画廊では「靉嘔展」が始まりました。


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靉嘔先生は1931年5月19日生まれ、つい先日めでたく 93歳を迎えられました。
20190608軽井沢AY-O展2019年6月軽井沢・ニューアートミュージアムにて。
このとき開催されたイベント「靉嘔のレインボー・ディナーショー」については中村惠一さんの素晴らしいレポートをお読みください。
今回の「靉嘔展」の出品概要は6月5日のブログに掲載しましたが、50号のアクリル2点を始め、オブジェ、コラージュ、タぺストリー、ドローイング、版画など色彩溢れる作品群がときの忘れものの空間を埋め尽くしています。

Rainbow Field of Finnegans Wake #8靉嘔
"Rainbow Field of Finnegans Wake #8"
1994
カンヴァスにアクリル
91.0×116.7cm
サインあり

亭主が美術の世界に入ったのは、1974年、毎日新聞の販売局勤務のサラリーマンでした。
高校時代からの恩人、高崎の井上房一郎さんに連れられて鎌倉の神奈川県立近代美術館の土方定一先生をお訪ねしました。
井上さんが「私の後輩だが新しく版画の普及の事業をおこしたいと言っている。カになってほしい」と頼んでくださった。
すると土方さんは「おれは版画はだめだ、版画のことならクボテーがいい、クボテーのところへ行ってくれ」。
当時二十八歳、美術とは縁もゆかりもないところにいて、もちろん土方先生も初めてなら、クボテーなる人物が何者かさえわからない。
東京へ戻って、クボテーなる人物が、市谷に住む久保貞次郎という美術評論家だと知り、早速電話をかけました。電話口の主は若々しい声で、「ボクがクボサダジローです。ボクがそちらへ行きましょう」と驚くほどアッサリと会うことを約束してくれ、翌日、竹橋の毎日新聞社受付に現われたのでした。
こうして久保貞次郎先生を知り、小学校教師だった尾崎正教先生、刷り師の岡部徳三先生、ニューヨークからたまたま帰国中だった木村利三郎先生たちが次々と現れ、会員制による現代版画の版元=現代版画センターの骨格が作られていきました。
彼ら師匠たちの導きで出会ったのが、清瀬に住む靉嘔先生と群馬県桐生に住むオノサト・トシノブ先生でした。
靉嘔、オノサトが私たちの原点となりました。
現代版画センターのファースト・エディションは靉嘔先生の「I love you(Love letter(s)」でした。
001-1_靉嘔_ love you靉嘔 Ay-O
"I love you"(Love letter(s))
1974年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
イメージサイズ:53.0×34.0cm
紙サイズ:61.7×44.2cm
Ed.11,111
サインあり
*レゾネNo.267、レゾネのタイトル表記は「Love letter(s)」
*現代版画センターエディション
*今回は会期中、10,000円にて特別頒布します。

今思うと、靉嘔先生も岡部徳三先生もそして私たちも若かった。
先ず紙ですが、富山で機械漉きの新鳥の子という和紙を特別に漉いてもらいました。トラックで運ばれてきた量に私たちは圧倒されました。
岡部先生は11,111部を約一か月かけて表面の凸凹した和紙に3万3千回以上(三色ですので)手で刷り上げました。洋紙と違い、表面が滑らかでないので、ヤレ(失敗作)も相当でました。
刷り上がった作品を、秦野にあった岡部先生の工房から清瀬の靉嘔先生のアトリエに運び込み、靉嘔先生は私たちを助手にして16時間でその全てにサインを入れました。
鉛筆削りの脇では数十本の鉛筆がどんどん短くなる。まるでフルクサスのイベントのような一日でした。
荵・ソ晁イ櫁ヲ句ュヲ莨・IMG_0820あれから40数年、2018年10月27日、真岡で開催された久保貞次郎の会にて。
右から綿貫令子、綿貫不二夫、靉嘔先生ご一家(撮影:堀宜雄)

靉嘔展
会期:2024年6月12日(水)~6月22日(土)11時~19時 *日・月・祝日休廊
靉嘔展_案内状_表1200先月93歳を迎えた靉嘔先生(1931年5月19日生まれ)は同世代の池田満寿夫磯辺行久らと1953年に瑛九が創設したデモクラート美術家協会に参加。1960年に渡米、オノ・ヨーコ、ジョージ・マチューナスらと交流し、1966年ヴェニス・ビエンナーレに出品するなどフルクサス運動の初期から中心メンバーとして活躍してきました。1974年現代版画センターのファーストエディションとして制作した「I love you」はじめ初期から近作までタブロー、タピストリー、立体、版画を展示します。出品作品の詳細は6月5日ブログをご参照ください。



取り扱い作家たちの展覧会情報(5月ー6月)は5月1日ブログをご覧ください。
●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
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TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
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