青山に事務所を構えて20年ほどになります。
最初はしもた屋風の一軒家で、亡くなった友人が倉庫として(青山の一等地に贅沢なことですが)借りていた家を大家さんの了解を得て又借りしていました。
外苑西通りからちょっと入った場所ですが、青山は世界に冠たる建築博物館でもあり、近所には多くの名建築があります。
道を渡った反対側には隈健吾さん設計のドーリック(1991年)がそびえていますが、その薄い建物の裏に「ボチボチ通り」という小道があります。
外苑前駅への近道なので朝夕そこを通るのですが、その小道沿いにあるお店が、不思議と長続きしない。つい先日も繁盛していたと思った洋食店が突如閉店してしまった。その前はタレントのやっているレストランだったが毎日行列ができていたと思ったのにあっという間に店じまい。
相当広いスペースなので、家賃の負担が大きいのでしょうね。
その点、わが社は大家さんがとてもいい人なので助かっています。
今春更新手続きがあったのですが、こちらから頼みもしないのに勝手に値下げしてくれて驚くやら有難いやら、亭主はどうも大家さんにだけは恵まれているらしい。

余計なおしゃべりをしてしまいました。
先週土曜日に終了した安藤忠雄展にはたくさんのお客様にご来廊いただきありがとうございました。
大きすぎて今まで展示しなかった大作「中之島プロジェクト Ⅱ[アーバンエッグ2]」もめでたくお嫁入り先が決まり、Mさんのご自宅の壁におさまることとなりました。
ときの忘れものにしては珍しく納品作業でばたばたしそうです。

納品といえば、先日開催した「第21回瑛九展 46の光のかけら/フォトデッサン型紙」では、たくさんの方にお買い上げいただき、納品が遅くなり、申し訳ございません。

瑛九のような物故作家の展覧会をすると、いろいろな情報が入ってきます。
画商にとっては嬉しいのは、貴重な情報とともに、未知の作品が持ち込まれることです。
ご紹介するのは、ある所蔵家が持ってきてくれた瑛九の作品です。
瑛九「二つの楕円」
瑛九「二つの楕円形」
ボードに油彩+コラージュ
23.8×28.4cm 
*1979年小田急「現代美術の父 瑛九展」出品作品
同展図録に図版掲載(出品番号32)

私どもで「瑛九作品集」(本間正義監修、日本経済新聞社刊)を編纂していたときに、この作品も候補に挙がっていたのですが、そのときは所蔵者を追いきれず断念した次第です。
探していたときは見つからず、忘れたころにふとしたことで齎される。
美術品の不思議なところですね。
没後東京で初めて開かれた大規模な回顧展である小田急の「現代美術の父 瑛九展」図録には、1953年とありますが、私は絵の調子や素材から考えると、1930年代の作品ではないかと思います。
当時のカタログ編集者がどういう根拠でこの作品を1953年としたかは不明ですが、今後調査追跡するつもりです。

生誕100年記念瑛九展」が埼玉県立近代美術館と、うらわ美術館の2会場で同時開催されています(9月10日(土)~11月6日(日))。
初期から最晩年までの作品が網羅された久しぶりの大回顧展です。どうぞ皆さんお出かけください。
(招待券ご希望の方は、ときの忘れもの宛メールにてお申し込みください


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