埼玉県・新座市にある跡見学園女子大学花蹊記念資料館で「久保貞次郎と現代版画」展が開催されており、栗田秀法先生のギャラリートークに参加したので、ご報告いたします。
チラシ1
チラシ2
日時: 11/30(日) 12:30から30分程度
講師: 栗田秀法先生(本展監修者)
参加人数: 25名程度
※撮影は禁止

展示室は以下の2部屋に分かれています。
第一展示室:靉嘔と池田満寿夫の特集展示
第二展示室:瑛九と出会った後の久保の活動について展示
ほとんどの作品は栗田先生によるキャプション付きです。作品に描かれているモチーフが栗田先生の言葉で分かりやすく描写されています。抽象的な作品を紐解くとっかかりとして大変参考になります。
まずは靉嘔池田満寿夫の略歴と久保貞次郎の関りについて説明いただきました。
池田満寿夫池田満寿夫
1950年頃からアーティストとして活動を開始。作家仲間の靉嘔・瑛九らから久保貞次郎を紹介されます。1960年代はニードルで銅板を引っ掻いていて描写するドライポイント作品を多く制作しました。特に海外で「新しい表現」であると高く評価されたと言います。

天女乱舞池田満寿夫《天女》ART-SCENE HPより(https://art-scenes.net/ja/artworks/24736)
今回はドライポイント作品5点と、屏風を用いた大作《天女乱舞》が展示されています(池田満寿夫のパートナーである故・佐藤陽子様遺贈)。後者はコラージュ作品を原画としたリトグラフです。直前に亡くなった池田の親友・澁澤龍彦への追悼の意を込めたオマージュ作品とのこと。

ayo_07_iloveyou靉嘔《I love you》は、ときの忘れものの前身:現代版画センターのエディション第一号です。
1956年から、久保貞次郎は「小コレクター運動」を開始します。安価な版画を大量に刷ることで、多くの人の元に芸術を届けようとしたのです。栗田先生は、そうした貞次郎の思想を現代版画センターが受け継いだ作品だと解説されていました。展示会場のキャプションQRコードを読み取ると、ときの忘れものの下記ブログ記事に飛べるようになっています。
https://tokinowasuremono.blog.jp/archives/53541579.html

レインボー北斎独立行政法人国立美術館HPより(https://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=6889)
《「レインボー北斎」ポジションA》は栗田先生の私物。巨大な1枚のシルクスクリーンに見えますが、実際は54のパーツに切り分けられています。普段は木箱に納められているそうです。作家が日本からアメリカに送る際に、春画モチーフの作品は検閲ではじかれる可能性がある、ばれないように細かく分けてしまおうという苦肉の策だったとのこと。

第二展示室では久保貞次郎の活躍について解説いただきました。
久保貞次郎先生左が久保貞次郎
久保貞次郎
裕福な家の生まれ。瑛九と貞次郎はエスペラント語の活動で知り合い、彼の影響で美術に目覚めました。自由な表現を求めて、賞のある団体には属さないデモクラートの活動を展開します。小コレクター運動では、見込んだ作家にプレス機を送りつけるなどパトロンとして活躍。一方で、1966年のヴェネチアビエンナーレでは出品作家を選定するコミッショナーを担当するなど、確かな審美眼を持った批評家でもありました。小コレクター運動に関連し、瑛九のリトグラフ、オノサトトシノブのシルクスクリーン等が展示されています。

ヘンリー・ミラーの特集コーナーでは、貞次郎が1955年のブリジストン美術館での個展を見てほれ込んだこと、作家に直接手紙を送り版画制作の許可を得たことなどを説明いただきました。そのコレクションは今もときの忘れもので受け継がれています。
久保貞次郎とヘンリー・ミラーの深い交わりについては、こちらのブログ記事もご覧ください。
https://tokinowasuremono.blog.jp/archives/52924579.html
https://tokinowasuremono.blog.jp/archives/53502441.html

久保貞次郎と現代版画展は12月18日(水)までとなります。学内の紅葉は今が見頃を迎えております。秋の散歩コースに、是非一度訪れてはいかがでしょうか。

●「久保貞次郎と現代版画
会期:2024年10月18日~12月18日
休館日:土曜日・日曜日
会場:跡見学園女子大学花蹊記念資料館

◆「生誕90年 倉俣史朗展 Cahier
会期=2024年12月13日(金)~12月28日(土) ※日・月・祝日休廊
ギャラリートーク:12月20日(金)17:00~18:30
講師:関康子NPO法人建築思考プラットフォーム理事)、大澤勝彦(元ヤマギワ勤務、㈱唯アソシエイツ代表取締役)
こちらからお申し込みください。
※参加費おひとり1,000円
75_Kuramata Shiro_案内状 表面

●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
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〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。