杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第86回
模型でスケッチをする
最近また「ときの忘れもののブログを見て。。」と声をかけてもらうことが多くなりました。
このプラットフォームに毎月エッセイを投稿させていただいてからもう7年くらい。忙しい時も、書くことがなかなか見つけられない時にも、短くても良いから続けることができているおかげで、いろいろな縁に恵まれていることをふと実感します。
吉本隆明さんが糸井重里さんとの対談本で「10年続ければ誰でも一人前になる」と話していたけれど、僕もあと3年頑張れば、書き手になることができるんだろうか(笑)? なんて思ってしまいます。(もちろん毎日書くこと前提で。だと思うのだけれど)
第84回の記事で仕事のツールに少し綴りました。
ここ一年くらいは何かあるとi padで描き、メモし、そして早い段階からCADで図面を引いていたのだけれど、ある時同僚から「日本人だからデジタルツールに強いんだね」なんて言われたものだから、ラベル付けされたような気がしてしまって。実際そういうわけでも全然ないので、途端にその働き方に興味がなくなってしまいました(笑)。
ということで今は、二年前に戻ったように模型スケッチをしながら、計画中の新築と改修の住宅をそれぞれスタディしています。


プロジェクトのスケッチ模型
模型はズントー事務所時代からずっと身近でメインのスタディツールでしたが、どうにも材料と場所に費用がかかるので、違った方法を模索していました。
しかし、紙と鉛筆での試行錯誤に加えて、やはり最終的に現実世界に建つ建築を目標に考えれば、それに一番近い模型が確認しやすいし、空間から細部からマテリアルへと交互にスケールを抽象・具象化しながら検討しやすい。模型特有の精度の荒さで、思ってもいなかった良い意味でのハプニング・デザインのジャンプも起こりやすい。作業していると、久しぶりにキャッチボールをしたような気持ちになりました。あまり使っていなかった身体の一部を、再び手入れしながら慣らしていくような感覚です。
そんなことを考え直している時期に、教えているETHの学生がエスキスで持ってきたのは、計画しているプロジェクトと関係しているようで、寸法はめちゃくちゃな「カリカチュア」としての模型。それを見た時に、一年生の二学期でこんな考え方ができるのか。と正直とても驚いてしまいました。
そこで模型はプロジェクトを説明するためのフィックスしたものではなく、プロジェクトを客観視して発展させるための柔らかなツール。そうした具体的で、抽象さを表したものを作りながら計画していくことは、当初自分の考えていたこととは全く違うものに行き着く可能性があって、さらにプロジェクトをわくわくさせていくように思います。
(すぎやま こういちろう)
■杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。
・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
●本日のお勧めは、杉山幸一郎です。
杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
"Museum 01"
2019年
MDF、アルミ
55.0×18.0×25.0cm
Ed.1
サインあり
制作は家具職人Serge Borgmannと協働
Photo © Serge Borgmann & Koichiro Sugiyama
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●軽井沢で「倉俣史朗展 カイエ」が始まりました。
会場:軽井沢現代美術館
長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉2052-2
会期:2023年4月27日(木)~11月23日(木・祝日)
休館日:火曜、水曜 (GW及び、夏期は無休開館
●倉俣史朗の限定本『倉俣史朗 カイエ Shiro Kuramata Cahier 1-2 』を刊行しました。
限定部数:365部(各冊番号入り)
監修:倉俣美恵子、植田実
執筆:倉俣史朗、植田実、堀江敏幸
アートディレクション&デザイン:岡本一宣デザイン事務所
体裁:25.7×25.7cm、64頁、和英併記、スケッチブック・ノートブックは日本語のみ
価格:7,700円(税込) 送料1,000円
詳細は3月24日ブログをご参照ください。
お申込みはこちらから
●ジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」を販売しています。
映像フォーマット:Blu-Ray、リージョンフリー/DVD PAL、リージョンフリー
各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格等については、3月4日ブログをご参照ください。
模型でスケッチをする
最近また「ときの忘れもののブログを見て。。」と声をかけてもらうことが多くなりました。
このプラットフォームに毎月エッセイを投稿させていただいてからもう7年くらい。忙しい時も、書くことがなかなか見つけられない時にも、短くても良いから続けることができているおかげで、いろいろな縁に恵まれていることをふと実感します。
吉本隆明さんが糸井重里さんとの対談本で「10年続ければ誰でも一人前になる」と話していたけれど、僕もあと3年頑張れば、書き手になることができるんだろうか(笑)? なんて思ってしまいます。(もちろん毎日書くこと前提で。だと思うのだけれど)
第84回の記事で仕事のツールに少し綴りました。
ここ一年くらいは何かあるとi padで描き、メモし、そして早い段階からCADで図面を引いていたのだけれど、ある時同僚から「日本人だからデジタルツールに強いんだね」なんて言われたものだから、ラベル付けされたような気がしてしまって。実際そういうわけでも全然ないので、途端にその働き方に興味がなくなってしまいました(笑)。
ということで今は、二年前に戻ったように模型スケッチをしながら、計画中の新築と改修の住宅をそれぞれスタディしています。


プロジェクトのスケッチ模型
模型はズントー事務所時代からずっと身近でメインのスタディツールでしたが、どうにも材料と場所に費用がかかるので、違った方法を模索していました。
しかし、紙と鉛筆での試行錯誤に加えて、やはり最終的に現実世界に建つ建築を目標に考えれば、それに一番近い模型が確認しやすいし、空間から細部からマテリアルへと交互にスケールを抽象・具象化しながら検討しやすい。模型特有の精度の荒さで、思ってもいなかった良い意味でのハプニング・デザインのジャンプも起こりやすい。作業していると、久しぶりにキャッチボールをしたような気持ちになりました。あまり使っていなかった身体の一部を、再び手入れしながら慣らしていくような感覚です。
そんなことを考え直している時期に、教えているETHの学生がエスキスで持ってきたのは、計画しているプロジェクトと関係しているようで、寸法はめちゃくちゃな「カリカチュア」としての模型。それを見た時に、一年生の二学期でこんな考え方ができるのか。と正直とても驚いてしまいました。
そこで模型はプロジェクトを説明するためのフィックスしたものではなく、プロジェクトを客観視して発展させるための柔らかなツール。そうした具体的で、抽象さを表したものを作りながら計画していくことは、当初自分の考えていたこととは全く違うものに行き着く可能性があって、さらにプロジェクトをわくわくさせていくように思います。
(すぎやま こういちろう)
■杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。
・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
●本日のお勧めは、杉山幸一郎です。
杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro"Museum 01"
2019年
MDF、アルミ
55.0×18.0×25.0cm
Ed.1
サインあり
制作は家具職人Serge Borgmannと協働
Photo © Serge Borgmann & Koichiro Sugiyama
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●軽井沢で「倉俣史朗展 カイエ」が始まりました。
会場:軽井沢現代美術館長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉2052-2
会期:2023年4月27日(木)~11月23日(木・祝日)
休館日:火曜、水曜 (GW及び、夏期は無休開館
●倉俣史朗の限定本『倉俣史朗 カイエ Shiro Kuramata Cahier 1-2 』を刊行しました。
限定部数:365部(各冊番号入り)
監修:倉俣美恵子、植田実
執筆:倉俣史朗、植田実、堀江敏幸
アートディレクション&デザイン:岡本一宣デザイン事務所
体裁:25.7×25.7cm、64頁、和英併記、スケッチブック・ノートブックは日本語のみ
価格:7,700円(税込) 送料1,000円
詳細は3月24日ブログをご参照ください。
お申込みはこちらから
●ジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」を販売しています。
映像フォーマット:Blu-Ray、リージョンフリー/DVD PAL、リージョンフリー各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格等については、3月4日ブログをご参照ください。
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