝う私の兄弟たるや、なじみの場所、畑仕事や、他のさして重要ではないこまごまとしたことや、思い出などを、見ることになる。ここでは、リトアニアの現状などというものは見ることはできない。つまり、27年の空白の後、自分の国に戻って来た「亡命した人間」の思い出が見られるだけなのである。
第三の部分はハンブルクの郊外、エルンストホルンへの訪問から始まる。私たちは、戦争の間l年間、そこの強制労働収容所で過ごしたのだった。その挿入部分の後、われわれは私たちの最良の友人たちの一部、ペーター・クーベルカ、ヘルマン・ニッチ、アネット・マイケルソン、ケン・ジェイコブスと共に、ウィーンにいる。そこでは、クレムスミュンスターの修道院やスタンドルフのニッチの城や、ヴィトゲンシュタインの家などをも見ることができる。そしてこのフィルムは、1971年8月のウィーンの野菜市場の火事で終わることになる。 
 ジョナス・メカス

●上映会の会期中、メカスさんの著書を特別頒布します。
『ジョナス・メカス―ノート、対話、映画』表紙ジョナス・メカス ノート、対話、映画
著者:ジョナス・メカス
訳:木下哲夫、編:森國次郎
A5判 336ページ
せりか書房
価格:4,700円
1949年、肌寒いニューヨーク港に難民として降り立ったジョナス・メカス。入手したボレックスでニューヨークを、友人たちを、自らを撮り続けてきたメカスが語る、リトアニアへの想い、日記映画とニューヨークのアヴァンギャルド、フィルム・アーカイヴスの誕生…「ここに集められた文章は、どれも思い出であり、わたしの人生の一部である」。
主要作品のメカス自身による解説とコメンタリーを収録。

メカスどこにもないところからの手紙どこにもないところからの手紙
著者:ジョナス・メカス
訳:村田郁夫
19.5×12.8cm 199ページ
書肆山田
価格:2,500円


◆ときの忘れものはジョエル・シャピロ展 を開催します。
会期:2019年2月8日[金]―2月23日[土] 11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
※誠に勝手ながら2月19日(火)の営業時間は17時までとさせていただきます。
2月3日ブログに出品作品の概要を掲載しました。
シャピロ展DM画像大
1941年生まれのジョエル・シャピロはアメリカを代表する彫刻家。
単純な長方形で構成された彫刻が国内では博多駅前の西日本シティ銀行(磯崎新設計)や川村記念美術館などに設置収蔵されています。日本ではかつてギャルリームカイで個展がありましたが、近年は展観の機会があまりありません。
本展では、1979-80年にかけて制作した初期リトグラフや、1988年にマホガニー、桜、クルミなどの多種の木を組合せて制作した木版画をご覧いただきます。


◆ときの忘れものは3月27日~31日に開催されるアートバーゼル香港2019に「瑛九展」で初出展します。
・瑛九の資料・カタログ等については1月11日ブログ「瑛九を知るために」をご参照ください。
・現在、各地の美術館で瑛九作品が展示されています。
埼玉県立近代美術館:「特別展示:瑛九の部屋」で120号の大作「田園」を公開、他に40点以上の油彩、フォトデッサン、版画他を展示(4月14日まで)。
横浜美術館:「コレクション展『リズム、反響、ノイズ』」で「フォート・デッサン作品集 眠りの理由」(1936年)より6点を展示(3月24日まで)。
宮崎県立美術館<瑛九 -宮崎にて>で120号の大作「田園 B」などを展示(4月7日まで)。

●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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