先日、アーティゾン美術館で「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」を観覧してきました。

会期:2021年2月13日[土] - 5月9日[日]
10:00 - 18:00(毎週金曜日の夜間開館は、当面の間中止)*入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(5月3日は開館)
主催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館
会場:アーティゾン美術館 6・5・4階 展示室

展覧会概要
アーティゾン美術館の新しいコレクションを一堂にご紹介します。近年、石橋財団は印象派や日本近代洋画など、従来の核となるコレクションを充実させる一方で、抽象表現を中心とする20 世紀初頭から現代までの美術、日本の近世美術など、コレクションの幅を広げています。それら新しいコレクションの一部は、2020 年1 月の開館以来徐々にご紹介してきましたが、まだまだお見せしていない作品があります。キュビスムの画家たち、アンリ・マティスのドローイング、マルセル・デュシャン、抽象表現主義の女性画家たち、瀧口修造と実験工房、オーストラリアの現代絵画など、新収蔵品約120 点を含む約250 点で構成する本展では、さらに前進を続けるアーティゾン美術館の今をお見せします。(同館資料より)

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アーティゾン美術館の前身は、「ブリヂストン美術館」(1952年に開館)で、2020年1月に館名を変更し、新しい美術館として生まれ変わりました。展示室は23階建て高層ビルの4~6階の3フロアで、旧美術館の約2倍の面積に拡張されています。1階入り口は吹き抜けの開放的な空間にカフェが併設されています。入り口で検温後に2階へ上がるとロッカーとミュージアムショップがあります。ロッカーに荷物を預けて3階へ上がり受付へ、そして、エレベーターで6階へ上がって展示室へと進みます。
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展示は以下のようなセクションに分かれていました。
藤島武二《東洋振り》とコレクションの名品
キュビスム
カンディンスキーとクレー
倉俣史朗と田中信太郎
抽象表現主義の女性作家
瀧口修造と実験工房
第二次大戦後のフランス抽象美術
デュシャンとニューヨーク・ダダ
具体の絵画
オーストラリア美術-アボリジナル・アート
日本の抽象絵画
アンリ・マティスの素描を中心に
芸術家の肖像写真コレクション-19-20 世紀フランス・安齊重男・トム・ハール

新収蔵の作品には「新収蔵」とパネルに書かれており、随分多くの作品を新たにコレクションされたことが伺えます。

今回知って驚いたのは、1986年に京橋の旧ブリヂストン本社ビルが建築改修工事を行った際、総合的な空間デザインをしたのが倉俣史朗さんであったということ。ロビー等に設置されたという《ガラスのベンチ》や《エキスパンド・チェアー》が展示されていました。
家に帰ってPHAIDONが発行した倉俣史朗作品集を調べたところ、載っていました!
IMG_6418『Shiro Kuramata Catalogue of works』(PHAIDON)p.343より
IMG_6420『Shiro Kuramata Catalogue of works』(PHAIDON)p.343より

大きなガラス板が座面になっている椅子《ガラスのベンチ》(1986)は、普段は自由に座れるようにしているそうですが、今回は展示物の一つとなっていました。「どうぞお座りください」と声をかけていただき、恐る恐る大きなガラス板に腰かけました。全体重をかけてはいけないように思ってしまう緊張感のある椅子で、かっこいいデザインでした。
IMG_6226倉俣史朗《ガラスのベンチ》(1986)

倉俣史朗と田中信太郎」セクションに展示されている《エキスパンド・チェアー》の中のクッションはスウェードのような生地で、展示品とは別に会場のいたるところに置かれた《エキスパンド・チェアー》は淡い色のレザー(?)に張り替えられており、こちらは自由に座ることができます。包み込まれるような体にフィットする椅子。行かれる方は是非お座りになることをお勧めします。
IMG_6205《エキスパンド・チェアー》(1986)
IMG_6214自由に座れる休憩用の《エキスパンド・チェアー》

芸術家の肖像写真コレクションー19-20世紀フランス・安齊重男・トム・ハール」の小部屋はその名の通り、芸術家のモノクロのポートレートがずらりと展示されており、圧巻でした。
安齊重男さんによる写真は、ご存命中に手許にあったというヴィンテージ写真が中心となっており、安齊さんの自選による写真だそうで、倉俣史朗さん、オノサト・トシノブさん、菅井汲さん、瀧口修造さんらの穏やかな表情をしたポートレートや、名前は知っているけど顔は知らなかったという方まで、個人的に楽しい展示空間でした。
IMG_6207安齊重男《菅井汲、パリ、1974年10月》

瀧口修造と実験工房」のセクションは、瀧口修造さんの水彩やデカルコマニー、バーントドローイングなど全てが新収蔵作品のようで、風景画のようなデカルコマニーには魅了されました。
IMG_6224瀧口修造デカルコマニー

デュシャンとニューヨーク・ダダ」のセクションではデュシャンの《チェス・ケース》や《ホワイト・ボックス》が展示されており、コーネルのアッサンブラージュやコラージュ作品の中の小さな世界は引き込まれる魅力があり、しばらく釘付けになりました。
IMG_6221マルセル・デュシャン
IMG_6218ジョセフ・コーネル

具体」のコーナーは力強い大きな作品が並び、溢れんばかりのエネルギーがあちこちで爆発していました。元永定正さんの1965年のたらし込み技法の大作《無題》は流動的な迫力のある作品でした。
IMG_6213元永定正《無題》1965年

具体のセクションを抜けるとすぐに、見覚えのある方もいらっしゃると思いますが、オノサト・トシノブ《朱の丸》が展示されていました。大きい作品ではありませんが、オノサトさんのべた丸の中でも群を抜いていい作品ではないでしょうか。
IMG_6215先日アーチゾン美術館にいってきました。
建物も、新収蔵品も素晴らしく圧倒されました。
オノサトトシノブ、遠くから見た時曼陀羅にみえました。
とても美しく、ビックリしました。最高の場所に飾られていますね。
教えて頂き有難うございました。
(Rさんのメールより)>


カンディンスキー、パウル・クレーの作品もまとまってコレクションされており、とても素晴らしかったです。

1956年から収集をしているという石橋財団のコレクションは、2020年12月の時点で2812点(芸術家の肖像写真コレクション等を除き)に上るそうで、財団が後継者に引き継がれるたびに収集してきた作品の分野が拡張され、豊かな広がりと厚みのあるコレクションになっているようです。今後どのようなものが新たに収蔵されていくのか、注目していきたいと思います。
おだち れいこ

塩見允枝子のエッセイ「フルクサスの回想」第4回を掲載しました。合わせて連載記念の特別頒布会を開催しています。
Dream Inducer塩見允枝子先生には11月から2021年4月までの6回にわたりエッセイをご執筆いただきます。2月28日には第4回目の特別頒布会を開催しました。お気軽にお問い合わせください。


東京オペラシティアートギャラリーで「難波田龍起 初期の抽象」が3月21日(日)まで開催されています。

東京都美術館で「没後70年 吉田博展」が3月28日(日)まで開催されています。

名古屋市美術館で『「写真の都」物語─ 名古屋写真運動史: 1911-1972』展が3月28日(日)まで開催されています。

宮崎県立美術館で「コレクション展第4期 瑛九抄」が 4月 6日(火)まで開催され、瑛九の油彩、フォトデッサン、版画など30点近くが展示されています(出品リスト)。

●東京・アーティゾン美術館で「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」展が5月9日[日]まで開催され、オノサト・トシノブ、瀧口修造、元永定正、倉俣史朗など現代美術の秀作が多数展示されています。

●東京・天王洲アイルの寺田倉庫 WHAT で「謳う建築」展が5月30日(日)まで開催され、佐藤研吾が出品しています。

●ときの忘れものが青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転して3年が経ちました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
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