宇部の村野藤吾建築レポート 

先日、山口県宇部市に出張する機会がありました。
山口県は岩国しか訪れたことがなく、宇部市は初めて。
宇部市といえば、真っ先思い浮かぶのは石上純也の「maison owl - メゾン・アウル」。行ってみたい建築リストの上位だったので、出張で行けるなんてラッキーと思っていたのですが、おひとり様出張となり、一人でレストランに行ってもな~~と怖気づいて行くのを断念(次回は必ず!)。
磯崎建築の秋吉台国際芸術村や山口情報芸術センターも見に行きたかったのですが、そんな時間の余裕はなく、ときの忘れもの亭主に建築のおすすめを尋ねたところ「宇部市渡辺翁記念会館は必見です。昭和の名建築だよ。」「宇部市文化会館は村野先生の原点なので、ぜひご覧になってください。」と教えていただいたので見てきました。

必見の渡辺翁記念会館は、残念ながら月曜日は休館日で、中に入れずがっくり(見学には予約が必須とのことですので、行かれる方はお電話をしてください)。
とりあえず、窓から中を覗いたり、建物の周りを一周して外観を堪能。

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IMG_6961入口の左右には、炭都宇部市を象徴する鉱夫が人造石に彫られたレリーフがあります。

IMG_6960ふんだんに使われたガラスブロック(ガラスレンガ?)と、お花模様のような柵。張り出た屋根を支える真っ黒い十字架の柱。

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村野藤吾は渡辺翁記念会館のご縁で、宇部市の建築設計を続々と任されたそうで、1939年から1953年までの間に、宇部銀行(現旧宇部銀行館)、宇部窒素工業(現宇部興産ケミカル工場事務所)、宇部油化工業(現協和発酵)、宇部興産中央研究所、宇部興産ビルが完成したとのこと。

渡辺翁記念会館の隣にある宇部市文化会館もお休みのようでしたが、人の出入りがあったので、ちょっと中を拝見。ホールの中には入れませんでしたが、階段だけでもなんだか美しく感じる。この建物は、2024年1月より約2年、耐震改修・老朽化による大規模修繕等を行なうそうです。
二軒とも空振りで満足できなかったので、もう一軒観に行こうと宇部銀行(現旧宇部銀行館)まで歩くことに。
途中、大きな天井を支える力強くて立派な柱だな~と思って立ち止まって調べたら、こちらも村野藤吾による意匠設計。複合施設「宇部興産ビル」でANAクラウンホテルが入居していました。村野藤吾の最後の建築だそうです。
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ようやく宇部銀行(宇部市旧宇部銀行館「ヒストリア宇部」)へ辿りつき、今度こそは! と受付で見学を希望したら、「まぁ東京から!どうぞ、どうぞ」と、地下室や屋上など普段鍵を閉めているところを開けてくださり、資料もたくさんいただきました。

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天井が高く、大きな窓があり、その意匠があまりにも美しくて素晴らしくて感激。ここに何時間でもいられると思うほど、優雅な気持ちにさせてくれる天井です。

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至る所に元銀行を思わせる重厚な扉や金庫がありました。

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IMG_7021修繕工事を行い、現在は市民によるコンサート・発表会などのイベントの開催や会議など、多目的に気軽に利用できるそうですが、この大空間はもっといい活用方法があればいいのになぁと思いました。

宇部市に行かれる機会がありましたら、村野藤吾の初期から晩年の建築を巡ってみてください。そして、レストランは「maison owl - メゾン・アウル」へ!
おだち れいこ

*画廊亭主敬白
宇部の渡辺翁記念会館の長椅子に腰かけてボーとして時間をつぶしたのはいつだったか。
1970年代、亭主は大きなカルトンケースを三つも両手に抱えて日本中を行商して歩いていました。
売れなくて帰りの旅費さえ心配しなければならないような旅の途次、ただで過ごせるのは駅か図書館(美術館は入館料がかかる)、または何も催事のない日の市民会館だった。
建築好きだったとはいえ、その日、村野藤吾の重厚な空間を体験できたことは金の無い心細さを補ってあまりあるものだった。半世紀前の懐かしい空間を、大番頭の尾立が「maison owl - メゾン・アウル」の代わりに訪ね、写真をいっぱい撮ってきてくれた。長生きはするものですね。

宮崎県立美術館の【旅する美術館】
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チラシ表面
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チラシ裏面
美術館があなたのまちへ旅をする「旅する美術館」(通称タビビ)、今年は椎葉村と高千穂町で開催します。
県立美術館の収蔵作品から、ピカソやクレーら国内外の巨匠たちによる名品や、瑛九をはじめ本県を代表する郷土作家の作品などを展示します。身近な場所で美術館の作品を鑑賞できる、絶好の機会です!
また関連イベントとして、展示作品のぬりえの配布や創作体験、学芸員による作品解説も計画しています。
お近くにお住まいの方は、ぜひ会場にお越しください。
11月2日(木)~7日(火)・椎葉村交流拠点施設 Katerie
11月10日(金)~15日(水)・高千穂町コミュニティセンター
※開場時間 10:00~17:00(両会場とも初日は13:30から)
(学芸員・小林美紀さんのfacebookより転載)

◆埼玉県立近代美術館で「イン・ビトウィーン」展が始まりました(会期:2023.10.14 [土] - 2024.1.28 [日]、出品作家:早瀬龍江、ジョナス・メカス林芳史、潘逸舟)。
のちほどレビューを掲載しますが、ときの忘れものも少しお手伝いしました。招待券が若干あるので、ご希望の方はメールでお申込みください。

●ときの忘れものはジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」を販売しています。
同ボックスは今年度の『ボローニャ復元映画祭(Il Cinema Ritrovato)』で「ベストボックスセット賞」を受賞しました。
映像フォーマット:Blu-Ray、リージョンフリー/DVD PAL、リージョンフリー
各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格:
Blu-Ray版:18,000円(税込)
DVD版:15,000円(税込)

商品の詳細は3月4日ブログをご参照ください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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