Artists Recently 第14回/野口琢郎

岐阜市の新市庁舎に大作が設置されました


202109野口琢郎Landscape#50 -岐阜楽市楽座図‐「Landscape#50 -岐阜楽市楽座図‐」

8月11日、縦2m×横5mの大作「Landscape#50 -岐阜楽市楽座図‐」が岐阜市新市庁舎内の市民交流スペース「ミンナト」に設置され、12日には岐阜市長も出席され除幕式が行われました。
この作品は昨年夏に岐阜信用金庫、ぎふしん記念財団から頂いたご依頼で、新市庁舎開庁のお祝いの寄贈作品として、岐阜市を洛中洛外図風に描いて欲しいというものでした。
作家を始めて20年程になりますが、私にとって過去最大の作品となり、構想から約9ヶ月に及ぶ作品制作はかなり追い込んだハードなものでしたが、昨年から世の中はコロナ禍となり、美術作家にとっても危機的状況だった中での有り難いご依頼でした。

202109野口琢郎市民交流スペース「ミンナト」市民交流スぺース「ミンナト」

この作品は5枚の木パネルを連結し、金の雲の合間から見える岐阜市の町並を描いていて、画面中央に新市庁舎があります。
雲の形は、昔ながらの洛中洛外図のようなモクモクとした雲の形そのままではなく、以前制作した洛中洛外図のカクカクとした雲でもなく、新しい表現の雲にしたいと思い、現代的で、少しカワイイ円の構成で表現しようと思いつきました。
悩みに悩んでこの雲を思いついた時、完成した作品像が瞬時に頭の中に浮かび、この作品はいい作品になると確信しました。
雲の箔押しは、雲の軽さや、町との距離を感じられるように、いつも使う石炭の黒を使いませんでした。

202109野口琢郎中心部の町並中心部の町並

202109野口琢郎中央に新市庁舎中央に新市庁

次に町並の表現は、実際の主要な道路などを入れ、ある程度忠実に岐阜市の町並を描く必要があったので、いつものLandscapeシリーズの抽象的な表現と融合させ箔を押しました、これは私にとって今までに無い新たなチャレンジでした。
画面を横断する長良川、そして金華山に岐阜城、鵜飼、新市庁舎、岐阜信用金庫、駅前の広場や信長像、花火大会、いなば神社、円徳寺他、そして雲の間に見えている範囲だけは小学校、中学校、高校、大学なども校章を入れて描いています。
一校一校ホームページを検索して校章を探し、ホームページが無ければGoogleMapで校舎画像を見て校章を探したりと、わざわざ仕事を増やしていましたが、学校を入れた事で除幕式の時に皆さんが母校があるかと探して楽しんでおられたので、嬉しかったです。

202109野口琢郎金華山と岐阜城、鵜飼金華山と岐阜城、鵜飼

また、金華山の表現にもかなり悩んだのですが、調べると、金華山に生息するツブラジイという木が5月頃に黄色い花をつける事が名前の由来にもなっていると知り、木の形も本物に近い形を考え、型紙を作って金箔と青い硫化銀の箔でツブラジイの色づく金華山を箔押ししました。
一番右のパネルは少し季節が進み、紅葉の混ざる山を描きました、長良川も鵜飼の辺りだけ夜の川になっていたり、遊び心で雲の隙間から見える満月も描いたりしています。

そしてこの作品が無事に完成した時は、今まで経験した事のなかった位の充実感や達成感がありました。
この「Landscape#50 -岐阜楽市楽座図‐」は現時点で一番の代表作になったと思います。
まだコロナ禍が続くので、なかなか多くの皆さんに観て頂くことができないかもしれませんが、岐阜市民の皆さんのお気に入りの待ち合わせ場所になったり、観光名所の一つになれたりしたら良いなと願っています。

202109野口琢郎岐阜新聞に掲載岐阜新聞に掲載

ちなみに、以前から作品制作は常に夜中で、昨年子供ができて昼型にしようかと思ったのですが、20年間も昼夜逆転で制作してきたもので、一番集中できるのが夜中というリズムは簡単に変える事は難しく、今回もタイムリミットがある大仕事でしたので夜中に制作しました。
朝まで制作し、帰ってから起きた息子と遊び、午後まで寝て、また息子と遊んだり、晩御飯やお風呂上がりの世話などしてから、また朝まで制作をするという本当にドタバタの日々でしたが、コロナ禍で自由に外出して気分転換もできない中、とにかく可愛く、凄い速度で成長する息子の存在が心の癒やしや喜びとなり、妻や家族の支えもあって無事に完成する事ができました。
設置に妻と息子を連れて行こうかと迷いましたが、まだ息子は1歳半で、これお父ちゃんが作ったんやでと言っても理解できないので 笑
もう少し大きくなってから息子に自慢する為に、家族で岐阜旅行に行きたいと思います。

202109野口琢郎撮影 谷口巧撮影 谷口巧

のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家 箔屋野口に戻り、西陣織に使われる引箔製造の技法を応用し箔画作家として活動を開始、2004年に初個展開催、以来毎年個展を行なっている。ときの忘れものでは2012年2014年2018年に個展開催。
漆を塗った木のパネルに金・銀・プラチナ箔や石炭粉を接着する独自の技法を用いて、抽象的な街の風景〈Landscape〉シリーズや、花火をモチーフにしたシリーズ、海と空、夜明けや星空などの風景を題材に希望の光を感じられる美しさを作品に表現している。箔画の最大の魅力は、画面全体に箔が施されている為に、観る角度、光源の強弱や方向によって輝きが変化する所にあります。

●本日のお勧めは瑛九です。
qei_161瑛九 Q Ei
作品
1954年頃
フォト・デッサン
20.1×25.3cm
杉田都のサインあり
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●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
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